[MIXゾーン]川崎にバンディエラが帰ってきた 中村憲剛、10ヶ月ぶりのピッチに何を思う

昨年の広島戦で大怪我を負い、長期離脱を強いられていた中村憲剛 photo/Getty Images

復帰戦で早速ゴール

川崎フロンターレは29日、明治安田生命J1リーグ第13節で、ホームに清水エスパルスを迎え入れた。大幅にメンバーを入れ替えて試合に臨んだが、ハイプレスや素早い攻守の切り替えで終始試合のペースを握ると、前半こそ1ゴールにとどまったが、後半に4点を追加し、5-0の大勝を収めた。

さらにこの一戦では、フロンターレ ・ファンにとって非常に嬉しい出来事が。チームのバンディエラである中村憲剛が、約10カ月ぶりにメンバー入り。77分から途中出場を果たすと、85分には相手のミスから鮮やかなループシュートを決め、見事な復帰を果たしたのだ。試合終了のホイッスルとともに天を仰いだ中村はその後、両手で怪我をした左膝をパンパンと叩く。無事に復帰戦を戦い終えた膝に感謝を述べているようなその姿は、とても印象的だった。

そんな川崎のバンディエラが、試合後に様々な思いを明かしてくれた。

ーー復帰戦を振り返ってみて


話すとだいぶ長くなるような話なんですけど……10ヶ月ぶりなので。怪我をしたのが(昨年)11月の等々力での広島戦。そこから今日のこの日まで、この日のために全て捧げてやってきた。コロナの影響でサポーターの人たちが5000人までしか入れなかったりとか、声が出せなかったりとか、色々ありましたけど、それでも十分に等々力の良さ、等々力の温かさは僕にとってはすごく大きなものでした。

みんな待ち望んでくれていたと思うんですけど、誰よりも自分が待ち望んでいた瞬間だったので、点を取ろうとかは全く思っていなかった。とにかく今日1日をケガなく無事に終えることだけを、メンバーに入った昨日からずっと考えていました。そこでみんなが点を取ってくれた。自分が出やすい形にしてくれたので、本当にみんなには感謝したいですし、まさかそこで得点が取れるとは思わなかった。本当に感謝。それしかない。この10ヶ月がいろいろと、すごく早送りのように自分の頭の中を巡っていった1日だったと思います。

ーー今後はレギュラー争いをしていくこととなるが、ゴールも決めることができ、最高のスタートになったのではないか


レギュラー争いはもちろんありますけど、まだ自分はそこのテーブルに乗れるかどうかというのは……。今日のパフォーマンスもそうですし、普段の練習と今日以降の試合に出たときのパフォーマンスで、オニさん(鬼木達監督)のチョイスに入るかどうかが決まってくると思う。

ただ連戦ですごく出ずっぱりの人もいましたし、疲れる人もいるんで、それで僕が入れた形でもあると思う。とにかく今やれることは、自分のパフォーマンスを出せるように日々練習をすること。レギュラー争いどうこうというよりも、まずは自分がしっかりパフォーマンスを出さないとそのテーブルに上がれないというのが、自分の中で危機感としてある。

今日に関していえば、そのために頑張るというよりは、来てくれた人、DAZNで見てくれている人、待ち望んでくれていた人、全ての人たちに自分がサッカーをする姿を見せたいというのがあった。それで点を取ったということもあって、次節以降ハードルがちょっと上がってしまったが、それも今まで自分が積み重ねてやってきたものが出たわけだし、そこは自信を持ってやっていきたいと思います。

ーーゴールシーンについて


ループ(シュート)は目の前に(ボールが)転がってきた瞬間に考えました。僕らのボールから相手ボールになって、GKの大久保選手から岡崎選手にボールがいって、カオル(三笘薫)がちょっとプレッシャーをかけた。僕も連動して、相手のボランチの選手のコースを切ろうかなと思ったところで、多分ですけど、岡崎選手は僕の姿がチラッと見えちゃって、パスを出そうと思った足に当たってしまったのかな。それで自分の前に転がってきて、大久保選手も岡崎選手の真横にいたので、もうこれはループだろうと。あとは試合を通じて、みんなが渾身のシュートを全部相手に当てたり、ポストに当てたりしていたので。僕も入って早々のシュートと、リョウタ(大島僚太)からのボールのシュートを相手に当てていたので、相手に当たらないようにするためにはどうすればいいかと考えたときにループだと思いました。

