[粕谷秀樹]“攻撃は最大の防御なり”がCL制覇の絶対条件だ シティらしく振る舞ってシルバの花道を飾れ!

粕谷秀樹のメッタ斬り 041

粕谷秀樹のメッタ斬り 041

レアルに先勝し、ベスト8へ優位な状況となっているシティ photo/Getty Images

サイドを崩せず中央で渋滞する

マンチェスター・シティは、2019-20シーズンを26勝3分9敗で終えた。102得点はリーグ最多であり、35失点もリヴァプールの33失点に次ぐリーグ第2位の好成績だ。上々のデータだね。

しかし、9敗は負けすぎじゃん。リヴァプールに差を見せつけられ、サウサンプトン、チェルシー、トッテナム、プレミアリーグから降格したノリッジにも敗れた。ウォルバーハンプトンとマンチェスター・ユナイテッドにはダブルを献上している。

相手の攻撃をアンカーのところで止められなかったり、ビルドアップの段階でセンターバックが失点につながる致命的なミスを犯したり、敗因はいくつかある。サイドを崩せずに中央で渋滞を起こし、攻めあぐねた挙句にカウンターから大ピンチを招くケースもあったよね。
チャンピオンズリーグ(以下CL)のラウンド16で対戦するレアル・マドリードも、シティの弱点に付け込んでくる。アウェイの1stレグを2-1で折り返し、しかもマドリードのセルヒオ・ラモスは出場停止だ。シティがベスト8に進出する条件は揃っている。

でもね、マドリードは厭味ったらしいほど強い。クラブが持つCLの経験値もヨーロッパ随一だ。1点差はちょうどいいハンデ、くらいに考えているかもしれないね。

しかもシティは、左サイドバックに問題を抱えている。バンジャマン・メンディは筋肉系のトラブルが多すぎて、まったく計算できない。オレクサンドル・ジンチェンコは線が細すぎる。

さらにセンターバックは、アイメリック・ラポルテの相棒が決められない。ジョン・ストーンズは出口が見えないスランプに陥り、エリック・ガルシアは対人動作が鈍く、スピード不足だ。ニコラス・オタメンディは空中戦こそ強いけれど、フィードの正確性を著しく欠いているね。

今季限りでシティを退団するD・シルバ photo/Getty Images

持っている最大の武器を前面に

「1点差で負けてもベスト8に進める」みたいな消極策は、シティらしくない。マドリーの息の根を止めるというか、この先トラウマになるようなダメージを植えつける、強烈なアタッキング・フットボールを貫くべきだと思うよ。

これはマドリード戦だけじゃなく、CL制覇のための絶対条件だ。センターバックと左サイドバックが急激に改善される見込みはないし、ベスト8以降はリスボンで一括開催。「アウェイゴール食らったらヤバイ」とか気にせずに闘えるわけだから、アタッキング・フットボールを得意とするシティには有利な条件なんじゃないかな。使い古された表現だけど、攻撃は最大の防御なり、ね。

そしてシティには、19-20シーズンで退団する “ダビド・シルバの花道” っていう大きなモチベーションがあるじゃない。みんなお世話になってきた。頼りになるキャプテンとのラストダンスは、やっぱりCLファイナルがふさわしいよね。

シルバが涙をこらえながらビッグイヤーを掲げる──。

素敵なフィナーレのためにも、シティにはシティらしく、あくまでも攻撃的に振る舞ってほしいな。彼らのポテンシャルをもってすれば、優勝は現実的な目標だよ。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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