今季のプレミアリーグではリヴァプールの後塵を拝し、またも2位に終わることになりそうなアーセナル。最終節で敗れ、3位マンチェスター・シティに8点の得失点差をひっくり返されない限り2位の座は堅いものの、3季連続の2位というのはサポーターにとって満足のいくものではないだろう。
優勝を掴むための最後のピースは絶対的なストライカーの獲得であるとされるが、『The Athletic』はそういった見方は過度に単純化されたものだと警告を発している。問題はそう簡単ではないということだ。もちろん強力なストライカーを擁することは重要だが、問題はむしろ中盤の創造性やビルドアップにあると同メディアは見ている。
たとえばデクラン・ライスのプレイを見ると、彼はミケル・アルテタ監督のもとで新たな役割を発見したように見える。ウェストハム時代のようなアンカーではなく、ゴールに絡む8番としての役割だ。しかし、ライスを前線に上げることでボールがうまく回らないという別の問題がアーセナルには浮上している。マルティン・ウーデゴーがしばしば下がってボール回しに関与する姿が見られるが、彼が下がることでゴール前での脅威は減退してしまった。今季ウーデゴーは負傷離脱があったものの、リーグ戦でわずか2ゴールにとどまっている。
ニューカッスル戦の前半でも見られたが、アーセナルはビルドアップがうまくいかず、低い位置でボールを失ってピンチを招いていた。『The Athletic』はアーセナルの攻撃が昨季と比較して、ドリブルとクロスが増加したが、全体的なチャンスクリエイションが低下している点を指摘している。これは中盤でのプレス回避が十分にできておらず、より敵陣深い位置へのビルドアップにおいて、中央でラインを崩すことができていないことが原因だという。
すなわちアーセナルが進化を遂げるためには、よりテクニカルな6番のための十分なスペースが必要だということだ。獲得が内定しているといわれるレアル・ソシエダMFマルティン・スビメンディはまさにこういったタイプで、正統派アンカーであるトーマス・パルティよりも創造性を発揮することが期待される。スビメンディが中盤で創造性を発揮できれば、ウーデゴーがビルドアップに関与する機会も少なくすることができ、より前線に近い位置で仕事をさせることができる。
データサイト『FBREF』によれば今季のスビメンディは、中距離パスを736本中650本通しており、成功率は88.3%と高い数値を誇る。さらにボールを前進させるプログレッシブパスが195本あり、ボールキャリーにおいても前進キャリーの距離が2533ヤードと、ソシエダの中盤の選手のなかではもっとも多い。視野が広く、ボールを前進させることができる選手であることをデータが示している。
強力なストライカーを獲得しても、ボールを届けることができなければ意味がない。やや創造性に欠けると評されるアーセナルのなかで、来季スビメンディがその創造性をもたらすことになるのか、期待される。