「いまでもバルサの試合をみている。当時(自身の在籍時)とは変わったことが多くあるが、コンセプトは変わっていない」
これはアンドレス・イニエスタがBBCの取材に語った言葉だ。注目すべきは、コンセプトは変わっていないという部分だ。では、ときの流れに関係なく不動のコンセプトとはいかなるものなのか。これに関しては、シャビの言葉を借りるとわかりやすい。
「われわれは常に試合を支配してコントロールしたいと思っているが、今日は逆だった」(昨年12月8日CLバイエルン戦後のコメント)
各選手の正確な技術、豊富なアイデアでボールを保持し、自分たちからアクションを起こして勝利するのがバルサで、自陣に釘付けにされるのは望むところではない。新たなスタートを切ったシーズンの序盤からシャビが監督に就任してから間もない期間は、なかなか本来の姿をみせることができなかった。ただ、バルサにはコンセプトを受け継ぐ者たちがいた。シャビ就任後はラ・リーガを5勝3分け1敗と粘り強く戦っている。どうやら、すでに軌道修正が行われ、正しい方向へと向かいはじめている。
根底から崩れることなく再生しつつある要因は、クラブに流れる“血”を知っているシャビの手腕もあるが、かつてチームメイトであり、いまも変わらずに戦い続けるジェラール・ピケ、セルヒオ・ブスケッツ、ジョルディ・アルバ、セルジ・ロベルトといったクラブ在籍10年を越える経験豊富な選手たちの存在が大きい。加えて、昨年11月にはフリーだったダニエウ・アウベスが獲得され、指揮官と意識を共有する選手が増えている。
バイエルン戦後には悔しさを吐露していたシャビだが、2022年1月12日に開催されたスーペルコパ準決勝でレアルに2-3で苦杯を喫したあとには、こんな言葉を残している。
「多くの時間で試合を支配することができた。これがバルサの進む道で、就任から2か月ずっと取り組んできた。われわれは正しい道にいる。自分たちを信じて、努力を続ける」
敗戦のなか手応えを得たこの試合の最終ラインには、ピケ、アウベス、ジョルディ・アルバがいて、アンカーは不動のブスケッツが務めていた。平均年齢は高いが、こうした経験豊富な選手たちがピッチで躍動することでバルサが復調してきたのは事実である。
また、チームコンセプトはピッチの上だけではなく、ピッチの外でも伝えられていくもの。寄る年波には勝てず、いずれの選手もパフォーマンスは衰えていく。とくに、ピケ、ジョルディ・アルバ、アウベスは代わる選手の台頭が待たれるという一面もある。ただ、そうなったとしてもシャビのもと新しい道を進む過渡期を迎えているバルサには彼らの存在が必要だ。
「シャビを監督として迎えることは特別なモチベーションだ」
これは、昨年11月にジョルディ・アルバが残した言葉である。クラブの伝統を受け継ぐ者には、“継承者”としての仕事もある。いまは4選手ともモチベーション高く、ピッチ内外でその役割を果たしている。