[西岡明彦]ケインをめぐる思惑 トッテナム新シーズンは混乱の幕開け

プレミア最強ガイド #81

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 選手補強を巡るクラブ間やエージェントとの駆け引きは当事者のみ知るところですが、今夏の監督人事で後手を踏んだトッテナムのケースは複雑な事情が絡んでいます。難航する理由を考えてみました。

 昨季終盤にジョゼ・モウリーニョ監督を解任し、今季を新体制で迎える決断をしたトッテナム。その監督人事において数々のビッグネームに逃げられ、元ウルブズ指揮官のヌーノ監督に落ち着いたのも束の間、今度はエースストライカーのハリー・ケインが移籍を検討していることが明らかになりました。倹約家で知られるダニエル・レヴィ会長は、選手の年俸をできるだけ抑えることでクラブの収支を整えてきました。指揮官には若手選手を積極的に起用することを条件にオファーし、サラリーが高い選手を獲得することは控えてきました。

 今夏、ケイン獲得に手を挙げたマンチェスター・シティには違約金1億6,000万ポンドという高額な値札を付けて流失を阻止しようと画策。その一方で、その穴埋めとなるストライカーの人材確保にも水面下で動いてきました。この違約金で交渉が成立するならば、チェルシーがインテルからロメル・ルカクを獲得するために費やした英国史上最高額の違約金9,800万ポンドをわずか数日で塗り替えることになります。万が一、それだけの資金を手に入れたとしても、財布の紐が堅い会長は補強候補リストの1番手に名前があるインテルのラウタロ・マルティネスに対し、簡単に首を縦に振らない姿勢を示しています。

 インテルとマルティネス側が条件提示している違約金は推定6,000万ポンド。ケインの売却想定額とは大きな開きがありますが、資金不足に苦しんでいるインテル経営陣の足元を見て、値引き交渉をしていると見られています。

 業を煮やしたマルティネスの代理人であるアレハンドロ・カマノは作戦に出ます。「ラウタロはインテルで幸せだし、イタリアでの生活を満喫している。インテルと喧嘩別れするつもりはないし、ここに残留しても構わない。昨季、メッシと同僚になれる可能性もあったが、カタルーニャ地方のクラブでプレイするのも悪くないね」と、トッテナム行きが第一選択でないことを示唆したのです。

 2019年にリヨンからフランス代表MFタンギー・エンドンベレを獲得した際に支払った違約金5,500万ポンドがスパーズの違約金最高額記録。132試合49得点の実績を誇るアルゼンチン人ストライカーを獲得するコストとして6,000万ポンドは高過ぎることはありません。レヴィ会長の常套手段として移籍期限ギリギリのデッドラインまで粘って交渉することで理想的な条件を勝ち取る手に出るのか。あるいは、それまでに破談してプランの変更を余儀なくされるのか。8月31日の移籍期限までトッテナムの動向に注目です。

文/西岡 明彦

※電子マガジンtheWORLD260号、8月15日配信の記事より転載

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