欧州各国リーグ、EL、ECLの日程も終了し、残すはチャンピオンズリーグ(CL)決勝を残すのみとなった欧州サッカーの24-25シーズン。フランスのパリ・サンジェルマンとイタリアのインテルが、欧州チャンピオンの座をかけて戦う。
もっとも注目されている選手のひとりが、PSGのジョージア代表FWクヴィチャ・クワラツヘリアだ。冬にナポリからやってきたクワラツヘリアは、そのドリブルスキルと正確なシュート技術によってルイス・エンリケのチームに新たなものをもたらし、PSGのレベルをまた1段階上へと引き上げた。PSGではシーズンの半分しかプレイしていないが、すでにクワラツヘリアは6ゴール5アシストを記録している。CL準決勝のアーセナル戦でも、同選手は鋭い突破で違いを生み出していた。
そんなクワラツヘリアだが、あるエピソードが注目を浴びている。クワラツヘリアは、自分のサッカー選手としての成長によって父親の命を救ったことがあるという。『The Athletic』が伝えた。
コーカサス山脈を望むジョージアのツァレンジハで育ったクワラツヘリア。サッカー選手であった父親バドリさんは早くからその才能を見出し、ディナモ・トビリシのユースチームに送り込んでいた。やがてプロサッカー選手としての一歩を踏み出したクワラツヘリアは、2018-19シーズンから同じジョージアのルスタヴィへ移籍しプレイしていたが、ジョージア国内を出る気はなかったのだという。ロシアのロコモティフ・モスクワからのローン移籍の話があったが、逡巡していたようだ。
しかしそんな折、父バドリさんが危篤状態に陥る。医師は緊急の心臓手術が必要だと告げたが、家族はその手術費用を捻出することができなかった。そこでクワラツヘリアは、ロコモティフ・モスクワへの移籍を決意。その初年度の給与は父親の手術費用を賄うのに十分で、バドリさんの命は救われたのだという。同メディアはバドリさんが語った言葉も伝えている。「彼にとっては疑問の余地もなかったのです。最初の給与を、すべて私たちに渡してくれたんです」。
ロシアへ渡り、その後ルビン・カザンで活躍したクワラツヘリアはナポリに見出され、欧州のトッププレイヤーとしての道を歩んでいく。ロシアへの移籍はまさにキャリアの転換点といえ、そのままジョージアでプレイしていたら世界がこの才能を目の当たりにすることもなかったかもしれない。
バドリさんはCL準々決勝のアストン・ヴィラ戦を訪れており、2ndレグでの息子のゴールもスタンドから見ていたようだ。そのサッカースキルによって父の命を救ったクワラツヘリアは、いよいよ欧州の頂点へ挑戦することになった。