涙一筋も強がり「普通でしょ」 前節ミスで失点のGK谷晃生、初勝利支えた想い

G大阪の谷 photo/Getty Images

ようやく初勝利をつかんだ

 前節の湘南戦で大きなミスをしたGK谷晃生を起用した理由を問われたポヤトス監督は「私たち人間は人生の中でも、たくさんの失敗をしていくものだと思っています。彼らを助けて支えるということは、自分自身の中でいつもしていることです。晃生については、今週はメンタル的にも彼自身厳しかったと思いますが、彼のミスは全然気にしていません。それを自分は受け入れ、抱きしめて、彼とともに日々のところで助け、支え、そして彼と共に良くなっていくということを心がけています」と話した。

 開幕からリーグ戦の勝利がなかったG大阪。昨季終盤の堅い守備からカウンターという戦い方から、ポヤトス監督就任後はGKを中心にしたビルドアップのスタイルに変貌を遂げた。それだけにGKには守備と同時に攻撃の起点としての役割が求められる。ただ東口と谷というふたりの日本代表級GKを擁するだけに、誰をレギュラー起用するのかチョイスを迷う部分もある。この試合を含めてリーグ戦では東口が2試合、谷が5試合と完全には固定できていない現状だ。それが直接的な原因かは別にして両GKに大きなミスが目立ったことも事実だ。特にこの試合に先発した谷は前節の湘南戦で致命的なミスを犯し失点。結果的に守備崩壊を招いている。それでも指揮官はポジティブだった。

 4年ぶりに川崎に勝利した瞬間、谷は感情があふれ出たのか、頬には熱いものが流れたように見えた。
「試合後に感情が爆発していました。あれはどんな思いが?」という記者からの質問に「普通でしょ」と精一杯の強がりで返した。

「立ち上がり失点する形が多かったので、自分たちから流れを失うともったいないので、そこをしっかりしようというのと、(立ち上がりのビッグセーブの場面は)オフサイドでしたがゴールラインを割らせないことを見せることはできたと思います」

「何か変えなきゃいけないというのが。ただいつも通りやることはいつも通り。そういうところが試合で今日はうまく出せた。ただ勝てたからよしではないと思います」

 「この試合5試合目、チームとして7試合目。去年とはだいぶやり方が変わり、やりながらどういうプレイが必要かを選手が感じて、成長している部分だと思う。勝ち続けられるチームになるには、そういうとこをこだわっていかないといけないと思います」

 「(下部組織出身の)僕にとってここ(パナソニックスタジアム吹田)でプレイするのは幸せなこと。ここで勝てたことは大きいことですが、たかが1勝とチームは受け止めないといけない。この1勝をするために犠牲を払ってきたと思う。僕個人としてはチームを救うプレイができればいいと思います。個人でもチームでもそういうとこの質・結果にこだわりたい」

 「2点目が入って、相手が退場して、DFの強度だとかチームとしての距離感も良かった。状況を自分たちで作り出していた。運も味方したところもあった。試合をしながら今日はいけるかと思っていました」

 試合に出られるGKはひとりだけ。しかも勝敗に直結するポジションだけに背負う部分はあまりに大きい。 

「長いサッカー人生で、こういうことは起きるだろうし、キーパーの宿命、そこは向き合う。自分がパーフェクトにできると思っていないし、自分が自分に期待している。終わったことは終わったこと」

 最後の最後。
「まぁよく眠れると思います」

 その苦悩と安堵が垣間見えた。

文/吉村 憲文

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