[水沼貴史]レギュラー返り咲きの久保建英 リーガの舞台でも通用した武器とは

水沼貴史の欧蹴爛漫043

水沼貴史の欧蹴爛漫043

今季のリーガ・エスパニョーラ24試合に出場し、3得点を挙げている久保建英 photo/Getty Images 

久保のドリブルの凄さとは

水沼貴史です。新型コロナウイルスが世界各地に広がり、欧州主要リーグも中断に追い込まれました。世界中の人々が普段の生活を取り戻し、サッカーを楽しめる日が再び訪れることを、今は願うばかりです。

今回は欧州でプレイしている日本人選手のなかから、久保建英の今シーズンのパフォーマンスについてお話しします。昨年7月にFC東京からレアル・マドリードへの完全移籍を果たし、8月にマジョルカへ期限付き移籍した彼。今年に入ってからベンチスタートが続いていましたが、直近のリーガ・エスパニョーラ3試合連続の先発出場で2得点1アシストと、ここに来てシーズン序盤に掴んでいたレギュラーの座に返り咲いた感があります。リーガの舞台でも通用している彼の武器は何なのか、そして彼が直近のリーグ戦で目に見える結果を残せた要因についてご説明しましょう。

Jリーグでプレイしていた頃からドリブルに定評がありましたが、彼の積極果敢な仕掛けや、小柄な体格を活かした鋭いターンはリーガ・エスパニョーラの猛者たちにとっても脅威になっていると、私は思います。彼のドリブルを見ていて私が魅力に感じた点は、とにかくボールタッチが細かいこと。いつでもボールにさわれる状況を作ることで、相手に寄せられても瞬時にドリブルやパスの方向を変えることができます。ボールタッチが細かいアタッカーに闇雲に寄せたり、寄せるタイミングが少しでも遅れると簡単に突破されてしまいますから、対峙DFにとって久保は厄介な存在でしょう。
また、ドリブル中にヘッドダウンしてしまい、視野が狭くなることで周りが見えなくなってしまうことがサッカーではよくあるのですが、久保はドリブルしている時でも常にヘッドアップしています。ですので自分の横や後ろから走り込んでくる味方を見逃しませんし、相手に寄せられても落ち着いて味方にパスを供給し、局面を打開できます。ボールを持っていない時でも常に首を振り、周囲の状況を素早く的確に掴めるのも彼の持ち味のひとつです。

そんな彼がなぜ今年に入ってから先発で使われなくなってしまったのかという疑問を私自身持ち続けていたのですが、今シーズン序盤にかさんだ前線でのボールロストが、ビセンテ・モレノ監督の一時期の低評価に繋がってしまったのかもしれませんね。ただ、このボールロストは久保のスキル不足によって起きたというよりも、周りの選手のパスのタイミングが悪かったことによって生まれたと見るのが妥当なのではと、私自身感じています。

マジョルカにはFWラゴ・ジュニオールをはじめ、一度ボールを持つと独力突破にこだわりすぎてしまうアタッカーが揃っているのですが、相手に囲まれ旗色が悪くなると、苦し紛れに久保へパスを送るという場面がシーズン序盤に何度か見受けられました。ただ、この久保へのパスは当然相手にも読まれていたので、久保が無理な体勢でボールをキープをしたり、相手に囲まれた状態でボールを受けざるを得ない場面が多かったですね。正直、「もっと早く久保にボールを預けてくれれば彼が良い体勢でボールを受けられるし、チャンスメイクできそうなのに」と思ったことは何度かあります(笑) 見る人によって意見は分かれると思いますが、モレノ監督には久保がボールロストを連発しているように映ったのでしょう。

シーズン序盤こそ味方との連係構築に苦労した彼ですが、最近はチームメイトが彼の持ち味を理解し始めた感じがします。直近のマジョルカの試合を見ていると、マイボールになった瞬間に他の選手たちがまずは久保を探し、彼に安心してボールを預けているふしがありますね。特に今年1月にセビージャから加わり、主に右サイドバックを務めているアレハンドロ・ポゾと久保の縦関係は良いと思います。ポゾが絶妙なタイミングでオーバーラップしてくれているので、右サイドハーフの久保としても自分でドリブル突破する以外の選択肢が生まれてプレイにゆとりを持てている感じがしますし、ポゾとしても久保が自分のランニングを見逃さずにパスを出してくれているので、気持ちよくプレイできているのではないでしょうか。新加入のポゾとの連係を深め、右サイドで良い関係を築いたことがビセンテ・モレノ監督からの信頼回復に繋がり、久保のレギュラー定着に至ったのではないかと私は見ています。

久保自身、リーガ特有のプレイスピードや強度にすっかり慣れてきた感じがしますし、今シーズンの彼のプレイぶりからは致命的なウィークポイントは見当たりません。彼の調子が上向いていただけにリーグ戦が中断になってしまったことは残念ですが、彼にはリーグ再開後もこのまま自信を持ってプレイしてほしいですね。今後日本代表を背負って立つであろう彼の奮闘ぶりを、私はこれからも見守り続けたいと思います。

ではでは、また次回お会いしましょう!


水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。



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