[ロシアW杯#24]コスタリカの堅城、追加タイムで陥落!  ネイマールのゴールでブラジル待望の勝点3

徹底した守備でコスタリカがペースを握る

徹底した守備でコスタリカがペースを握る

アディショナルタイムにようやくゴールをこじ開けたコウチーニョとネイマール photo/Getty Images

嫌な予感は試合開始前からあった。スイス戦の翌日に違和感を訴えて別メニューでの調整が続いたネイマールはこの試合の出場が危ぶまれ、右サイドバックのダニーロは前日のトレーニングで右大腿部を負傷。第1戦を落として後がないコスタリカが守備のスペシャリストであることを考えれば、苦戦は十分に予想された。

“攻撃のブラジル”と“守備のコスタリカ”の構図は、試合開始直後から明確に表れた。主導権を握ったのはコスタリカだ。自陣に押し込まれながらもやはりロングカウンターが冴え渡り、5分には司令塔B・ルイスのスルーパスからチャンスを演出。13分にはガンボアが右サイドを突破し、鋭いクロスにボルヘスが合わせた。25分経過時点のシュート数は、コスタリカの「3」に対してブラジルは「1」。そ のデータが、ボール支配率に表れない“コスタリカのペース”を物語った。
 
流れを変えるきっかけを作ったのは、やはりネイマールだった。27分にコウチーニョのスルーパスを引き出すランニングから決定機を迎えると、32分には鮮やかなキックフェイントからクロスを入れてチャンスを作った。エースの存在感が際立ち始めると、ブラジルは左サイドにボールを集めて攻撃を組み立てる。最終ラインにマルセロ、中盤にコウチーニョ、前線にネイマールが並ぶ縦のラインはやはり強力で、スコアレスに終わったものの、前半終了間際の時間帯はコスタリカを“ベタ引き”の状態に追い込んだ。ただし、それでもゴールは生まれず、ブラジルの指揮官チッチは後半開始と同時にウィリアンに代えてD・コスタを送り込む。

誰もが諦めかけた追加タイム ついにナバスの牙城を破る

誰もが諦めかけた追加タイム ついにナバスの牙城を破る

追加タイムに放ったコウチーニョのシュートはGKナバスの股下を抜け、ゴールに吸い込まれる photo/Getty Images

後半は精神力の勝負だった。50分にはG・ジェズスのヘディングシュートがポストを叩き、コウチーニョのシュートはわずかにゴールの左。56分にはネイマール、58分にはコウチーニョが際どいシュートを放ったが、コスタリカの守護神は顔色一つ変えずにこれをストップした。圧倒的な攻勢を維持していたブラジルは時間の経過とともに焦り、一方、GKナバスを中心とする堅守で再三のピンチをしのぎ続けたコスタリカは、時間の経過とともに自信を深める。78分にはペナルティエリア内でネイ マールが倒されたが、一度はPKを宣告したレフェリーの笛はVARによって覆された。これを機に、ギリギリの攻防はさらにヒートアップする。迎えたアディショナルタイム。第4審判が「6」と記されたボードを掲げて長いアディショナルタイムに突入すると、その次の瞬間、ついに均衡が破られた。ゴールをこじ開けたのはコウチーニョ。さらにダメ押しゴールを奪ったネイマールは試合終了と同時にピッチに崩れ落ち、プレッシャーから解放されて涙を流した。

コスタリカの研ぎ澄まされた集中力を目の当たりにすれば、0-0のまま90分を過ぎた時点で誰もがスコアレスドローを予感したに違いない。しかし、窮地に追い込まれた王国はそこから底力を発揮し、8分間に及ぶアディショナルタイムで2つのゴールを奪い取った。 4年前の雪辱を期すブラジルの船出は、決して順風満帆とは言えな い。しかしこの激闘によって手にした勝利が、強い向かい風を追い風に変える可能性を秘めている。

[スコア]
ブラジル代表 2-0 コスタリカ代表

[得点者]
ブラジル代表:コウチーニョ(90+1)、ネイマール(90+7)



文/細江 克弥

『ワールドサッカーキング』『ワールドサッカーグラフィック』などの編集部を経て、2009年にフリーのサッカーライター/編集者として独立。現在も本誌をはじめ、『Number』などさまざまな媒体に寄稿している。欧州からJリーグ、なでしこリーグまで、守備範囲は幅広い。

theWORLD207号 2018年6月23日配信の記事より転載

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