[西岡明彦]チェルシー、大舞台を前にプロモーション活動へ

プレミア最強ガイド2018-19

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サッリ監督は選手疲労はもちろん、アザールの移籍の噂にも頭が痛いはずだ photo/Getty Images

 マウリツィオ・サッリ監督を招聘し、ナポリ時代に彼が導いた攻撃的なスタイルを目指した今季のチェルシー。そのイタリア人監督は、リーグ新記録となる新指揮官として開幕から12試合無敗という見事なスタートを飾りましたが、年明けのアウェイ戦で3連続完封負けを喫するなど徐々に失速。最終的には優勝したマンチェスター・シティに26ポイントもの差を付けられ、3位に終わりました。クラブは年々激しさを増すプレミアリーグの勢力争いに負けないために様々な施策を検討・実施していますが、悩ましい現実にも直面しています。

 新スタジアムの完成でさらなる経済効果が期待されるトッテナム。チェルシーも2015年12月に地元スタンフォード・ブリッジを改築し、観客動員の増加を目論む計画が発表されていましたが、ここにきて計画がストップしたことが明らかになりました。最寄りのフラム・ブロードウェイ駅から直接アクセスでき、観客席を約2万席増設した6万人規模の改装プランです。しかし、建設コストの観点から、改築プランの10億ポンドよりも本拠地を移転して新スタジアムを建築した方が安価で済むとのデータが公表されました。「ニュー・シビル・エンジニア」は、再開発プランの半額となる5億ポンドで新スタジアムは建築できると報告したのです。

 これを受けてクラブは今月10日に声明を発表し、「現状の投資環境が整わず、計画は保留となっています」と、ファンに説明しました。上位のライバルクラブたちは5万人以上の集客を毎試合実現しています。この計画が頓挫しないことを祈りたいものです。
 そんなクラブの経済事情も影響していたのか、シーズン終了後のポストシーズンツアーを計画していたチェルシー。最終戦の翌日から米国に渡航し、15日(水)にニューイングランド・レボリューションと親善試合を行います。これは反人種差別撲滅のキャンペーンを兼ねたチャリティーイベントではありますが、米国でファン層拡大という経済効果を狙って開催したことは紛れもない事実です。

 欧州カップ戦決勝に勝ち残る可能性を度外視していたわけではないと思いますが、29日(水)のヨーロッパリーグ決勝を前に、ロンドンとボストンの往復に要する移動距離が6400マイル(約10240km)。そしてアーセナルと決勝を戦うバク(アゼルバイジャン)への移動も片道2500マイル(約4000km)。もちろんクラブのプロモーション活動は必要ですが、それが必要以上に選手たちの負担になってしまっては本末転倒です。「我々は疲れている。エネルギーを回復しなければいけない」と語ったサッリ監督のコメントが、試合後の言い訳として再度発言されないことを祈りたいものです。


文/西岡明彦

電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)2019年6月号より転載

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