堅守軍団の得点源となる“器用な”FW 躍進の古豪に欠かせぬ大型ストライカー

ヴォルフスブルクの攻撃陣を力強く牽引するベグホルスト photo/Getty Images

チームの売りは堅守だが

2020-21シーズンのブンデスリーガでサプライズを巻き起こしている中堅クラブ。そう聞けば、多くの人々が思い浮かべるのは、ここまで2位につけるレヴァークーゼンだろう。今夏移籍市場にて昨季まで主力だったMFカイ・ハフェルツやFWケビン・フォラントを引き抜かれながらも、彼らはしぶとくブンデスの優勝戦線に絡んでいる。ダークホースと呼ぶにふさわしい戦いぶりだ。

しかし、そのレヴァークーゼンだけでなく、今季はここまで4位につけるヴォルフスブルクの奮闘も見逃せない。知将オリバー・グラスナー監督に率いられる同クラブは、まさに“一枚岩”と呼べる集団に仕上がっていると言っていい。なによりの売りはその守備力で、彼らがここまで喫した失点はリーグで3番目に少ない「13」。ハイプレスを戦術の主軸に置く“ラングニック派”の一人として知られるグラスナー監督だが、この指揮官は決してそれだけに頼らない戦術と柔軟な思考で古豪クラブの守備に安定感をもたらしている。

とはいえ、ヴォルフスブルクがここまで勝ち点を積み重ねることができている要因は守備だけでない。現在4位という位置につけることができているのは、攻撃陣の軸となっているエースの躍動も大きい。そのエースとは、28歳のオランダ人FWボウト・ベグホルストだ。今季で加入3シーズン目となる同選手だが、2020-21シーズンの得点ペースは移籍後最高となっている。過去2シーズンは1試合あたり0.5点のペースでゴールを挙げていたベグホルストだが、今季の彼はここまでリーグ戦13試合で早くも9ゴールを記録。1試合あたりに換算すると、その数字は0.69点となっている。例年の約1.4倍ものペースで、このオランダ人FWは今季得点を量産しているのだ。
そして、その得点パターンも実に多彩。身長197cmを誇る選手だけに、ヘディングによるゴールばかりに注目が集まるベグホルスト。しかし、彼が今季決めた9ゴールの身体部位別割合は右足が55.6%(5得点)、頭が33.3%(3得点)、左足が11.1%(1得点)となっている。比較対象として現在得点ランキングトップのバイエルン・ミュンヘンFWロベルト・レヴァンドフスキのデータも見てみると、その割合は右足が64.7%(11得点)、頭が23.5%(4得点)、左足が11.8%(2得点)。レヴァンドフスキもかなり多彩な得点パターンを持った選手だが、今季はベグホルストも彼に匹敵するバランスで得点を奪っていることが見て取れる。

いくら堅守を誇ると言っても、攻撃力に難があれば勝利を得ることは難しい。しかし、さまざま得点の形を持っているベグホルストが前線にどっしりと構えていることで、今季のヴォルフスブルクは上位に食らいつくことができているのだろう。後半戦もさらなる上位を目指すにあたって、ヴォルフスブルクのキーマンとなるのはこのストライカーである可能性は高い。

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