フェルナンド・トーレス氏は2010年前後のスペイン代表黄金期にその甘いマスクとストライカーとしての実力で一世を風靡した。アトレティコ・マドリード、リヴァプール、チェルシー、ミランと名門クラブを渡り歩き、2018‐19シーズンには日本のサガン鳥栖でもプレイ、『キャプテン翼』に大きな影響を受けたと語る世界的なスターは、2019年にスペインの盟友であるアンドレス・イニエスタ氏、ダビド・ビジャ氏が所属するヴィッセル神戸と対戦した試合で、現役生活に別れを告げている。
そんなトーレス氏は現在指導者として道を歩んでいる。サガン鳥栖退団後、古巣アトレティコ・マドリードに戻り、Bチームのコーチングスタッフとして活動を開始。そして2024年にはBチームの監督に就任した。
現地のラジオ番組『Radioestadio Noche』に登場したトーレス氏は指導者となった現在の変化について答えた。
「今はとても幸せな時期であり、僕たちは努力の成果を享受している。この瞬間を楽しんでいる。若い選手たち、アカデミーの選手たちを助けられると思う。彼らの不安や悩みを理解できる。僕も同じ経験をしてきたからね」
「自分はコーチにはならないと言っていた人間の一人だった。けれども、キャリアの終わりに差し掛かると、サッカーの見方が変わったんだ。プレイする時とは違った視点で見るようになる。僕は非常に幸運だったね。素晴らしいコーチたちに恵まれたから。自分が望んでいたようなコーチになりたいと思っている。それは選手の話に耳を傾け、個人を気遣ってくれるコーチだ。コーチの養成コースで学んでいるときに、自分がコーチになれること、そしてそれが好きだと気づいたんだ」
「(コーチとして)聞くことを学ばなければならない。我々は非常に大きな指導陣だ。時には耳を傾け、時には目を向ける。教師が学校での権威であるように、コーチはチームでの権威である。キャリアにおける成功と失敗の差は小さな違いから生まれるもので、チャンスがいつ訪れるかは決してわからない。だからこそ常に準備をしておく必要がある。選手たちには自分のことはあまり話さないが、彼らは僕が彼らの状況を理解していることを知っている」
また、自身に大きな影響を与えた存在としてスペイン代表監督だったルイス・アラゴネス、ドルトムントやリヴァプールで指揮したユルゲン・クロップ、そしてアトレティコの代名詞ともいえる存在であるディエゴ・シメオネ監督の名前を挙げた。
「ルイス・アラゴネスはサッカーを取り巻くあらゆることを僕に最も多く教えてくれた人物だ。それは90分間の試合が行われる時と同じくらい必要不可欠で、現実的なものだったと言える」
「僕にとって手本はユルゲン・クロップだ。クロップのチームは僕が観たいと思うサッカーで大好きだ。それはとりわけイングランドのスタイル、トランジション、ファンが立ち上がり、絶えず何かが起こるサッカーだ。難しいのはそれをどのようにトレーニングするかを知ることだ。私はクロップの指導を見学する機会があり、そこにいた1週間はマスターコースのようなもので、その方法を知ることができた。その時間は何年も通ったコースよりも多くのことを学んだ。彼から招待を受けてね。彼が監督を退任すると発表したのを知って会いに行ったんだけど、彼は僕をロッカールームや技術的なミーティング、ホテルでの打ち合わせ、ビデオ、ピッチ、トレーニングに、まったく面識がないのに参加させてくれたんだ。僕は50の質問を記したメモを持っていたが、2分も経たないうちに、それ以上の質問をする必要はなくなった。そこにいるだけで彼の言いたいことが完全に理解できたんだ。彼のゲームモデルに対する見方のシンプルさに、驚かされたよ」
「シメオネは僕がトップレベルの世界で最後に指導を受けた監督であり、僕は常に彼が送るメッセージを称賛してきた。彼が持つその情熱は黄金ような価値がある。情熱こそが鍵となる要素だ。チームメイトを見て、その情熱を直接感じた時、あなたは彼らと共にどこへでもついていくだろう」
世界的な名将たちの薫陶を受けて指導者としてのキャリアを歩むトーレス氏がどのような指導者としてのキャリアを歩むのか。いずれアトレティコ・マドリードのトップチームで指導する姿を期待したいところだ。