[水沼貴史]本命バイエルンの対抗馬は予想外のこのチーム? CL決勝ラウンドの見どころは

水沼貴史の欧蹴爛漫045

水沼貴史の欧蹴爛漫045

巧みなフリーランニングでバイエルンの攻撃を活性化させているミュラー(右)と、正確無比なパスに定評があるアタランタのA・ゴメス(左)photo/Getty Images  

順当にブンデス制覇 バイエルン好調の要因は

水沼貴史です。新型コロナウイルスの蔓延によって中断に追い込まれていたUEFAチャンピオンズリーグが、8月7日(現地時間)から再開されますね。準々決勝以降は中立地リスボンでの一発勝負と、例年とは異なる大会形式となりましたが、大会再開の目途が無事に立ち、私自身嬉しく思っています。

今回は7月10日に行われた組み合わせ抽選会の結果をふまえ、決勝戦のカードを予想してみました。今大会で特に注目してほしいチームや選手を私なりにピックアップしましたので、ぜひ観戦のお供にして下さいね。

攻守両面の安定感や選手層の厚さという観点で言うと、ブンデスリーガ8連覇を今季成し遂げたバイエルン・ミュンヘンがCL優勝の最有力候補ではないかと、私は考えています。カルロ・アンチェロッティ元監督やニコ・コバチ前監督のもとで世代交代がうまくいかず、今季も序盤戦の不振を受けてクラブ首脳が監督交代に踏み切りましたが、バトンを受け取ったハンス・ディーター・フリック現監督の仕事ぶりは素晴らしかったですね。彼によって左サイドバックのレギュラーに抜擢されたアルフォンソ・デイビスが持ち前の快足を活かしてサイド攻撃に厚みをもたらしていますし、左サイドバックからセンターバックにコンバートされたダビド・アラバも、相変わらず的確なカバーリングを見せています。2ボランチの一角として定着したレオン・ゴレツカも、強靭な肉体を活かしたボール奪取や推進力溢れるドリブルでバイエルンの中盤を支えており、今やチームに欠かせない存在となりました。

フリック監督が就任してからのバイエルンを見ていてもう一つ感じるのは、未だに色褪せることのないFWトーマス・ミュラーの存在感の大きさです。アンチェロッティやコバチにあまり重宝されていなかった彼をフリックが改めて主軸に据え、チームの攻撃を活性化させたことが今季中盤以降のバイエルンの好パフォーマンスに繋がったと、私は考えています。

ミュラーの最大の特長は、ボールを持っていない時の動きの質が抜群に良いのと、その量が他のアタッカーと比べて格段に多いこと。たとえば、ミュラーはトップ下で起用された際、ボランチの選手(ゴレツカ、ジョシュア・キミッヒ)が後ろから攻め上がってくるためのスペースを確保するべく、自らサイドに流れて相手を引きつけるという気の利いたプレイを頻繁にしています。また、サイドハーフとサイドバックを使った攻撃が手詰まりになりかけた際には素早くサポートに入って、サイド攻撃に厚みをもたらしています。最前線のロベルト・レヴァンドフスキとの連係も、相変わらず良いですね。レヴァンドフスキが空けたスペースに飛び込んでゴールを狙うだけでなく、逆にミュラー自身が囮となるランニングをし、レヴァンドフスキが飛び込むためのスペースを提供する。こうしたミュラーの特性を理解し、彼を前線の核に据えることでチームを上昇気流に乗せたフリック監督の手腕には、脱帽のひと言です。今大会でミュラーがどこまで輝けるか、そして彼のチャンスメイクを封じるチームは現れるのか。これが注目ポイントの一つと言えるでしょう。

2016年に赴任したガスペリーニ監督の指導のもと、エキサイティングなサッカーを披露しているアタランタ。今大会の台風の目となるか photo/Getty Images

アタランタの攻撃力は侮れない 決勝進出の可能性も

今大会でぜひ皆さんにご注目頂きたいチームが、もう一つあります。今季のセリエAで98ゴール(7月31日時点)を挙げているアタランタです。とにかくゴールが多いので攻撃面がクローズアップされがちですが、彼らの躍進の秘訣は徹底したマンツーマンディフェンスにあると、私は思っています。

マンツーマンディフェンスというやり方にはマークの責任の所在がはっきりするというメリットがある反面、誰かがマークを外されるとそこから相手に局面を打開されたり、味方選手がそこへカバーリングに行くということがしづらいという難点があります。アタランタの全選手はそういったリスクを理解しているのか、各々自分がマークすべき相手プレイヤーに対して猛烈に寄せますし、球際でも激しい。このマンツーマンディフェンスを自陣だけでなく、敵陣の深いところでもやっていることには驚かされましたし、ボールを奪ってからの攻めは速く、ゴール前に攻め上がる人数も多い。90分間ハイプレスをかけ続け、相手を自陣に釘付けにするという戦い方がコンスタントにできているからこそ、毎試合のように複数得点をとれるのではないでしょうか。こういう、攻守の切り替えが淀みなく行われているチームは私自身好きですね。パスセンスの高いMFアレハンドロ・ゴメスや、細かなステップで密集地帯を掻い潜るFWドゥバン・サパタらの個人技を楽しむのもありですが、今大会をご覧になる皆さんには、勇猛果敢な守備から相手ゴールに襲いかかるアタランタのチームスタイルそのものを堪能して頂きたいです。

実のところ、パリ・サンジェルマン(PSG)、アタランタ、ライプツィヒ、アトレティコ・マドリードの山からは、アタランタが決勝に駒を進めるのではないかと思っています。準々決勝でアタランタと対戦するPSGは、エースのキリアン・ムバッペが負傷により欠場濃厚、加えてMFアンヘル・ディ・マリアがイエローカード累積による出場停止と、厳しい台所事情です。ムバッペやディ・マリアの快足を活かしたカウンターを発動できないとなると、打ち合いでアタランタを上回れる保証はないでしょう。

また、新型コロナウイルス蔓延によるリーグ・アン打ち切りにより、PSGは3月中旬から7月下旬まで公式戦から遠ざかりました。7月24日にクープ・ドゥ・フランス決勝(サンテティエンヌ戦)を終え、31日にはクープ・ドゥ・ラ・リーグ決勝(リヨン戦)を消化するとはいえ、アタランタの獰猛なハイプレスを掻い潜るだけのフィジカルコンディションであったり、プレイの強度を取り戻せない可能性があります。こうした現状をふまえると、アタランタに十分勝機はありそうですね。PSG相手の勝利で勢いづき、準決勝でもアトレティコかライプツィヒを撃破するだろうと、私は密かに予想していますが! この予想が当たるかどうかを、ぜひ温かく見守っていてほしいです(笑)。

攻守両面で安定感抜群のバイエルンと、今一番勢いのあるアタランタが決勝に進むと予想させて頂きましたが、一方で「この予想が外れてほしいな」という願望もあります。ホームでの1stレグ(ラウンド16)でまさかの逆転負けを喫したレアル・マドリードが、セルヒオ・ラモスを出場停止で欠くなかでマンチェスター・シティのパスワークをどう封じるのかは見物ですし、内紛の噂が絶えないバルセロナや、クリスティアーノ・ロナウドとパウロ・ディバラのホットラインを中心に連係が徐々に噛み合ってきたユヴェントスの巻き返しにも密かに期待しています。バイエルンに対抗するビッグクラブがもう一つ出てきてほしいですね。8月7日から23日に行われる計11試合の熱戦を、皆さんと共に楽しみたいと思います。

ではでは、また次回お会いしましょう!


水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。



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