SBで最も欠かせないのはウォーカーではなくカンセロ? 攻撃の貢献度だけじゃない“両サイドでプレイできる”唯一性

マンチェスター・シティでプレイするジョアン・カンセロ photo/Getty images

SBは基本的にサイドを固定される

サイドバックというポジションは基本的に一つのサイドに固定されることが多く、評価の高いリヴァプールのトレント・アレクサンダー・アーノルドやマンチェスター・シティのカイル・ウォーカー、チェルシーのリース・ジェイムズらは本職の右サイドで高く評価されている。左サイドでもある程度のパフォーマンスを発揮するといえるが、確実に言えるのは右サイドよりもパフォーマンスは落ちるだろうということだ。逆足でプレイすることになり、攻守両面でのズレに苦戦するはずだが、そんな常識を今季覆しつつあるのがシティのジョアン・カンセロである。

ベンフィカ、バレンシア、インテル、ユヴェントスと各国リーグの強豪クラブを渡り歩き、2019年にシティにやってきた。チームに適応するまでに時間のかかった選手であり、初年度はリーグ戦で17試合に出場。2シーズン目は自身の自由なプレイスタイルが「カンセロ・ロール」として評価されるように右サイドでの起用が増えた。しかし、シティの右サイドといえばアスリート能力の高さに定評のあるウォーカーがおり、次第に左サイドに回されるようになるも、そこでは守備の脆さやボールロストの多さなどを理由にオレクサンドル・ジンチェンコにポジションを奪われている。

それでも、今季はそのジンチェンコが出遅れると、左サイドでの起用が増え、適応して見せた。前述した守備の脆さや不用意なロストも減っており、左サイドで右利きという特長を生かしてチャンスメイクや自身でシュートを放つなど積極的な働きが見られている。そういったこともあってか高い位置でプレイすることが増えており、アタッキングサードでのパス成功数708本、総シュート数61本、ドリブル成功数46回と攻撃的なスタッツでチーム上位の成績を記録している。また、タックル成功数63回、インターセプト数49本と守備的なスタッツでもチームトップの数字を残しており、攻守両面で輝きを放っている。

その唯一性はチームでも貴重で、サイドバックであればウォーカーよりも欠かせない存在なのかもしれない。もちろん、ウォーカーのスピードによるカウンター対策は見事だが、右ではジョン・ストーンズが、左ではネイサン・アケが守備固めとして機能するようになった。ウォーカーほどの安定感はないかも知れないが、センターバックが本職ということもあって守備の強度が上がる。ストーンズは高さもあってビルドアップで弱みを見せることはない。キリアン・ムバッペのような世界的なFWは難しいが、そうでない場合はウォーカーでなければならないということはなくなった。しかし、カンセロの代わりとなれるような選手はいない。SBながら中盤やアタッカーのように動き、その自由奔放さは彼の強みであり、今季シティの中で最も飛躍したのはこのカンセロだといえる。それはスタッツにも表れており、今後の成長に期待したい。(データは『SofaScore』より)。

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