最低限の目標は達成したユーヴェ 連覇が途絶えた今、ピルロ体制は続投すべきではないか

なんとかCL出場圏内には食い込んだピルロ・ユヴェントス photo/Getty Images

一番重要なのはチームとしての一貫性や継続性

ユヴェントスは23日、セリエA最終節でボローニャと対戦し、4-1の勝利を収めた。最後は他会場の結果を待つこととなったが、ナポリがヴェローナと1-1のドローで終わったため、2020-21シーズンをなんとか4位でフィニッシュ。スーパーリーグ構想の件でまだ来季のことはどうなるかわからないが、ひとまず逆転でチャンピオンズリーグの出場圏内に食い込んでいる。

2シーズン連続の監督交代を敢行し、指導者経験がないアンドレア・ピルロを新指揮官に迎えて臨んだ2020-21シーズン。ユヴェントスは新たなスタイルを確立するために、可変システムやポゼッションスタイル、トランジションスタイルなど様々なことを模索したり、試行錯誤したりしながら大台のセリエA10連覇を目指したが、なかなか正解を見つけることができず。その結果、格下相手に勝ち点を取りこぼす試合も多く、4試合を残してインテルに王座を明け渡すこととなった。

はたして、ピルロの招聘は失敗だったのか。もし今夏にわずか1年で同指揮官を見切り、再びチームをリセットすることとなれば、間違いなく「失敗だった」と言えるだろう。ただ、悲願のCL制覇を成し遂げるために、クラブに変革の時期が訪れているのも事実。それゆえに今季はピルロの未知数な部分に懸けたわけだが、彼を招聘した時点で多くの時間が必要なのも重々理解していたはず。そんな中でも、最後は他チーム頼みとなってしまったが、ピルロは最低限の目標であるCL出場圏内は達成してみせた。スーパー杯とコッパ・イタリアの2冠も達成している。むしろ昨季からのインタバールが少ない中で、“未経験”の指揮官に名門クラブの未来を託したにしては、今季の結果はよくやった方と言えるかもしれない。
そもそも連覇はいつしか途切れるもので、それがたまたまピルロの就任1年目に起こっただけのこと。マッシミリアーノ・アッレグリ氏の復帰やジネディーヌ・ジダン現レアル・マドリード監督の招聘といった噂もあるが、連覇が途絶え、気にするものも無くなった今、ピルロ体制は続投すべきなのではないか。将来的なものを考えて、名将を招聘しつつもピルロをチームに残留させ、名将の下でコーチとして経験を積ませるのも一つの手ではあるが、チームづくりを行う上で一番重要なのはチームとしての一貫性や継続性なのだから。ただ、もし今夏に解任に踏み切ることとなった場合は、昨夏にピルロを招聘した首脳陣の首も危ういだろう。むしろ責任をとって然るべきだ。

今季のピルロのサッカーに全く光がなかったわけではない。アタランタとのコッパ・イタリア決勝や、最終節を含めてリーグ戦でも素晴らしい試合を披露することもあった。近年、指揮官をコロコロ変えるビッグクラブたちが長い低迷期を迎える例も国内外で見てきた。ピルロの招聘が「成功だった」とまでは言えないにしても、「間違いではなかった」と言うためにも、チームが迷走しないためにも、今季の反省を来季へつなげて飛躍を目指す、これがベストな選択のように思う。もちろん、今季のなかなか定まらない戦い方を見ていれば、「指揮官を交代してほしい」「フリーのアッレグリを呼び戻したい」という声も理解できる。しかし、もう1年、いやもう半年の猶予……。今夏にピルロが求めるコマを手にし、プレシーズンにしっかりチームづくりを行い、来季の前半戦やCL・グループステージの出来を見てから、もしダメなら指揮官の交代に踏み切るでも遅くはないのではないか。

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