歓声が上がることのない何気ないワンプレイ シュミット・ダニエルがパラグアイ戦で見せたハイレベルな配球術

パラグアイ戦で先発となったシュミット・ダニエル photo/Getty images

プレス回避はW杯で確実に必要になる

11月のワールドカップ・カタール大会まで約5カ月となった。今回は欧州のシーズン中の開催であり、日本代表としてはあまり時間がない。そのため6月の4試合が非常に大事であり、ここで収穫を得る必要がある。4-1で快勝となったパラグアイ戦ではその収穫があった。GKシュミット・ダニエルの出来だ。

最終節を除くアジア最終予選の9試合では一貫して権田修一を守護神に置いていた森保一監督。そのためこのパラグアイ戦も権田かと思われたが、ベルギーのシント・トロイデンで活躍するシュミットが起用された。

197cmと日本のGK陣では最もサイズのあるシュミット。これは世界で見ても大きく、レアル・マドリードのGKティボー・クルトワ(200cm)ともそこまでの差はない。
シュミットの強みはその高さを生かした空中戦やセービングの安定感が挙げられるのだが、特筆すべきはビルドアップでの貢献度だ。今やGKに標準搭載されているといっても過言ではないこのビルドアップでの貢献度だが、前任者の権田はそれほど足元のスキルに自信のあるタイプではなかった。

パラグアイ戦はこのシュミットの組み立てでの貢献度の高さが分かるゲームだった。例えば58分のシーンでは相手からのプレッシングを受けた伊藤洋輝がシュミットにバックパスしている。以前の日本代表であれば前線に大きく蹴りだすことになるが、シュミットは左サイドでフリーになっていた三笘薫を見つけ、正確なパスを蹴り込んでいる。歓声が上がることのないワンプレイだが、これができるだけで相手のプレッシングを無効化することができる。

アジア最終予選では体験することはなかったが、今後対戦する国は日本代表のビルドアップに対してハイプレスを仕掛けてくる可能性が高い。特にカタールで対戦することになるスペイン代表やドイツ代表はほぼ確実に仕掛けてくる。ハイプレスの強みはプレッシングで相手がミスをすればショートカウンターから簡単にゴールを奪うことができる点だ。ロングボールでプレスを回避しても後方でセカンドボールを回収することができ、常に主導権を握って戦うことができる。欧州の最前線で戦う国はこの守備戦術を採用しているチームが多い。

サムライブルーとしてはこの作戦の餌食になるところであったが、シュミットがいれば心強い。パラグアイ戦では技術だけでなく冷静さも披露しており、シュミットの評価が大きく上がるゲームになった。

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