かつてバルサの下部組織でプレイし“韓国のメッシ”とも呼ばれた神童ドリブラー アンダー世代では日本も苦しめられた韓国の至宝の今

バルサの下部組織でプレイしていたイ・スンウ photo/Getty Images

韓国では将来有望とされていたが……

かつて日本代表MF久保建英と同じバルセロナの下部組織でプレイし、韓国の将来を担うとも言われたMFイ・スンウという選手を覚えているだろうか。

2011年にバルセロナの下部組織、インファンティルA(主に13歳〜14歳の選手がプレイするカテゴリー)に加入したイ・スンウ。加入最初の11−12シーズンでは29試合39ゴールを記録し、チームの得点王に輝いたほか、翌シーズンはカデーテB(15歳〜16歳のカテゴリー)で12試合21ゴールを記録。ドリブルで相手選手数人を抜き去りゴールまで持ち込むプレイスタイルから「韓国のメッシ」という愛称で呼ばれ、今後が期待される選手の一人であった。

その活躍から韓国でも将来有望の選手と期待されており、韓国のアンダー世代ではさまざまな大会で活躍。中でも2014年にタイで行われたAFC U-16アジア選手権では大会の得点王、最優秀選手賞に輝き、チームを準優勝へ導いた。決勝トーナメント準々決勝では日本と対戦し2ゴールを記録。特に2点目のハーフウェイライン手前からドリブルで、日本のDF陣を振り切りシュートまで持ち込んだあのスーパーゴールは印象に残っている人も多いのではないだろうか。当時の日本代表のメンバーには今の主力であるDF冨安健洋やMF田中碧、MF堂安律(当時はSB)らも選出されており、冨安、堂安の2人は当時衝撃を受けた忘れられない瞬間だったと語っていた。

そんな将来を期待されていたイ・スンウだが、2013年にバルセロナがFIFAが定める移籍条項第19条にある18歳以下の選手の国際移籍を禁止する規定に違反したことにより、18歳になるまでバルサの公式試合には出場できなくなってしまった。2016年1月に18歳になりついに公式試合に出場できるようになったものの、以降は大きなインパクトを残せずにいた。イ・スンウは2017年夏に長年過ごしたバルセロナを離れ、イタリアのヴェローナへ移籍。しかしそこでも大きな活躍を見せることができず、そこからシント・トロイデン、ポルティモネンセと次々に移籍するも、なかなか結果を残すことができなかった。また韓国代表でも2018年ロシアワールドカップのメンバーに選出されていたが、以降は代表にもなかなか定着できずにいた。

2021年12月に自国Kリーグの水原FCに入団すると、退団する昨年の夏までリーグ戦79試合に出場し32ゴールを記録。現在は全北現代でプレイし、昨年10月にはワールドカップアジア最終予選のメンバーに選出。怪我人の離脱による追加招集ではあったが、約5年ぶりの韓国代表復帰を果たした。イ・スンウはかつて、韓国メディア『XPORTS NEWS』のインタビューにて欧州時代を振り返りつつ、再び欧州でプレイすることを希望。「以前に比べて落ち着いてきた。昔は無条件に毎試合先発で出てゴールを決めなければならないという思いが毎日浮かんだ。今思えば焦りすぎていたし、欲張りすぎた。今は安定した気持ちでやるんじゃないかと思う」と明かしていた。

なお、当時のバルセロナの下部組織にはイ・スンウのほかにも韓国人選手が所属。韓国では「ネクスト・チャビ」と呼ばれていたMFペク・スンホ、同じく「イニエスタに代わる逸材」と期待されていたMFチャン・ギョルヒの2人だ。両者ともイ・スンウと同様にバルサトップチームでの出場の夢は叶わず、以降はさまざまなクラブを転々としていた。前者は現在イングランド・チャンピオンシップのバーミンガム・シティに在籍。後者は3年前に現役を退き、現在は指導者の道を歩んでいるそうだ。

記事一覧(新着順)

電子マガジン「ザ・ワールド」No.307 世界神童列伝

雑誌の詳細を見る

注目キーワード

CATEGORY:各国代表

注目タグ一覧

人気記事ランキング

LIFESTYLE

INFORMATION

記事アーカイブ