[ロシアW杯#26]セルビアに逆転勝利したスイス 勝敗を分けたのは看板選手の差?

セルビアに先制点を許すも1失点で序盤を乗り切ったスイス

セルビアに先制点を許すも1失点で序盤を乗り切ったスイス

自身のゴールでスイスを勝利へ導いたシャキリ。嬉しさのあまり雄叫びをあげる photo/Getty Images

勝利でグループリーグ突破が決まるセルビアと、自力でのベスト16進出に望みをつなぐためにも勝ち点3を掴みたいスイス。両国ともに白星を狙った一戦は、開始直後から攻守が目まぐるしく入れ替わるスリリングな展開となった。

先手をとったのはセルビア。5分、タディッチが右サイドから放ったクロスを、ミトロビッチが頭で合わせ、いきなりスイス自慢の堅守をこじ開ける。今年1月に加入したフルハムで12ゴールと覚醒し、持ち前の得点感覚に磨きをかけてきたフィニッシャーが自身の得意な形で歓喜をもたらした。

ただ、初戦のブラジル戦でも先制点を献上しながら、粘り強く戦ってドローに持ち込んでいたスイスは慌てない。最終ラインから丁寧に繋ぐ自慢のパス回しでポゼッションを高め、リヒトシュタイナーとロドリゲスの両サイドバックは果敢に敵陣の深くまで侵攻。すると10分、後者のクロスから好機が生まれる。エリア内でフリーになったジェマイリが左足を一閃し、セルビアのゴールを脅かしたのだ。
スイスにとって大きかったのはこのチャンスを作ったこと以上に、15分ごろから始まるセルビアの猛攻を凌いだことだ。コスティッチとタディッチという敵の両翼が活気づき、続けざまにサイドを破られたが、相手のシュート精度不足もあり、追加点を許さなかった。ここで崩れていたら、巻き返しに出る気力さえも失っていただろう。

違いを作った二枚看板シャキリとジャカ

違いを作った二枚看板シャキリとジャカ

90分、シャキリが絶妙なタイミングでDFの裏へ抜け出し、冷静にゴールへ流し込む photo/Getty Images

窮地を脱したスイスは縦に急ぐのではなく、真綿で首を絞めるようにボールを回し、20分過ぎから試合の主導権を完全に掌握。30分にジェマイリが再び決定機を逃し、1点のビハインドを背負ったまま後半を迎えても、ポゼッションでゲームを支配する戦い方を変えずに、セルビア陣内に攻め込む。そして、53分だった。大黒柱のジャカが大仕事をやってのける。ペナルティエリア外から目の覚めるようなミドルを突き刺し、試合を振り出しに戻したのである。

この司令塔の活躍に触発されたように、前線で輝きを増したのがシャキリだ。前半からドリブルやパスを武器に異彩を放っていたレフティは、58分、右サイドからポストを直撃する強烈なシュートを放ち、セルビアの守護神ストイコビッチをヒヤリとさせる。その後もサイド、中央を問わずに自由に動き回って敵を翻弄し続けていたアタッカーに、千載一遇のチャンスが訪れたのは90分だった。

味方の縦パスに抜け出し、ドリブルで一気に相手ゴール前まで持ち運ぶと、最後は飛び出したGKの股を抜く冷静きわまりないフィニッシュ。喜びのあまり、ユニフォームを脱ぎ捨ててしまうのも納得の逆転弾を決め、見事、スイスに今大会初勝利をもたらした。

このシャキリとジャカという二枚看板が勝負を決する違いになったスイスに対し、セルビアはミリンコビッチ・サビッチが期待外れ。100億円以上の市場価値があると称される大器は、16分のミドル以外に見せ場を作れず、チームの攻撃を活性化させるタスクをこなせなかった。ポストワークが冴えていたCFのミトロビッチ、あるいはキープ力が光った右ウイングのタディッチに、このトップ下が上手く絡めていれば、また違った結末になっていたかもしれない。

[スコア]
セルビア 1-2 スイス

[得点者]
セルビア:ミトロビッチ(5)
スイス:ジャカ(52)、シャキリ(90)

文/遠藤 孝輔

theWORLD207号 2018年6月23日配信の記事より転載

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