[特集/世代交代を止めるな 03]大黒柱となる若手が育たない! 顕著化したレアルとバルサの世代交代危機

 2010年以降レアル・マドリードは4度、バルセロナは2度、ビッグイヤーを掲げており、主役として欧州サッカーを牽引してきた。しかし、昨季のCLではレアルがベスト16、バルサがベスト8で敗退。そして、今季はリーグ戦でも序盤戦に思わぬ苦戦を強いられており、明らかに調子を落としているのが見て取れる。“世界の2強”といっても過言ではなかった数年前ほど圧倒的な存在ではないのだ。

 共通しているのは「世代交代」の難航。ともに若き逸材たちを抱えてはいるもののなかなか台頭が見られず、レアルはこれまでチームを支えてきたベテランたちに頼らざるを得ない状況が続いている。バルサもリオネル・メッシ中心のチームづくりから脱出できていない。世代交代は一歩間違えばチームを破滅へと導く可能性もあり、たくさんのスーパースターたちがプレイするビッグクラブになればなるほど簡単なものではなくなる。特に、史上最高の選手とも称されるクリスティアーノ・ロナウドとメッシによって、長きに渡り世界のトップに君臨してきたレアルとバルサとなれば尚更だ。

 ただ、どんなスーパースターたちもいつかは衰えや別れが来るため、この問題からは決して逃れられないのも事実。いま最もクラブの新陳代謝を必要としているのは、このスペイン2大クラブに違いない。レアルとバルサは、いかにして世代交代を進めていくべきなのか。彼らの世代交代の今に迫る。

絶対的な柱の選手と、枝葉のメンバーのバランス

絶対的な柱の選手と、枝葉のメンバーのバランス

レアルの重鎮ベンゼマ、ラモス、クロース、モドリッチ(左から)。若き逸材たちはこの4名のベテランの牙城をなかなか崩せない photo/Getty Images

 レアル・マドリードとバルセロナはスペインのみならず、世界のトップクラブである。バルセロナはリーグ創設時から、レアルも1950年代から、ヨーロッパの強豪クラブだ。

 レアルとバルサには、クラブの格に相応しいスーパースターが常に在籍してきた。スーパースターの存在がクラブを特別にしてきたともいえる。そして、それこそが両クラブの世代交代の難しさでもあるわけだ。

 少し歴史を振り返ってみよう。

 レアル・マドリードが名実ともに世界のトップクラブになったのは1953年からだ。それ以前もリーグ優勝はしているが2回だけ。しかし、53-54シーズン以降は32回優勝していてもちろん最多である。53年に何があったかというと、アルフレッド・ディ・ステファノが来た。バルセロナとの争奪戦の末に獲得したアルゼンチン人がすべてを変えた。ディ・ステファノを皮切りに、サンティアゴ・ベルナベウ会長は次々と大物選手を獲得していった。

 フランシスコ・ヘント、エクトル・リアル、レイモン・コパ、ホセ・サンタマリア、フェレンツ・プスカシュと、まるでコレクションのようにスター選手を獲得し続けた。チャンピオンズカップ創設から5年連続で優勝し、のちにFIFAから「20世紀のクラブ」として表彰されたチームだ。

 スター軍団のレアルだったが、絶対的な柱はディ・ステファノ。1958年ワールドカップのMVP、ブラジルのジジはディ・ステファノとプレイスタイルが丸被りしたがゆえに冷遇され、失意のうちにレアルを去っている。やはりディ・ステファノと似たタイプだったコパはライトウイングへ“左遷”され、最後に加わったプスカシュはプレイスタイルを変えてディ・ステファノとの共存に成功したが、ディ・ステファノあってのレアルだった。

 スターを並べるだけでは強くならない。ディ・ステファノとジジが共存できなかったように、誰が主役で誰が脇役かを決めなければならない。絶対的な柱になる選手と、その選手を助け、補い、協調するスターたちのバランスが重要だ。そして幹になる選手は当然その実力ゆえに選手寿命は長く、その間に枝葉となる脇役たちは入れ替わっていく。難しいのは長年にわたってチームの柱となっていた選手がピークを過ぎたときだ。新しい柱を探す必要があり、枝葉のメンバーもそれに伴って再編成が必要になってくる。

メッシとロナウド 影響力の大きい二大巨頭

メッシとロナウド 影響力の大きい二大巨頭

これまでチームを牽引してきたメッシと将来を担うと期待のファティ。バルセロナは次世代へうまくバトンを繋げるか photo/Getty Images

 バルセロナではリオネル・メッシが、レアルにおけるディ・ステファノと同じケースといっていいだろう。絶対的な柱であるメッシを活かすべく戦術は組み立てられ、ルイス・スアレスやネイマールといった豪華な脇役も配されてきた。メッシの周辺は入れ替わってきたが、まもなくメッシのピークは過ぎる。バルセロナ自体の財政悪化やフロントとメッシの確執も加わって、どのみち避けられない柱の交換時期は少し早まったとみていいだろう。