ーー久々の試合にもかかわらず、最初のシュートを見てもボールに対するフィーリングが非常に良いように見えたが


アップしていたときに、今まで感じたことのない感じがした。多分緊張していたのかな。今までそんなことなかったのに、ボール回しとかもすごく疲れて、これはひょっとしたら緊張しているのかもしれないと思った。けど、ずっとボール自体は蹴っていたし、(緊張は)自分のメンタル次第かなと思ったので、ハーフタイムにはいつも通り動けるかなという感じはしていた。そういう意味では、最初に(シュートを)一発打って吹っ切れた。自分の中でもスイッチが入ったところはあった。あれは小林(悠)に当たっていなければ、入っていたんだろうなというところはちょっとあるんですけど。笑

チームが3点取ってくれたというのもありますし、自分自身も攻撃的な姿勢を持ちたいと思っていた。(1本目のシュートは)最初から打とうとは思っていなかったんですけど、タイセイ(宮代大聖)から良い落としが来たので、まずは打とうと。全部考えていたわけではなく、その瞬間の自分のイメージ、発想がその瞬間に出てきたので、それは今までやってきたことの積み重ねじゃないかなと思う。

ーー復帰までのこの10カ月間で一番苦しかった時期は?


一番苦しかったときは、3月のときに1回、ちょっと負荷が強すぎて膝に痛みが生じて、そこでできるメニューが削られてったときで、一番キツかったですね。ちょうどそのときに緊急事態宣言で、クラブハウスにもいけなくなってしまった。自分の膝の先行きも見えませんでしたし、国として、Jリーグとして、フロンターレとして先が見えない時期とちょうど重なってしまったので、あの時が一番しんどかったです。

ーーそこからどうやってここまで気持ちを上げてきたのか


いろんなストレスがあったと思うんですけど、家にいるしかなかったので、そこで家族に、妻と息子と娘にすごく助けられたところはある。「膝が痛いって言ってもしょうがないじゃん」みたいな感じで、本人たちも学校や幼稚園に行けなかったにもかかわらず、とにかくネガティブにならないように声がけをしてくれていた。一家の主人である父親がそんなんじゃダメだろうというのが自分の中にはあった。そういう意味では、本当に彼らに助けられました。

また、クラブハウスにも病院にもいけませんでしたけど、膝の状態に関してはドクターとかトレーナーとか、オンラインでみんなが僕を1人にさせないようにしたり、診てくれたりしていた。そこで徐々に徐々にできるようになっていった。あの時が、足踏みした唯一の時期と言っていいと思います。それ以降は、常に楽しくやれていたので。どっちかというと周りの方が悲壮感を漂わせていたところはあると思いますし、ちょっと明るすぎるとチームに怒られたぐらいです。

ーー復帰の直前に、長きにわたり怪我に苦しめられてきた鹿島アントラーズの内田選手が引退という決断を下しました。そういう意味でも今回の復帰の意味は大きいのではないか



アツト(内田篤人)に関しては、今に始まったことではなかったですし、彼の膝の痛みは僕も見て十分わかっていたし、会うたびに大変そうだなと思っていた。本人の中でもすごく葛藤はあったと思うので。何日か前に連絡が来ましたけど、その時は「おつかれさま」としか言えなかった。アツトの分までとは言いませんけど、自分は違うケガをして、アツトとは違う治り方というか……。僕の場合は(靭帯が)切れても、しっかりリハビリすればできるというのは、元いたチームメートだったり、先輩だったり、後輩だったりがアドバイスしてくれていたので、自分は治して、とにかく今日この日を迎えるだけだと思っていました。アツトのセレモニーもしっかり見ましたけど、胸にくるものはありましたし……。自分も頑張らなきゃなとは思いました。

ーー10月に40歳の誕生日をを控える中での復帰。多くの人たちに勇気を与えたと思うが、自分の中で新たにやってきたことは?


やってきたことというのは、膝の経過とともにリハビリメニューをしっかりこなすという、それだけ。いろんな人を信頼して、自分が目標に向かって突き進むだけだった。そういう意味では、今までもそうですけど、周りの人たちがいなかったら今の自分はないから、とにかく感謝しかないです。家族もそうですし、チームスタッフ、チームメート、移籍していった選手で同じケガをした選手もいますし、いろんな人から励ましの言葉やアドバイスをもらったので、何かしたというよりは、1日1日積み重ねて今日この日を迎えられた。

ただ、リハビリすることがゴールになっていたら、今日こういう形で試合を過ごすことはできなかったと思う。自分の中で、今日をスタートにしないといけないと強く思っていたので。ただ戻るのではなくて、しっかり自分がプレイする姿をいろんな人に、待っている人に見せないといけないというのはあった。そういう意味では(今日の試合は)予想以上。自分が点が取れたのは予想以上だったんですけど、そういう姿を見せられたのは本当に良かったなと思います。等々力に神様はいたなというのはあります。正直、等々力じゃなかったら、こうならなかったんじゃないかなと思っています。

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