フランスを悩ませる“ムバッペ問題” 無得点のエースにFKを任せるべきか、否か

今大会いまだにゴールがないムバッペ photo/Getty Images

周囲からはムバッペの“エゴ”を非難する声も

偉大なストライカーとなるためにはある程度の“エゴ”も必要とされるが、フランス代表FWキリアン・ムバッペ(22)のそれは度を過ぎたものとなりつつあるのだろうか。今では世界的なストライカーとなった男だが、EURO2020における彼のある振る舞いに対して、現地では疑問の声が上がっている。

その声の主は、元フランス代表MFジェローム・ロタン氏。同氏がムバッペの何に疑問を抱いているのかというと、それは“はたして彼がFKを蹴るべきなのか”という点だ。今回のEUROでもエース格としてレ・ブルーの攻撃陣を牽引している同選手だが、彼は一体なぜアントワーヌ・グリーズマンやポール・ポグバといった優秀なプレイスキッカーにFKを譲らないのか。このムバッペの行動に、ロタン氏は違和感を覚えている様子だ。

「ムバッペがピッチ上におけるリーダーであることに問題はない。だが、彼のエゴがフィールド外にも広がっているのは悩ましいよ。私が思うに、デシャンはもはやそれを管理することができていない。これは問題だ。ムバッペに必要以上に多くのことをさせているのは驚きだよ」
「特に驚いたのは、彼がセットプレイのキッカーを任されたという点だ。ムバッペは自分のキックが他の選手と同じレベルに達していないということを認識しているんだろうか? トレーニングでは決めているのかもしれない。でも、私の知る限り、彼が見事なFKを決めた記憶はないね。すべての試合を見たけど、25mの距離から決めたところを見たことがない。だが、グリーズマンやポグバが決めているのは見たことがある。彼らで左と右も使い分けられるのに、ムバッペは何をしているんだろうね」(『RMC Sport』より)

今回のEUROにおいて、ムバッペのエゴが悪い方向に出始めているとロタン氏は考えている様子。たしかに、グリーズマンやポグバがいるなかで、ムバッペがプレイスキックを蹴る必要はないと言えるだろう。グリーズマンは「蹴りたい選手が蹴ればいい」と話しているが、チーム全体からしてみれば決して些細な問題ではない。

とはいえ、この“エゴ”が完全に悪いともいえないのは事実だ。やはり、ムバッペは生粋のストライカー。エース格とされながらも、今大会でいまだにゴールがない状況で焦りを感じている部分もあるのだろう。そんな状況で少しでも得点のチャンスを増やしたいというのは、点取り屋として当然持つべき感情といえる。キッカーを辞退してほしい周囲の気持ちも理解できるが、デシャン監督はそういった事情も含めて、あくまでキッカーはピッチ内の選手の判断に任せているといったところか。

一概にどちらが正解ともいえない、難しすぎるフランス代表の“キッカー問題”。ムバッペにどこかでゴールが生まれれば風向きも変わってくるはずだが、はたしてレ・ブルーのエースはEURO中にいつもの輝きを取り戻すことができるか。まずは日本時間28日の深夜に行われるスイス代表戦でのプレイに注目したい。

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