[MIXゾーン]起きてしまった『吹田の惨劇』は国内組に“Jではダメ”を突きつけたか

日本代表は前半に失点を重ねた photo/Getty Images

前半だけで4失点は記憶にない

 Jリーグのスタートしたのが1993年、それを数年遡る年に取材活動を始めた筆者だが、日本代表が前半だけで4点を奪われるという試合の記憶がなかった。それもそのはずで実に96年ぶりの出来事だという。“惨劇”と呼ぶのが正しいのか、それとも“笑えないジョーク”というのが相応しいのか。とにかく前半の日本はズタボロだった。

「DFは少し間合いが遠く、プレスをかけられなかった」

 森保監督は会見で訥々と話した。
 実際、試合後のミックスゾーンでもこの日キャプテンマークを巻いたMF柴崎は
「指摘や声掛けはしていたが、無意識のうちに自分たちが意識していないうちにズルズルと下がった守備をしてしまった」と振り返った。

 特に左右のSBは国際レベルの相手に対峙して、ラインの裏を狙われることに怯え、更にミスパスを繰り返すという悪循環だった。選手起用という点ではいえば、真っ先に交代させられるべきは彼ら、特に左SBの佐々木だったのではないか? 森保監督には公式戦ではなく親善試合であることから、彼らの成長を試合の中で促すという意味はあったのだろう(と思いたい)。実際後半に入って彼らの動きは見違えるほど良くなったからだ。

 ただ少なくともこの試合の前半に関していえば失点に失点を重ねてしまった中で、誰がチームの士気を鼓舞し、立て直すのかという部分がまったく見えてこなかった。本来なら柴崎がキャプテンであるのだから、それを担うべきなのだろうが、ハーフタイムのロッカールームで森保監督から厳しい言葉をぶつけられるまでそれができなかった。

「修正に対するその辺の全責任は僕にあると思う」

と柴崎自身も素直に認めたが、反省している時間があるのなら、それを前半途中で形で示すべきだった。厳しいようだが、反省だけなら猿でもできる。

 この試合のプラスを考えると、それは後半に巻き返したことではない。それよりも多くのJリーグでプレイする選手が、今の環境ではダメだと感じたことではないだろうか。実際W杯予選を戦う、いわば『1軍』の大半が海外でプレイする選手で占められている。このベネズエラ戦では『1.5軍』が起用された。彼らの多くがJの経験しか持たない。

「Jリーグでは感じたことのないスピードだった。(守備の)ポジションを取っているつもりでもずれていた」(CB畠中)

 ベネズエラのFWロンドンはスペイン、イングランドでゴールを重ねてきた猛者。Jとは次元が違う。

 この試合で改めて浮き彫りになったのは、“Jではダメ”という事実ではないだろうか。海外にいけばすべてが手に入るというのは幻想にすぎないが、だからといってJで頑張れば世界に手が届くというのもファンタジーでしかない。勿論海外でポジションを奪えず、悪戦苦闘する柴崎、MF中島のような選手もいる。ただその苦労は必ず成長という形で自分のところに返ってくるものではないだろうか。

 今後『吹田の惨劇』と記憶に深く刻まれるだろう試合。後にあれが切っ掛けだったと語られるようになれば、それはそれで意味のある試合だといえるだろう。そういえるようにするために、選手ならびにスタッフにリベンジを期待したい。

取材・文/吉村 憲文

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