 ディ・ステファノやメッシのようなスーパースターがいれば、その選手への依存は避けられない。依存するのが正解なのだ。彼らの存在が、戦術やトレーニングや並みのスター選手には解決できないことを解決してくれる。だからレアルとバルサの世代交代はチームが強いときほど難しい。

 レアルは絶対的な柱だったクリスティアーノ・ロナウドを2018年に失った。しかし、19-20シーズンのリーガでは優勝している。ロナウドの後継者はエデン・アザールのはずだったが、アザールは相次ぐ負傷によってその重責を果たせていない。それでもリーグ優勝できたのは、すでにロナウドの影響力が減少していた
からだ。ロナウドはエースであり続けていたが、チームを牽引したのはルカ・モドリッチ、トニ・クロースのMFであり、昨季のリーグ優勝は枝葉の強さで勝ち取っている。

 しかし、そのモドリッチ、クロースもピークアウトは目前と考えられる。守備の重鎮であるセルヒオ・ラモスも退団が濃厚。主役も脇役もいなくなる、サイクルの完全な終焉は待ったなしの状況だ。実質的にロナウド後の柱になっていたカリム・ベンゼマに頼り切るわけにもいかないだろう。 おそらくレアルが次の柱として想定しているのはキリアン・ムバッペだと思う。ラモスの後釜はダビド・アラバが有力視されていて、モドリッチとクロースのポジションにはすでにフェデリコ・バルベルデが台頭していて、レンタル中の久保建英もいるが、足りなければ補強するだろう。ロドリゴ・ゴエス、ヴィニシウス・ジュニオールの若手を青田買い的に補強したのは脇役の育成にそれほど大金をかけたくない(といってもそれなりの大金だが)という方針なのだろう。柱となる選手は完全に即戦力かつ引き抜きになるので、そこに資金を残しておく必要がある。ともあれ最重要事項はムバッペの獲得に違いない。

確固たるスタイルがあるバルサの方がより困難か

確固たるスタイルがあるバルサの方がより困難か

グリーズマンがバルセロナにとって世代交代のキーマンのひとりであることは間違いないだろう photo/Getty Images

 枝葉の部分についてはレアルよりも順調かもしれない。セルヒオ・ブスケッツの後継者としてすでにフレンキー・デ・ヨングを獲得していて、数年間穴埋めができなかったシャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタのところにはペドリ、リキ・プッチが台頭してきた。アンス・ファティ、ウスマン・デンベレもこれからピークを迎える年齢だ。しかし、肝心のメッシの後継者が見当たらない。ネイマールの復帰は毎年噂にのぼっているが、現状ではパリ・サンジェルマンからネイマールが来るより、メッシがPSGに去る可能性のほうが高そうなのだ。

 もし、来季にメッシが移籍するとなると、バルセロナは柱のいない状態に陥る。

 ロマーリオ→ロナウド→リバウド→ロナウジーニョといった歴代スーパースターの流れからするとブラジル人のネイマールなのだが、それが無理ならアーリング・ハーランドまたはフィル・フォデンあたりの若手になってしまう。しかしハーランドはレアルのほうが関係は近いようで、マンチェスター・シティが生え抜きのフォデンを放出することもないだろう。ロベルト・レヴァンドフスキやハリー・ケインの獲得で時間を稼ぐ手もあるが、バイエルン・ミュンヘンとトッテナム・ホットスパーが簡単に手放すとは考えられず、バルセロナの資金が限られている以上獲得は困難だ。アントワーヌ・グリーズマンがどれだけチームを支えられるかになってきそうである。

 メッシが契約を延長すれば、すでに脇役陣は整いつつあるので、ある程度の強さを維持したうえでネクスト・メッシを探す時間の余裕もできるが、はたしてどうなるか。

 レアルは編成を大幅に刷新しなければならない。ただ、柱になる選手さえ決まればそれほど問題なく収まるのではないかと思う。むしろメッシ後の柱だけが決まらないバルセロナのほうが事態は深刻かもしれない。スーパースターに合わせて戦術を組み替えることに慣れているレアルと違い、バルセロナには培ってきた確固たるスタイルがある。そのぶん次代の柱の人選も狭くなるからだ。

 ロナルド・クーマン監督はポスト・メッシ時代への布石を打っているようだ。ジョゼップ・グアルディオラ以後の監督たちがメッシ・システムを模索してきた流れから、バルセロナのオリジナル・スタイルに近づけている。メッシがいることで歪んでいたプレイスタイルを元に戻そうとしているようにみえる。メッシが抜ければ弱体化は免れないが、伝統のスタイルを継続できれば土台は残る。「次のメッシ」を獲得できれば、新たな黄金時代を築くこともできるかもしれない。

文/西部 謙司

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