[MIXゾーン]J3終了、そしてU-23チームの活動停止に想う 若手育成に暗い影

最終戦、G大阪U-23は気持ちの入ったプレイを見せた photo/Getty Images

長野戦とは別チームのようだったG大阪U-23だが

 ホームのゴール裏に掲げられた横断幕にはこう書かれていた。

「最期の90分。俺達らしく闘え青黒」

 J3参戦から5年。G大阪U-23チームの活動がこの試合をもって終了する。惜別となる最終戦は、来季のJ2昇格の可能性を残す岐阜との対戦である。ガチの相手に若きタレント軍団がどう戦うのか? 今月9日には同じく昇格争い真っ只中の長野と対戦したものの、この時はすべてのプレイにおいて大人と子供の開きがあり、0‐1というスコア以上の差が存在した。この試合ではどうだろうか?

 森下監督の試合後の言葉に象徴される。

「選手は本当に気合が入っていた。本当に選手たちの能力の高さ、本気になった時の力というのを見せてもらった。最後、いい時間を頂けて、一番僕が幸せものだなと自分で実感している」

 ピッチ上で選手から胴上げされた指揮官は感無量といった表情だった。それほどこの試合では選手の気持ちがプレイから感じられた。

 ツートップに元日本代表のFW前田とJ1でのキャリアも豊富なFW高崎を並べるなど、ベテランを起用した岐阜に真っ向勝負。若さは一度波に乗ると、これほど爆発的な力を見せるのかと思わせるものだった。

 実は筆者は元Jの友人からこんな話を聞いたことがある。

「春先は『なんでこんなユースみたいなひょろひょろのガキと試合せなあかんねん』って思うくらいに、まったく相手にならないんです。でもシーズンが深まると、『これ、ホンマにあいつらか?』って思うほど逞しくなっていて、全然違う選手になってるんです。やっぱり若いって凄いですよね。伸びが。ベテランには絶対にない部分なんです」

 シーズンという長いサイクルだけではない。G大阪U-23も約10日ほど前の長野戦とはまったく違う球際を見せた。U-23にとって最後の試合、有終の美を飾りたいという思い。更にピッチに立った数人の選手は既にJ1のピッチにも立った経験がある。残念ながらそこで爪痕を残せなかった悔しい思いをこの最後の舞台で爆発させたいという想いが感じられた。

「自分の中では今日、きっかけになる試合だと思った。点の取り方はいろいろな形があって、もっと自分が大きく成長できるきっかけになるかもしれないと思う」

 ゴールこそ奪えなかったが、再三ドリブルの仕掛けから惜しい場面を作り出したFW唐山は、本来の自分がストライカーではなくアタッカーであることを思い出すプレイを披露した。

「僕はそんなにオフ・ザ・ボールの選手ではないが、自分でも分からないうちにそういう感じになっていた。今日は久しぶりに森下監督がよくいう『昔の自分』を思い出して、点は取れなかったですけどサッカーができた」

 唐山の言葉には自分らしさを確認できたことへの喜びが感じられた。

 試合はG大阪U-23が9分にMF高木のゴールで先制。その3分後に岐阜が追いついたものの、40分にMF川崎のゴールでG大阪U-23が突き放し、そのまま内容でも圧倒しながら勝ち切った。岐阜はJ2昇格には大量点での勝利が必須だったが、それが呪縛となったのか自分たちで難しい状況を作ってしまい、力なく敗れ去った。

 これでG大阪を含めたC大阪、F東京のU-23チームの活動は停止する。G大阪だけを見ても、堂安、中村、食野など海外に飛躍した選手や、更にトップチームに定着した選手を育ててきたチームの活動場所がなくなることになる。

 コロナ禍で試合運営も難しい中で、今季は幸運にもJ1、J2、J3ともにすべてのリーグ戦を終了することができたが、来季それが可能であるという保証はどこにもない。一体若手にどうやってプレイ環境を与えればいいのだろうか?JリーグはU-21リーグの新設を目指していたが、これもコロナの影響で今季は休止され、来季以降の開催も不透明である。何よりJクラブそのものが経費負担に怯え、参加するクラブは非常に少ないという情報もある(しかも更に減る可能性も)。

 ある関係者は「本当にJが何を考えているのか分からない。育成の現場としては大打撃」と話していた。

 何より若い力には、試合をできる環境が絶対に必要になる。彼らを育てることでしか、日本のサッカーを底上げすることはできない。

 有終の美を飾ったG大阪U-23の歓喜とは対照的に、これからの日本の若手育成に暗い影を落とした試合だった。


文/吉村 憲文

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