クロアチア代表は想像の何倍も強かった。FIFAワールドカップ・カタール大会準々決勝でブラジル代表を撃破したこともあり、クロアチアへの評価を見直した日本のサッカーファンも多かったのではないか。
史上初のベスト8入りを目指した日本代表はベスト16でクロアチアと対戦し、PK戦の末に敗れた。スコアが示す通りクロアチアに圧倒されたゲームではなかったが、こうした接戦を制するところにクロアチアの強さがあるのだろう。
さらなる驚きはスタイルの変化だ。ベスト8でブラジルと対決したクロアチアは、日本戦の時より積極的にプレスをかけていた。高い位置からブラジルの攻撃を止める意図があり、ボールを奪えばモドリッチ、コバチッチ、ブロゾビッチの中盤トリオを軸にじっくりとボールを回し、ブラジルにペースを作らせなかった。
日本との対戦ではアバウトなロングボールも多く、意外とボールを持たせてくれると感じた人もいただろう。実際にドイツ戦(26%)、スペイン戦(17%)に比べると日本のポゼッション率は41%まで上がっている。もちろんクロアチアにボールを持たされていた時間帯もあったり、前田大然や浅野拓磨といった快速FWのプレスを軸とした日本の守備がクロアチアを苦しめた側面もある。
ただいずれにしても、ボールを回していた割に日本の決定機は多くなかった。日本としてはドイツ、スペイン戦で見せていた速攻を発動しづらくなったところがあり、コスタリカ戦と同じくボールを持っているのにチャンスを作れない時間帯も目立った。このあたりはクロアチアが上手く日本の強みを消していたということだろうか。日本としてはクロアチアがポゼッションにこだわり、ボールを持つことにこだわってくれた方がプレス&ショートカウンターを発動させやすかったはずだ。
一方でブラジルはグループステージから決勝トーナメント1回戦までポゼッション率で常に相手を上回っていたが、クロアチア戦は初めて50%を下回った。
現代サッカーにおいてポゼッション率はそこまで大きな意味を持たないが、クロアチア側はブラジルに自由にボールを回される展開を嫌ったのだろう。ブラジル戦では自分たちがボールを持つ時間を長くしていたが、このポゼッションも決して相手を崩しに行くものではなかった。横パスやバックパスも多く、攻撃的なパスワークとは言えないだろう。しかしブラジル側はプレスが外されるため、なかなかリズムを掴めない。クロアチアのポゼッションはボールを持って自分たちの時間を作ることを目的としたものだったと言える。このように対戦相手に合わせて戦い方を変え、相手の強みを消せるのがクロアチア強さの理由だ。今大会の中でも究極のカメレオンチームと言っていいかもしれない。
準決勝の相手はブラジルと同じ南米の強豪アルゼンチンだ。リオネル・メッシを中心とした攻撃はブラジルや日本ともタイプの異なるもので、これに対してクロアチアがどういう戦法を取ってくるのか非常に興味深い。