なぜ自慢の守備を補強しなかったのか シメオネ築いた堅守・アトレティコ崩れる時
アトレティコを指揮するシメオネ photo/Getty Images
近年は前線の補強が目立った
アトレティコ・マドリード自慢の守備はどうなってしまったのか。昨季のリーグ制覇から一転して今季は苦しいシーズンとなっており、ディエゴ・シメオネのチームらしくない守備の崩壊が目につく。
シメオネの哲学が大きく変わったわけではないはずで、やはり最終ラインの選手個々の実力不足と言えるのではないか。近年のアトレティコを振り返ると、最終ラインの補強にあまりお金をかけていないのだ。
攻撃面ではMFトマ・レマルに6000万ユーロ、FWジョアン・フェリックスには1億2600万ユーロ、昨夏もウディネーゼからMFロドリゴ・デ・パウルを3500万ユーロで獲得しており、攻撃陣の顔ぶれは首位を走るレアル・マドリードにも負けないほどの豪華さだ。
エルモソには2500万ユーロを投じたが…… photo/Getty Images
ワールドクラスのDFが見当たらない
一方で、守備陣にはここ5年3000万ユーロ以上の移籍金で獲得された選手がいない。2016年の夏にサッスオーロからサイドバックのシメ・ヴルサリコを1400万ユーロ、2018年の夏には同じくサイドバックのコロンビア代表DFサンティアゴ・アリアスをPSVから1100万ユーロ、2019年にはFCポルトからセンターバックのフィリペを2000万ユーロ、同じくセンターバックのマリオ・エルモソをエスパニョールから2500万ユーロ、サイドバックにはアトレチコ・パラナエンセからブラジル代表DFレナン・ロディを2000万ユーロ、トッテナムからイングランド代表のキーラン・トリッピアーを2200万ユーロで獲得。
この2019年は最終ラインに大きく手を加えたが、いずれもワールドクラスとは言い難い。すでにトリッピアーはニューカッスルへ移籍しており、アリアスもグラナダにレンタル移籍中だ。これらの補強が成功だったかは微妙なところ。2013年から長くプレイするウルグアイ代表DFホセ・マリア・ヒメネス、モンテネグロ代表DFステファン・サビッチもいるが、こちらもワールドクラスとは言えないか。やはりディエゴ・ゴディン、ミランダ、フィリペ・ルイス、ファンフランで構成していた最終ラインには見劣りする。
シメオネは2011-12シーズン途中からアトレティコの指揮官に就任しており、初めてフルシーズンを戦った2012-13シーズン以降リーガ・エスパニョーラの失点数が30を超えたシーズンは1回しかない。それも最初の2012-13シーズンだけだ(31失点)。
しかし、今季は21試合消化時点で26失点。残り試合数を考えると、30失点は確実に超えるだろう。シメオネ政権発足後ではワーストの守備陣となるかもしれない。
長期のリーグ戦を制するには攻撃力を高めることも大切だが、近年のアトレティコは補強のバランスが攻撃に偏り過ぎていたのだろうか。守備力が落ちているのは明らかで、シメオネ流の良かったところが消えつつある。今季終了後には補強の方針を含め、問題点を1から振り返る必要がありそうだ。。