[水沼貴史の欧蹴爛漫017]追い詰められたモウリーニョ 古巣チェルシーとどう戦う?

進退のかかった大一番に臨むモウリーニョ監督 photo/Getty Images

解任の噂が絶えず

水沼貴史です。インターナショナルマッチ・ウィークが明け、今週末から欧州の各リーグが再開します。今回は20日に行われるプレミアリーグ第9節、チェルシー対マンチェスター・ユナイテッドの展望についてお話ししましょう。第8節が終わった段階で8位(4勝1分け3敗)と出遅れているマンチェスター・ユナイテッドですが、早くもジョゼ・モウリーニョ監督の解任が噂されています。モウリーニョ監督と一部の選手による確執の噂も勿論ですが、何よりも彼の人選や採用布陣が一貫せず、核となる戦術すらチームに落とし込めていないのは気がかりです。上位に留まるためにもこれ以上の負けは許されませんが、リーグ屈指の攻撃力を誇るチェルシーを相手に、どのように立ち向かうべきでしょうか。

今季のリーグ戦で早くも7得点のアザール photo/Getty Images

アザール&アロンソを止めるには......

まずは左サイドで攻撃の起点となっている、FWエデン・アザールとDFマルコス・アロンソをフリーにしないということが大前提です。相手の攻撃のキーマンにマンマークをつけるという戦法を過去の大一番で使ってきたモウリーニョ監督ですが、同じサイドで対峙するであろうアシュリー・ヤング(もしくはアントニオ・バレンシア)にアザールを監視させる可能性が考えられます。

ただ、マンツーマンディフェンスを行ったがために対面のDFがアザールに連れていかれ、右サイドがぽっかり空いてしまう危険性も排除できません。アザールと対峙するDFが持ち場を離れた際にセンターバックが横にスライドし、右サイドのスペースを埋めることができるか。サイドのスペースを使おうとするチェルシーのマテオ・コバチッチなどを、ユナイテッドの前線の選手がプレスバックして捕捉できるか。この点が勝負の鍵を握るでしょうし、このマンツーマンディフェンスを成立させるために、モウリーニョ監督が5バックを採用する可能性があると私は思います。予め5バックを敷くことで、対面のDFがアザールに連れていかれても4人の最終ラインを維持することができ、ゴール前のスペースを消しやすいからです。

また、マウリツィオ・サッリ監督が赴任して以降、左サイドバックのアロンソがインナーラップ(ボールホルダーを内側から追い越す動き)を仕掛ける回数が増えたように見受けられます。無論、アロンソをフリーでペナルティエリアに侵入させると大ピンチになるので、ネマニャ・マティッチ、ポール・ポグバなど自軍のセントラルMFにアロンソのインナーラップを見張らせることが、モウリーニョ監督が施すべきチェルシー対策です。この試合をご覧になる際は、ユナイテッドの最終ラインは何枚か、アザールやアロンソにマンマーク気味についている選手がいるかどうかがポイントとなるでしょう。もしアザールやアロンソにマーカーをつけなかった場合、モウリーニョ監督がいかにしてチェルシーの攻撃を停滞させるのか。この点も興味深いところです。

チェルシーのパスワークを司るジョルジーニョ photo/Getty Images

ジョルジーニョ封じも急務に

チェルシーの攻撃を封じるにあたり、パスの供給源であるMFジョルジーニョにボールを触らせない工夫も必要になってきます。彼にボールが渡った途端にチェルシーの攻撃がスピードアップしてしまうので、モウリーニョ監督としては、自軍のセントラルMFにジョルジーニョのマンマークを命じ、彼からボールを奪う。もしくは相手の最終ラインから彼へのパスコースに人を立たせ、彼にボールが渡らないようにするかのどちらかを選ぶ必要があります。彼が中盤に誰を起用し、どちらの守備手法を選ぶかは分かりません。モウリーニョ監督がジョルジーニョ対策として何を用意し、その戦術がきちんと機能しているかをチェックすると、より興味深く試合を見られるのではないでしょうか。

第8節が終わった段階で18得点と、爆発的な攻撃力を武器に勝利を積み重ねているチェルシーですが(6勝2分け/2位)、第8節のサウサンプトン戦では攻め上がったサイドバックの背後のスペースを突かれ、あわや失点という場面がありました。ユナイテッドとしては、堅固な守備でチェルシーの攻撃を凌ぎ、カウンターで相手の泣き所であるサイドのスペースを突きたいところでしょう。そこから質の高いクロスを供給できれば、長身のMFマルアン・フェライニやFWロメル・ルカクなどが相手DFに競り勝ち、チャンスをものにしてくれる可能性があります。モウリーニョ監督が策士ぶりを発揮して一矢を報いるのか、それとも自身の古巣であるチェルシーに叩きのめされ、更なる窮地に陥ってしまうのか。自身の進退がかかった大一番で、彼がどのような采配を振るうかに注目したいと思います。

ではでは、また次回お会いしましょう!


※プレミアリーグ第9節、チェルシー対マンチェスター・ユナイテッドの一戦は20日(日本時間)の20時30分にキックオフ!


水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。

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