伊東純也の一件で思い出されるメンディのこと、そしてデパイの悲痛な叫び「それで、この責任を一体誰が負う?」

無罪となったメンディ photo/Getty Images

冤罪であれば恐ろしいことだ

女性の同意を得ないままに性行為に及んだとする週刊誌報道により、現在行われているアジアカップで日本代表チームから離脱することになったFW伊東純也。無事にベスト8までコマを進めた日本代表だったが、思わぬことで代表チーム、ひいてはサッカー界全体に動揺が広がっている。

もちろん本当に伊東に性加害の事実があるのであれば、厳しく罰せられるべきだろう。しかし、未だ真相は明らかになっていない。ここで思い出されるのはサッカー界に起こった性加害にまつわる冤罪事件、とりわけ現ロリアンのDFバンジャマン・メンディの一件ではないだろうか。

メンディはマンチェスター・シティに所属していた2021年8月に複数の女性に対する複数の性的暴行の罪で逮捕、起訴された。この件は裁判にまで発展したが、しかし結局どの容疑においても無罪判決が言い渡され、昨年の7月にはすべての容疑において、晴れて無罪となった。判決を聞いたメンディは、その場で泣き崩れたという。
その間およそ2年。マンチェスター・シティという欧州でもトップ・オブ・トップのクラブに身を置きながら、一切の試合に出ることが叶わず、代表でのキャリアも止まってしまった。アトレティコ・マドリード所属のFWメンフィス・デパイは、この件についてSNSに次のような悲痛な投稿を行い、これも話題となった。

「それで、私たちはいま何をしているのでしょう。誰がこの兄弟の回復を助けるのでしょう。彼の名に損害を与えたことについて、誰が責任を取るのでしょうか。彼は、どうやって自分のキャリアを取り戻せばいいのでしょうか。プロのサッカー選手になるために何年も費やして……。さて、どうするのでしょう」

結局メンディは無罪となったが、それを勝ち取るために費やした時間、出られるはずだった試合、築けるかもしれなかったキャリアを誰も補償してはくれないのだ。

今回の伊東の件が無罪であったとしても、彼にとってのアジアカップはここで終わってしまったし、名前についた傷を完全に修復することは難しいだろう。もしもメンディのケースのように裁判に発展し、解決まで数年を要したとすれば……。伊東は現在30歳である。ブランクが生じることを考えても、もう欧州の第一線で活躍することは難しいかもしれない。

伊東側は、虚偽告訴容疑の告訴状を大阪府警に提出したという。今はことの推移を見守るしかない状態だが、これ以上選手のキャリアが破壊される事例が生まれないことを願うばかりだ。

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