[特集/バルセロナは原点回帰へ 02]U-23戦士がチームの中心に シャビの思い描く「原点かつ新しいバルサ」

 サッカー選手の現役期間は短く、どんなスターも永遠ではない。ときの流れは止まることなく動き続けている。なんの世界でも世代交代、新陳代謝はあり、新しい時代は常に若者が作っていくものだ。

 そんななか、サッカー界で世代交代の時期を迎えているのがバルセロナだ。昨夏、リオネル・メッシが去ったことで間違いなく一時代が終わった同クラブ。しかし、バルサは育成に長けたクラブで、これまでカンテラ(下部組織)から幾人ものスターを生み出してきた。無論、いまのバルサにもカンテラ出身者を含めて良質な若手が多い。

 そして、その若手を駆使しながら原点回帰を目指すのがシャビに託されたミッション。ロナルド・クーマン前監督の下でも若手は起用されていたが、新政権に移行してからはその流れに拍車がかかっている。就任当初から若手たちを“ファンタスティックな蓄え”と表現し、未来を見据えながら積極的に若手を起用するシャビ。そのなかで成長する俊英たちの特長を踏まえ、青年監督が目指す“新しいバルサ”を紐解いていく。

次世代バルサの“守備陣の要” アラウホの高い対応力

次世代バルサの“守備陣の要” アラウホの高い対応力

トップ昇格初年度となった昨季はいきなり公式戦33試合に出場すると、今季もここまでは25試合に出場するアラウホ。現地では“ピケ2世”と呼ばれることも多く、すでにバルサの最終ラインで欠かせない存在となった photo/Getty Images

 今シーズンこれまでに出場した選手を23歳以下という縛りでみると、以下の16選手となっている。セルジーニョ・デスト、ロナウド・アラウホ、オスカル・ミンゲサ、エリック・ガルシア、アレックス・バルデ、リキ・プッチ、ニコ・ゴンサレス、ペドリ、フェラン・トーレス、ガビ、アルバロ・サンス、アンス・ファティ、アブデ・エザルズリ、フェラン・ジュグラ、イリアス・アコーマック、エスタニス・ペドロラ。

 こうして整理してみると若者が次々にピッチに立っており、バルサは行く末が懸念されるどころか、完成形が楽しみなチームだとわかる。あとはシャビがどう作り上げていくかだが、ここ最近の戦いぶりからは上昇気配が感じられる。目指すのは攻守の切り替えが早く、攻撃でも守備でも主導権を握るスタイルで、ラ・リーガ第23節アトレティコ戦では8分に先制点を奪われたが、戦う集団であるアトレティコを圧倒する走力と強度で前半のうちに逆転するどころか、3-1と突き放してみせた。

 各選手が際立つなか、まずはセンターバックを務めたアラウホが目に留まった。この日に右サイドバックを務めたダニエウ・アウベスは中盤中央や前線に顔を出すなど、かなり自由に動いていた。こうしたポジションの流動性、可変するシステムに対応できることがいまの選手、これからの選手に必須な能力となるが、後ろでフォローしていたのが同サイドのセンターバックであるアラウホで、横や斜めにスライドすることでスペースを埋めるとともに、パスの受け手にもなっていた。ついでに43分にはセットプレイからチーム3点目をゲットし、アトレティコに引導を渡している。

 バルセロナのセンターバックはケガ人が多いが、スペイン代表でもスタメンを張るエリック・ガルシアがそろそろ復帰する。そうなると、ジェラール・ピケ&アラウホ、E・ガルシア&アラウホ、ピケ&E・ガルシアなど、シャビは豊富な選択肢を持つことになる。さらには、クレマン・ラングレ、サミュエル・ウムティティもいる。昨年トライして成果を得られなかった3バックに再挑戦することがあるかもしれないが、いずれにせよE・ガルシア、アラウホの両名がファーストチョイスになっていくだろう。

中盤はペドリ筆頭に逸材揃い 攻守で新生バルサの心臓に

中盤はペドリ筆頭に逸材揃い 攻守で新生バルサの心臓に

加入後は瞬く間に頭角を現し、2020-21シーズンは公式戦52試合に出場する大活躍を披露したペドリ。視野の広さと優れた判断力、パスセンスはどれも絶品で、今やバルセロナの中盤では絶対的な存在に photo/Getty Images

