[ロシアW杯#34]ウルグアイ、見事無失点でGL1位突破 カバーニも初得点で調子上向き!?

訪れた2つの幸運がウルグアイを後押し

訪れた2つの幸運がウルグアイを後押し

ウルグアイに貴重な先制点をもたらしたスアレス photo/Getty Images

グループリーグ突破を決めているチームは、第3戦のプランが難しい。疲労を考慮して数人の主力を休ませるか、勢いを維持するためにメンバー変更は最小限に留めるか。ウルグアイ、ロシアとも後者を選択した。決勝トーナメント1回戦の相手はスペインなのかポルトガルなのか、ひょっとするとイランになるのか見当もつかない事実も踏まえ、両チームの首脳陣は一戦必勝態勢が望ましいと判断したのだろう。

ただ、ウルグアイの戦略・戦術がものの見事にはまり、終始イニシアチブを握っていた。スアレスとカバーニがロシアの2CBにプレスをかけて後方からのビルドアップを牽制し、ベンタンクールは中盤へのパスを遮断する。やむをえずロシアはGKアキンフェエフに戻し、前線のジュバめがけてロングボール。196cmの長身FWは空中戦で競り勝つシーンもあったが、セカンドボールの回収は運動量でまさるウルグアイが圧倒した。

そして10分、先制点をもたらしたのはやはりスアレスだった。ペナルティアーク内で得たFKを、グラウンダーのボールでカベの右サイドを抜いた。15m前後のFKとしては、最も適切なキックとコースである。これがストライカーの嗅覚だ。
さらにウルグアイには、ふたつのラッキーが訪れた。23分、ラクサールのシュートがディフレクトしてゴールイン。36分にはロシアDFスモルニコフが二度目の警告で退場。開催国として、これ以上の失点は避けなければならない。ロシアは[4-2-3-1]から[4-4-1]に変更し、自陣に籠城せざるをえない状況になった。試合巧者ウルグアイにとって、おあつらえ向きの展開である。

らずにボールをまわす。ロシアDF陣の背後も時おりついてみる。勝負は決しているのだから、リスクを冒す必要はない。ともに緊張感が途切れたため、何回かゴール前でスリリングなシーンを迎えたものの、試合が動く気配はなかった。ただ、闘争本能をたぎらせる男がひとりだけ存在した。カバーニである。

試合終了間際にカバーニ待望の初ゴール!

試合終了間際にカバーニ待望の初ゴール!

後半AT直前にようやく今大会初ゴールを決めたカバーニ。このゴールで波に乗れるだろうか photo/Getty Images

グループリーグではまだ1点も取れていない。スアレスはすでに2点を奪っている。もうひとりのエースにもゴールが生まれさえすれば、ウルグアイにも弾みがつく。カバーニ自身もコンディションは悪くないのだが、なぜかゴールには嫌われていた。しかし試合終了間際、そのときはついにやって来た。右CKをゴディンが強烈なヘディング。ロシアGKアキンフェエフは手に当てるのが精いっぱいで、このリバウンドをカバーニがからだごと押し込んだ。3-0、ウルグアイ完勝である。

待望の初ゴールが決まり、カバーニはプレッシャーから解放された。スアレスの調子は上向きで、ゴディンを軸とする守備陣は無失点の堅陣だ。攻守のバランスが整っているため、ウルグアイは10年南アフリカ大会の4位を上まわる躍進も期待できそうだ。一方、ロシアは心を折られそうな敗北を喫した。決勝トーナメントまで中5日。リカバリーの時間としては、決して十分ではない。

[スコア]
ウルグアイ代表 3-0 ロシア代表

[得点者]
ウルグアイ代表:スアレス(10)、チェリシェフ(23、OG)、カバーニ(90)

文/粕谷 秀樹
サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

theWORLD210号 2018年6月26日配信の記事より転載

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