[ロシアW杯#35]20年ぶりのW杯勝利へ近づいたモロッコ スペインは冷や汗ものの1位通過に

スペインの強みは左サイドにあった

スペインの強みは左サイドにあった

終了間際にアスパスがクロスをヒールで流し込み、スペインは辛くも勝点1を得た photo/Getty Images

このゲームの前に行われたグループA最終節で、ウルグアイ代表がロシア代表を撃破して首位通過を決めたため、スペインとしてはグループBを首位で通過しておきたいところだった。ウルグアイが調子を上げていることを考えると、ベスト16で対戦するのは避けたいからだ。  

ゲームは序盤からスペインがボールをポゼッションする予想通りの展開となるが、14分に思わぬプレイが飛び出す。セルヒオ・ラモスとイニエスタがお見合いするような形でボールを失ってしまい、これを拾ったブタイブが独走。最後はダビド・デ・ヘアとの1対1を制し、モロッコが先制する。スペインとしては嫌な形でゲームをスタートさせることになったが、主導権は握れていた。ポイントは左サイドだ。今のスペインは左サイドでイスコとイニエスタが巧みにポジションチェンジし、左サイドバックのジョルディ・アルバが積極的に上がってくる。この3人の関係がスペインの大きな強みになっている。この動きを、 前半のモロッコはなかなか捉えることができなかった。

19分にはイニエスタがジエゴ・コスタと絡んで左サイド深くを突破し、抜群のタイミングでイスコへパス。これをイスコが豪快に決めて同点に追いついた。この場面でも、モロッコはインサイドハーフの位置から上がってきたイニエスタをマッチアップするベルアンダが見るのか、下がってきていた右サイドのアムラバトが絞るのかがはっきりしなかった。相手が混乱していたこともあり、スペインとしてはストロングポイントを活かした理想的なゴールを決めることができた。右のサイドバックとセンターバックの間をどう管理するのか、前半のモロッコはここに苦戦していた。

ゲームを動かしたのは両指揮官の交代策

ゲームを動かしたのは両指揮官の交代策

54分アムラバトが放ったシュートはバーを直撃し、スペインに冷や汗をかかせた photo/Getty Images

後半になるとモロッコはさらに重心が下がり、スペインが常にポゼッションする形に。ただし、第2戦のイラン戦と同様にスペースが無くなってしまい、なかなかシュートチャンスを作れない。一方のモロッコは54分にアムラバトのミドルシュートがバーを直撃するなど、予想外の形からスペインを焦らせる。ここからゲームを動かしたのは両チームの指揮官だ。71分には先制点を挙げたブタイブを下げてユセフ・ エン・ネシリを投入。そのネシリは81分にコーナーキックから強烈なヘディングシュートを突き刺し、モロッコがまさかの勝ち越しゴールを挙げる。

1998年大会のスコットランド代表戦以来となる、20年ぶりのワールドカップ勝利も見えてきた。モロッコはこのまま守り切りたいところだったが、後半ATにスペインが意地を見せる。カルバハルのクロスにイアゴ・アスパスが右足ヒールで華麗に合わせてゴール。当初はオフサイドと判定されたが、 VARで判定した結果ゴールが認められた。このアスパスは74分にジエゴ・コスタとの交代で入っていた選手で、ここはフェルナンド・イエロの采配が当たったと言える。

スペインらしからぬバタバタした展開となったが、最後は力業で何とか同点に持ち込んだ。理想的なゲームとはならなかったが、もう一方のポルトガルとイランの戦いが1‐1のドローで終わったため首位でグループBを突破する結果に。2失点した守備は改善する必要があるが、ひとまず首位通過を達成できたのは良しとすべきだろう。

[スコア]
スペイン代表 2-2 モロッコ代表

[得点者]
スペイン代表:イスコ(19)、アスパス(90+1)

モロッコ代表:ブタイブ(14)、ネシリ(81)


文/冨田 崇晃


theWORLD210号 2018年6月26日配信の記事より転載

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