[水沼貴史]“ランパード改革”進行中のチェルシー マンU戦&今季のキープレイヤーは 

水沼貴史の欧蹴爛漫 032

水沼貴史の欧蹴爛漫 032

愛する古巣に監督として舞い戻ったランパード。選手たちには球際での激しさを求めている photo/Getty Images

ランパードが目指す“原点回帰”

水沼貴史です。あっという間に欧州のプレシーズンが過ぎ去りようとしています。今週末には2019-2020シーズンのプレミアリーグが開幕しますね。今回は開幕節の全10カードのなかから、マンチェスター・ユナイテッド対チェルシーの見どころについてお話しします。私が特に注目しているのは、現役時代を過ごしたチェルシーに監督として舞い戻ったフランク・ランパードが、このビッグマッチでどのようなサッカーを選手たちに実践させるかです。言わずと知れたチェルシーのレジェンドが、古巣にどのような変革をもたらそうとしているのか。まずはこの点についてお話ししましょう。

マウリツィオ・サッリ前監督(現ユヴェントス)のもとで華麗なパスワークを披露し、昨シーズンはヨーロッパリーグ制覇などの一定の結果を残したチェルシーですが、サポーターが彼のサッカーに満足していないように私には見受けられました。堅守速攻型のサッカーで手堅く勝利を積み重ね、あまたのタイトルを手にしてきたひと昔前のチェルシーを知っているサポーターにとって、サッリ監督の攻撃的でハイリスクなサッカーは受け入れられるものではなかったのでしょう。

攻撃偏重のイメージが強かったサッリ前監督とは異なり、ランパード監督はより攻守のバランスに重きを置いたチーム作りを行っています。球際で体を張ることを選手に強調して伝えていますし、ベースの布陣を昨シーズンの[4-3-3]から[4-2-3-1]に変更し、ボランチを1枚から2枚にしたこと一つをとっても、守備を疎かにしたくないという彼の意思が窺えます。プレシーズンマッチを見ていても、セサル・アスピリクエタとマルコス・アロンソの両サイドバックのオーバーラップの回数が昨シーズンより減っている感じがしますし、サイドバックは前線でボールが収まるまでむやみに攻め上がらないという約束事が、既にチーム内で徹底されているふしがあります。

私が今注目しているのは、ランパード監督がエンゴロ・カンテをどのポジションに置き、彼にどのような役割を与えるのかという点です。彼は元々ボランチを本職としている選手ですが、サッリ前監督のもとでは[4-3-3]の布陣(中盤逆三角形)のインサイドハーフで起用され、積極的に敵陣ゴール前に顔を出すというタスクを課せられていました。今シーズンはボランチでジョルジーニョとコンビを組むことが濃厚ですが、このポジションに移ることで彼がかねてより得意としているボールハントにより集中できそうですし、昨シーズンやや失点が多かったチェルシーの守備力アップにも繋がりそうです。ランパード監督の指導により、昨シーズンと今シーズンとで彼の攻撃参加の回数がどれほど変わってくるのかが実に興味深いですし、彼の出来が新生チェルシーの命運を左右すると言っても過言ではないでしょう。ひと昔前の伝統であった堅守速攻型の戦い方を今一度古巣に植え付けようとしているランパード監督ですが、この“原点回帰”が功を奏するのか。この点が今シーズンのチェルシーの見どころの一つとなりそうです。

プレシーズンで好調だったプリシッチ(中央)だが、開幕戦で輝けるか photo/Getty Images

膠着が予想される開幕戦 チェルシーのキープレイヤーは

両チームともにプレシーズンで試行錯誤している部分が多く、特にロメル・ルカクとポール・ポグバの去就問題に揺れているマンチェスター・ユナイテッドの基本布陣が未だに不確定のため(編注:現地時間8日、ルカクのインテル移籍が決定)、この試合の展開予想が難しかったのですが、膠着したゲームになるのではないでしょうか。ユナイテッドとしては監督が変わったばかりのチェルシーの出方をまずは窺いたいでしょうし、ランパード率いるチェルシーの基本戦術は今のところ堅守速攻です。特に試合序盤は互いに自陣のスペースを消し合い、攻撃の際にもあまりリスクを負わず、なるべく少ない人数でシュートシーンに持ち込むという展開になるのではと私は予想しています。

両チームの選手のなかで誰が膠着状態を打破できそうかを私なりに考えましたが、チェルシーにはペドロ・ロドリゲスやウィリアン、そしてクリスティアン・プリシッチなど、密集地帯でも細かなステップで相手をかわしながらシュートやパスを放てたり、ドリブルで複数のマーカーを剥がせるウインガーが揃っています。3人とも味方からのパスコースを呼び込むフリーランニングにも長けていますが、彼らが攻撃面でどれほど違いを生み出せるか。両サイドの攻防の行方がこの試合の流れに大きく影響しそうですし、ユナイテッド陣営としては左サイドバックのルーク・ショー、そして今夏に加入した右サイドバックのアーロン・ワン・ビサカの踏ん張りに期待したいところでしょう。

両チームともに不確定要素が多いなかで見どころを挙げてみましたが、監督が変わったばかりのチェルシーのサッカーが昨シーズンと比べどのように変化し、ランパード監督のサッカーがユナイテッド相手にどこまで通用するかという視点で観戦すると、よりこの試合をお楽しみ頂けると思います。来たるプレミアリーグの開幕戦を、どうか心行くまでご堪能下さい。

ではでは、また次回お会いしましょう!


※プレミアリーグ第1節、マンチェスター・ユナイテッド対チェルシーの一戦は日本時間8月12日(月)の午前0時30分にキックオフ!


水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。


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