 中盤の選手層も厚い。昨年、スペイン代表、U-24スペイン代表でフル稼働したペドリをはじめ、ガビ、ニコ、プッチという20歳前後のタレントが揃っている。ゆくゆくは視野が広く展開力があり、幅広いエリアを守れるニコをアンカーに、ガビ、ペドリがインサイドハーフという布陣になるかもしれないが、それはまだ先のことで、いまはセルヒオ・ブスケッツ、フレンキー・デ・ヨングがいる。

 ガビは17歳とは思えない体幹の強さがあり、足元がうまいのはもちろん、しっかりと走れて闘える選手だ。前線のワイドなポジションでもプレイできるので、ガビをウイングに起用し、インサイドハーフにF・デ・ヨング、ペドリ、ニコから2名という選択もできる。

 ガビ、ニコ、プッチの連携はカンテラ仕込みで、ポゼッションするべきところではポゼッションし、素早くゴールを目指すべきところでは縦に積極的に仕掛けるなどのイメージが共有できている。そして、ペドリに関してはおそらくどこに行ってもどんなサッカーにも対応する才能がある。かつてのイニエスタ&シャビのような言葉もアイコンタクトも必要のない阿吽の呼吸で行われる連携が、近い将来にペドリ&ガビでみられるかもしれない。

 両名だけでなく、いずれの選手も俊敏性があり、判断、プレイともに早い。オフ・ザ・ボールの動きも巧みで、とくにボールを失ったあとにリカバリーする能力に優れ、相手にカウンターのチャンスを与えない。彼らをピッチに立たせることで、シャビのバルサは攻撃ではもちろん、守備でも主導権を握ることになる。

万能の若手FWが集う前線 中心となるはトーレス&ファティ

万能の若手FWが集う前線 中心となるはトーレス&ファティ

トーレスはまだ若いながらも経験は豊富。前線で様々な役割をこなすことができ、シャビ・バルサでは前線のキーマンとなることが予想される photo/Getty Images

 ここでは[4-3-3]を想定しており、前線3枚のワイドなポジションはこれまで固定されてこなかった。裏を返せば補強ポイントだったところで、冬の移籍市場でフェラン・トーレス、ピエール・エメリク・オバメヤン、アダマ・トラオレが獲得されている。ファティ、メンフィス・デパイがケガで離脱し、ウスマン・デンベレがモチベーションを失っているとなると、この3名にかかる期待が大きい。

 トラオレ、F・トーレスはシャビが求める前線からの献身的な守備ができるタイプで、ハードにボールを追いかけることができる。なかでも、まだ21歳ながらマンチェスター・シティなどで経験を積んだF・トーレスは、前線の各ポジションをハイレベルでこなすことが可能。中盤にペドリ、ガビ、ニコ、プッチなどゴールのお膳立てができる選手がいることを考えると、F・トーレスはフィニッシャーとしての仕事が求められている。複数のポジションでプレイするが、シャビのもとでは前線の真ん中が定位置になりそうだ。

 もうひとつ楽しみなのが、3月下旬に復帰濃厚とされているファティの存在だ。守備時にボールを追いかける姿には“圧”があり、相手には相当なプレッシャーを与える。ボールを持つと前方への推進力があり、自分で強引に運ぶことができるし、まわりとのパスワークで崩すこともできる。なにより、ゴールチャンスをモノにする決定力がある。各選手が意思疎通を図って攻守両面で連携、連動するなか、ときにファティが跳び抜けた身体能力を発揮する。ファティが復帰後のシャビ・バルサは、そんなチームになると考えられる。

 バルサに関して悲観的にみる時期はもう終わっている。クラブ運営において、下部組織を充実させることがいかに重要かがよくわかる。足元がうまく、走れて、闘える若い戦力が十分に揃っている。あとは、シャビが豊富な手駒をいかにコントロールし、次代のバルサを作り上げていくかである。


文/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD266号、2月15日配信の記事より転載

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