[粕谷秀樹]理想主義者のグアルディオラが現実的になった!? シティらしくなくてもポイントを落とさない闘い方

粕谷秀樹のメッタ斬り 051

粕谷秀樹のメッタ斬り 051

今季、思うような結果を残せていないアグエロ photo/Getty Images

アグエロの古傷が悲鳴をあげた

本稿執筆時点でスコット・カーソン、エリック・ガルシア、フェラン・トーレス、トミー・ドイルが新型コロナウィルスに感染し、アイメリク・ラポルテとネイサン・アケは負傷のために戦線離脱。彼らに復帰の見通しは立っていない。

また、セルヒオ・エグエロも古傷の大腿部が悲鳴をあげ、今シーズンの公式戦出場はわずか9試合だ。それでもリーグカップ準決勝でマンチェスター・ユナイテッドを破り、4年連続のファイナリスト。やはりマンチェスター・シティは底力がある。プレミアリーグでトッテナムに敗れた後、公式戦は10勝3分無敗。さすが、というしかない。

ただ、前述したリーグカップ準決勝後も過密日程が続き、3-0の勝利を収めた1月10日のFAカップ3回戦(対バーミンガム)から2月27日のウェストハム戦(プレミアリーグ)まで、ケビン・デ・ブライネやラヒーム・スターリングなどの主力は、あまり休めずに計12試合をこなすのだろう。しかも2月は強敵との連戦だ。

6日:リヴァプール
13日:トッテナム
20日:アーセナル
24日:ボルシアMG

1ヶ月も先の話だ。戦列を離れている選手たちも復帰しているだろう。だが、新型コロナウィルスは心肺機能に甚大なダメージをもたらす。ユナイテッドのポール・ポグバ、フィギュア・スケーターのエフゲニア・メドベージェワなど、陽性反応を示したアスリートが「自分のからだじゃないみたいだった。すぐに疲れる」と語っていた。冒頭に挙げた4選手以外では、エデルソンとカイル・ウォーカー、ガブリエウ・ジェズスが新型コロナウィルスに感染して戦線離脱した経緯がある。彼らが本来のパフォーマンスを取り戻すまで、時間がかかるかもしれない。

後半戦も現有戦力で戦うこととなりそうなシティ。名将グアルディオラの采配に注目が集まる photo/Getty Images

2020年夏までとは事情が異なる

さらにイギリスがEUを脱退したため、冬の移籍市場は様変わりする。1月1日から労働許可書の認可基準が変更になり、インターナショナルマッチの出場数、リーグ出場時間、対象選手が所属するリーグの質などが厳しく吟味されることになった。EU圏内の選手であればほぼフリーパスだった2020年夏までとは事情が異なる。リヴァプールのユルゲン・クロップ監督も「ネガティヴな要素しかない」と、冬の市場に首を傾げていた。ましてコロナ禍だ。さしものシティも大胆には動けない。

ケガの再発で計算しづらくなってきたアグエロに代わるストライカーとして、アーリング・ハーランド(ドルトムント)をリストアップした、とも伝えられるが、予算面で難しい。いま、ハーランドの市場推定価格は9000万ポンド(約126億円)にまで跳ね上がっている。

したがって、現有勢力でやり繰りしていくしかない。選手のコンディションをつぶさに観察し、たとえシティらしくなくても、ポイントを落とさない闘い方が望まれる。

だからこそ、直近の数試合はおとなしいのだろうか。理想主義者のジョゼップ・グアルディオラ監督も、現実的にならざるをえないということか。なるほど、それはそれで不気味である。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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