[水沼貴史]最強バイエルンから垣間見える隙 CL決勝でPSGが突くべきは……

水沼貴史の欧蹴爛漫046

水沼貴史の欧蹴爛漫046

CL決勝進出を決め、喜びを爆発させたPSGの面々。強豪バイエルンを下し、悲願の初優勝を成し遂げられるか photo/Getty Images

“ネイマール&ムバッペ”のホットラインが火を吹くか

水沼貴史です。準々決勝以降は中立地リスボンでの一発勝負と、例年とは異なる方式で行われた2019-2020シーズンのUEFAチャンピオンズリーグも、残すは決勝戦のみとなりましたね。準々決勝でバルセロナを8-2で粉砕したバイエルン・ミュンヘンの圧倒的なパフォーマンスはもちろんのこと、アタランタに先制されながら後半終了間際の2ゴールで逆転勝ちしたパリ・サンジェルマン(PSG)の粘り強さには驚かされました。新型コロナウイルスの蔓延によってリーグ・アンが突如打ち切りとなり、3月中旬からおよそ4か月間公式戦をこなせなかったPSGの試合勘が戻らないのではと私自身感じていたのですが、杞憂でしたね(笑)。ライプツィヒとの準決勝でもネイマール、キリアン・ムバッペ、アンヘル・ディ・マリアの3トップがハイプレスの口火を切り、これにセントラルMFのアンデル・エレーラとレアンドロ・パレデスが連動してボールホルダーに襲いかかることで試合の主導権を握っていました。この組織的な守備からも分かる通り、今のPSGはかつての攻撃偏重型のチームではありませんし、決勝戦でバイエルンにひと泡吹かせる可能性は十分にあると、私は思います。直近の公式戦29試合無敗と、戦績だけを見れば盤石に思えるバイエルンから垣間見える隙、そしてこの隙をPSGがどう突くべきかについて、まずはご説明しましょう。

バルセロナとリヨン相手にハイプレスを仕掛け、準々決勝と準決勝を物にしたバイエルンですが、どちらの試合でも相手に決定機を作られる時間帯がありました。特にリヨン戦では最終ラインを高く設定していることのリスクが浮き彫りになりましたね。リヨンのFWメンフィス・デパイが前半3分すぎにバイエルンの最終ラインの背後を突いてGKマヌエル・ノイアーとの1対1の局面を作りましたし、16分すぎにはFWカール・トコ・エカンビがバイエルンの左サイドのスペースへ走り、ポスト直撃のシュートを放ちました。バイエルンは最終的に3-0でリヨンを下しましたが、序盤の決定機を一つでも決められていたら、おそらく苦しい試合展開になっていたでしょう。

PSGとしては、今大会でも阿吽の呼吸を見せているネイマールとムバッペのホットラインを中心に、バイエルンの最終ラインの背後を突きたいですね。ネイマールがタイミング良く中盤へ下りて相手守備陣を釣り出す、そしてこの動きによって生まれる最終ラインの背後のスペースへ彼がパスを出し、このボールにムバッペがトップスピードで反応するというシーンを作れれば、自ずと決定機に繋がるはずです。スピード勝負という観点で言えば、快足DFアルフォンソ・デイビスがいる右サイド(バイエルンの左サイド)よりも、ジョシュア・キミッヒ側のサイド(バイエルンの右サイド)が狙い目かもしれませんね。ネイマールやムバッペがバイエルンのハイラインを掻い潜るのか、それともバイエルンのセンターバックと2ボランチ(ゴレツカ、T・アルカンタラ)がネイマールを挟んで自由を奪えるか、あるいは最終ラインがいち早く帰陣して背後のスペースを消せるか。これが今回の大一番の見どころの一つと言えるでしょう。

準々決勝のアタランタ戦から2試合連続ゴールを挙げているマルキーニョス(左)。セットプレイにおいて貴重な得点源となっているほか、強靭な肉体を活かした守備は健在だ photo/Getty Images

PSGが守備面で気をつけるべきこと

バイエルンのこれまでの戦いぶりを見ると、左サイドバックのデイビスと、左センターバックのダビド・アラバがビルドアップの起点となるシーンが目立ちます。PSGとしてはこの二人に対してタイミング良く寄せ、バイエルンの前進を妨げたいところです。彼らと対峙するであろう右ウイングFWのディ・マリアが準決勝と同じようにハイプレスの口火を切り、これに連動して中盤の選手がボールホルダーに寄せることができるか。この攻防の行方も試合の流れに大きく影響しそうです。

また、今大会でも巧みなフリーランニングで味方からのパスを引き出し、多くの決定機に絡んでいるバイエルンのFWトーマス・ミュラーを、PSGの2センターバック(チアゴ・シウバ、プレスネル・キンペンベ)やアンカーのマルキーニョスがどれ程捕捉できるか。こちらも今回の決勝戦のキーファクターですし、トーマス・トゥヘル監督のもとで築き上げたPSGの堅固な守備が、バイエルンの攻撃陣に対してどこまで通用するのか、実に興味があります。今季国内のコンペティションを総なめし、チャンピオンズリーグ優勝に飢えている両クラブによる激闘を、皆さん心行くまで楽しんで下さいね。

ではでは、また次回お会いしましょう!


※UEFAチャンピオンズリーグ決勝、パリ・サンジェルマン対バイエルン・ミュンヘンの一戦は日本時間8月24日(月)の早朝4時00分にキックオフ!



水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。


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