ハリル解任理由は“総合的な判断” 信頼関係うんぬんは最終的なキッカケに過ぎない

日本サッカー協会はいまだ納得できないハリルに説明が必要

日本サッカー協会はいまだ納得できないハリルに説明が必要

記者会見を開いたハリルホジッチ監督 photo/Getty Images

4月7日付けで日本代表監督を解任されたヴァイッド・ハリルホジッチが記者会見を行った。語られたのはこれまでの経緯で明らかになっていることが主で、目から鱗の新しい情報はなかった。

「(田嶋幸三)会長も(西野朗)技術委員長も『ヴァイッド、問題があるぞ』と一度も言ってくれなかった」

ハリルホジッチはこう訴えたが、一方でこうも語っている。
「西野さんが『不満をもらしている選手がいる。注意したほうがいい』と伝えてきたことがあった」

つまり、日本サッカー協会から危機感を伝える話はあったが、ハリルホジッチはそれを深刻に受け止めることができなかった。具体的には3月のマリ戦を終えたあとに西野技術委員長から注意がなされだが、このときにハリルホジッチは「わかっている。解決できる」と返事をしたという。

自信を持って仕事を進め、選手との信頼関係もしっかり築けていると理解していたことで、ハリルホジッチには最悪の事態を迎えつつあるという危機感がなかった。同氏の性格を考えれば、これは仕方がない。「一度も言ってくれなかった」のではなく、実際は示唆する言葉があったものの自身のなかで問題となるものではなく、より突き詰めて考えるに至らなかったということ。そして、この部分に関してはどうやらいまも齟齬がある。

ここで田嶋会長が語った契約解除に至った理由を振り返ってみたい。コミュニケーション不足、信頼関係が薄れてきたという要素が強くクローズアップされているが、正しくはこれらは最終的に契約を解除するキッカケになったに過ぎない。

「試合に勝った負けたで監督を更迭するうんぬんを決めるわけではありません。メディアからの意見で決めるわけでもなく、選手やさまざまな方の意見も聞きましたが、もちろんそれで決めているわけでもありません。ただ、マリ戦、ウクライナ戦のあとにおいて選手とのコミュニケーション、信頼関係が多少薄れてきたということ。そして、いままでのさまざまなことを総合的に判断してこの結論に達しました」

そもそも、コミュニケーションや信頼関係という問題は急激に浮かび上がってくるものではないだろう。さまざまなことが積み重なった結果、なにかのキッカケで「もうダメだ」「やっぱりムリだ」となるのが一般的だと考えられる。日本サッカー協会(JFA)とハリルホジッチの今回のケースだと、最終的に決断するキッカケとなったのがマリ戦、ウクライナ戦のあとに顕著になったコミュニケーションや信頼関係の問題だということに過ぎない。

「W杯予選を突破したあと、それ以前のさまざまな状況でわれわれは議論してきました。西野技術委員長、代表スタッフ、岡田武史副会長とも議論しながらこのチームが最善の方向にいくようにサポートしてきました。マリ戦、ウクライナ戦はW杯に向けた最後の遠征でした。日本代表がいい方向に進むようにしたいということで、最後までハリルホジッチ・ジャパンをサポートするためになにをすべきか考えて努力してきました。最終的にコミュニケーション、信頼関係という部分がマリ戦、ウクライナ戦のあとに出てきてしまったこと。これが最終的なキッカケになったのは事実です」

もう時間を巻き戻すことはできないのだから、重大な決断をした以上、まったく納得できていないハリルホジッチにこうしたJFAサイドの考えをしっかりと伝える必要があるのは明らかだ。

「残念ながら真実はみつかっていない」

ハリルホジッチは記者会見でそう語った。同氏自身も情報が少なく、コミュニケーションや信頼関係が契約解除の理由だと認識してしまっている。これはわれわれも同じで、ひとつの視点からの見方が先行してしまっている。今回の結論に至った背景にはさまざまな要素があり、総合的に判断されたことだと認識を改める必要がある。

文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より5大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。Twitterアカウント : scifo10

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