[MIXゾーン]残酷なまでに表れた神戸と横浜FCの差 前への姿勢が傷口を広げてしまう難しさ

横浜FCは失点を取り戻そうとした結果、さらに大きなダメージを負った(写真はイメージ) photo/Getty Images

古橋のハットトリックで神戸が完勝

 立ち上がりは横浜Cが好機を作り出した。ただ「前半立ち上がりから良い形で入ったものの決定的な場面でゴールを奪えず、そこから相手に押し込まれる時間が長くなり、CKから失点してしまった」(早川監督)

 リズムを神戸に奪われた理由を早川監督は「相手のビルドアップでアンカーが(CBの中央に)落ちて3枚になったり、ふたりになったりと、なかなか前線のファーストDFが決まらなくなった。最終ラインも中盤のラインも少し下がってしまったことで間に入られる場面が多くなった」と振り返る。

 システム的に生まれるギャップをどう修正するのか、横浜FCが答えを見出せないでいる内に今度は神戸が攻撃の牙を剥く。
 26分に左CKをFWドウグラスが頭で合わせて神戸が先制。今季セットプレイの失点が悩みの種となっている横浜FCだが、またしても弱点を克服できず。これを機に流れは一気に神戸に。そしてここからはこの試合のヒーローの独壇場となる。

「(ゴールは)良い形でパスを引き出すことができたので、すごく良かった。本当にパスが良過ぎてゴールを決められているし嬉しい。みんなに感謝したい」

 FW古橋は本人も憶えていないというハットトリック。特に31分のゴールはボールを受けたMFイニエスタが古橋の裏への飛び出しを予測してピンポイントの浮き球パス。これを古橋も見事にトラップしてシュート。一連の流れはまるでTVゲームを見ているかのようだった。このプレイをJリーグで見られる時代がきたことに感慨すら覚える。

 更にその3分後にも神戸はエリア内で細かく繋いで、最後はMF山口から中央に走り込んだ古橋に。スコアは3‐0となり、ゲームの趨勢を決めるゴールだった。

 加えて62分にはMFサンペールの見事なスルーパスを古橋がゴール前で1フェイク入れて、GKの体勢を崩してから冷静に流し込んだ。

「ハットトリックは素直にうれしい。僕ひとりでは達成できなかったと思うので、周りのおかげ。恵まれているなと思う。これからも恩返ししたい」と古橋は喜んだ。

 スコアに大きな差がついたことで、横浜FCは攻撃的な手を打つしかなくなった。結果的にこれが更に傷口を広げる結果に。

「結果は0-5になったが、ハーフタイムに後ろ向きに引き込んで守備を固めるわけではなく、前に向かっていこうと伝えた。前がかりになり、見た目としては好き放題やられた形になったが、それは自分の指示からの結果」(早川監督)

 やはりここまで勝ち点を積み上げられていないチームは、失点すると浮足立ち、前に前にという姿勢が却って事態を悪化させるという悪循環に陥る。

「僕個人としては、もっと自信を持ってプレイすることが必要だと思う。もっとできることはあるし、僕を含めて全員がすべてを出し切れていないと思う。相手は個がしっかりしている。(個人能力劣る分)僕たちは組織でちゃんとやらなきゃいけないところがなかなかできなかった。それが今日の結果だったと思う」と話したのはMF瀬古。言葉に今チームが置かれた苦しい状況が滲み出る。

 一方の神戸の三浦監督は「今日一番良かったのは、選手たちが各ポジションで個々の役割を提示しているが、その役割を選手たちが果たしてくれたということ。今日の結果、試合内容含めて非常に良かったと思う」と話した。前半戦の節目となる19試合を終えての今の順位(暫定4位)については「勿論一番上が理想だが、とはいえ良い結果を出しているのかなと思う。今の順位は充分我々の今季の目標を達成できるポジションにはいると思うので、後半戦もしっかりと戦っていきたい」

 サッカーは90分での結果を争うスポーツ。決めるところを決めない限り、出足だけ良くてもダメ。残酷だが90分に今の順位が凝縮して見えた試合だった。

文/吉村 憲文

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