[特集/V字回復への処方箋 03]ドルトムントの活路は優秀なFWとモチベーター型の監督

ウインガーを活かすためにストライカーの補強は必須

ウインガーを活かすためにストライカーの補強は必須

昨季の躍進から一転して今季は大苦戦。ド ルトムントで勝負の2年目を迎えたファブレ photo/Getty Images

 バイエルンの8連覇を阻止する最有力候補と目され、選手、監督、フロント、そして用具係に至るまでクラブ関係者全員が、2011-12シーズン以来のマイスターシャーレ奪還という目標を共有した。しかし、蓋を開けてみれば、起伏の激しいシーズンを送っているドルトムント。首位のボルシア・メンヘングラードバッハ撃破(ブンデスリーガ8節/1-0)やインテル戦での逆転勝利(チャンピオンズリーグ4節/3-2)など前評判に違わぬ白星もなくはないが、バイエルンに大敗(同リーグ11節/0-4)し、バルセロナにも完敗を喫した(CL5節/1-3)ように、躍進した昨シーズンより競争力が上がった印象はない。

 その責任がルシアン・ファブレ監督にあるのは明白。試合中に“メモ魔”と化すこの指揮官は、昨シーズンから代わり映えのない戦術でシーズンインする失敗を犯した。最も不可解なのはサイドアタック主体にもかかわらず、ペナルティエリア内でターゲットとなる生粋のストライカーを起用しないこと。ウインガーのジェイドン・サンチョやトルガン・アザール、あるいはアクラフ・ハキミが、個人技とコンビネーションを織り交ぜた仕掛けでタッチライン際やハーフスペースを抉っても、折り返しのパスは基本的にグラウンダーで、相手守備陣にとっては的が絞りやすくなっている。ヘディングが得意なストライカーがいれば、また違う結果になりえた試合は一つや二つではない。

 火を見るよりも明らかなこの改善点に、聡明なミヒャエル・ツォルクSDらフロントが気づかないはずがない。ファブレの意向を汲み、夏に見送っていた大型ストライカーの獲得に再度乗り出している。ドイツメディアによれば、今を時めくアーリング・ハーランド(レッドブル・ザルツブルク)が12月に来独し、ドルトムントとRBライプツィヒを訪問したという。194cmの高さを誇り、左足のフィニッシュワークも一級品の19歳は、まさにドルトムントに欠ける部分を補う理想の人材だ。悩めるチームを浮上させる起爆剤となりうる。ブランドイメージを維持する意味でも、RBライプツィヒとの綱引きは負けられないが、噂にあがるオリヴィエ・ジルー(チェルシー)も良い選択肢だろう。

サンチョの去就に注目 後半戦に向けて監督交代も

サンチョの去就に注目 後半戦に向けて監督交代も

今季もゴールとアシストを量産中。ドルトムントの攻撃を牽引する若き逸材サンチョ photo/Getty Images

 一方で、サンチョの流出危機に瀕している。母国イングランドから引く手あまたの超逸材は、すでにドルトムントから心が離れているかもしれない。きっかけはイングランド代表での活動を終えた後、チーム合流予定日に無断で現れなかった10月の一件だ。クラブからブンデスリーガ史上最大規模の罰金を科されただけならともかく、直後のボルシア・メンヘングラードバッハ戦のメンバーから外され、雨の降りしきるブラッケル(ドルトムントの練習グラウンド)で孤独なトレーニングを強いられたことに憤慨していると言われる。バイエルン戦で前半途中に交代させられたことも、本人の不満を募らせたかもしれない。前述のCLバルサ戦では直前ミーティングに遅刻してもいる。

 練習やミーティングをボイコットする強硬手段に出て、クラブと袂を分かったウスマン・デンベレ、ピエール・エメリク・オバメヤンのように、サンチョも同じ道を辿ってしまえば、戦力面の巨大な損失もさることながら、選手たちの士気低下にもつながりかねない。黄金期を築いたユルゲン・クロップ監督の時代には考えられなかった話だろう。家族のような一体感があった当時は、だれもがクラブのために尽くした。たとえステップアップ移籍の願望を抱いていたとしても、ヌリ・シャヒンや香川真司はタイトルを置き土産にして、ロベルト・レヴァンドフスキは契約を全うするなど筋を通している。

 はたして現在のドルトムントに自分よりクラブ、あるいは監督のためにひと肌脱ごうとする選手がどれだけ存在するか。その意味で、不満分子となりそうなサンチョの放出にメリットもなくはないが、理想はこのティーンエイジャーが気持ちを入れ替えて、後半戦に臨んでくれること。ファブレは決して悪い指揮官ではないものの、絶対的なカリスマやリーダーシップを備え、選手たちに大きなモチベーションを与えられるタイプの監督こそ、ドルトムントにタイトルをもたらす気がしてならない。振り返れば、クロップ以前にリーグ制覇に導いたマティアス・ザマーも優秀なモチベーターだった。

 戦術の話に戻れば、[4-2-3-1]に頑なにこだわっていたファブレがここにきて路線変更。3バックという新たなソリューションを見出し、結果次第では解任とも囁かれた13節のヘルタ・ベルリン戦を皮切りに、公式戦3連勝と浮上のキッカケを掴みつつある。それに伴い、かつてドルトムントU-23を率いたダニエル・ファルケ(現ノリッジ監督)を呼び戻すという噂は沈静化した。だが、ファブレが首の皮一枚でつながっている状況に変わりはない。招聘できるかどうかは抜きにして、ファブレ同様に冷静沈着なタイプのマウリシオ・ポチェッティーノは……。シーズン後半に向けた大切な準備期間であるウインターブレイクを前に、フロントがいかなる決断を下すか注目だ。

文/遠藤 孝輔

※theWORLD(ザ・ワールド)240号、2019年12月15日発売の記事より転載

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