[特集/EURO2020大展望 グループD]ほぼ母国開催のイングランド有利 熾烈極まる2位-3位争いに好マッチの予感

初戦でビッグマッチが実現 イングランドはW杯の雪辱を

初戦でビッグマッチが実現 イングランドはW杯の雪辱を

マグワイア、ケインといった中堅に加えて、マウント、フォデンなど若手が進境著しいイングランド photo/Getty Images

 グループDでは、イングランド×クロアチアのビッグマッチが初戦でいきなり行われる。両者は2018年ロシアW杯準優勝で対戦し、延長戦のすえクロアチアが2-1で競り勝っている。このときは苦杯をなめたが、今大会はイングランドが雪辱を果たすチャンスになる。なにしろ、会場は聖地ウェンブリー(ロンドン)だ。地の利があるし、カタールW杯予選などここ最近の戦いぶりからも、有利なのはイングランドだと考えられる。

 というより、イングランドは今大会の優勝候補といっていい。FIFAランクではスペイン、ポルトガルをしのぐ4位。ガレス・サウスゲイト監督が2016年から指揮するイングランドには、現在進行形で成長を続ける若手が多い。とくに中盤から前線にかけては選手層が厚く、サウスゲイト監督には豊富な選択肢がある。

 布陣はおそらく3連勝スタートを切ったカタールW杯予選の3試合と同じで、[4-3-3]になる。中盤3枚はアンカーにカルヴァン・フィリップスやデクラン・ライス。インサイドハーフの候補はこの2人に加えて、メイソン・マウント、ジェイムズ・ウォード・プラウズなど。そして、前線3枚の両サイドがフィル・フォデン、ジェシー・リンガード、ジェイドン・サンチョ、ラヒーム・スターリング、マーカス・ラッシュフォード……。他国からすれば、うらやまし過ぎる戦力となる。

 とくに注目したいのはメイソン・マウント、フィル・フォデンの2人で、攻守の切り替えが恐ろしく早く、ポジショニングがいい。チームがボールをロストしてもそこには彼らがなぜかいて、すぐに刈り取ってマイボールにしてくれる。また、両名ともに前方への推進力があり、そのまま運んでゴールにつなげてみせる。

 中盤、前線の両サイドばかりでなく、最終ラインにはリース・ジェイムズ、ベン・チルウェルのチェルシーコンビ、ハリー・マグワイア、ルーク・ショーのマンチェスター・ユナイテッドコンビ、ジョン・ストーンズ、カイル・ウォーカーのマンチェスター・シティコンビがいる。ここから誰が出場してもそん色はなく、チーム力が大きくは変化しない。就任以来、継続して若手の成長を促してきたサウスゲイト監督の強化が、こうした現在の状況をもたらしている。さらに、前線にはフィニッシャーとしてハリー・ケインやドミニク・カルバート・ルーウィンがいる。そして選出されるであろうほぼ全員が、イングランド国内リーグでプレイする選手たちで、そういった意味でもホームアドバンテージがある。

 クロアチア戦をビッグマッチと紹介したが、個人的には7: 3ぐらいでイングランドに分があると感じる。グループステージ(GS)の3試合はすべてロンドンと、条件はほぼ“国内開催”であり、移動に悩まされないのもイングランドにとっては圧倒的に有利な条件だ。このグループを1位で通過するのは、イングランドになる。

クロアチアは粘り強い 戦い方を心得ている

クロアチアは粘り強い 戦い方を心得ている

クロアチアの司令塔モドリッチは、変わらずタクトを振るう photo/Getty Images

 対抗馬となるクロアチアは現在FIFAランク14位だが、2020-21ネーションズリーグ(以下NL)で1勝5敗と苦戦を続けている。カタールW杯予選もキプロス(○1-0)、マルタ(○3-0)には勝利したが、スロベニアに0-1で惜敗している。ルカ・モドリッチ(35歳)、イヴァン・ペリシッチ(32歳)の負担を軽くしたいが、この両名は偉大でまだ代わる選手がいない。

 中盤でのモドリッチの変幻自在の動き、前線へのパス出し。サイドに張るペリシッチのドリブル、正確なクロス。当然、これらはどの試合でも対策を講じられてきたが、それでも競り勝ってきたのがこれまでのクロアチアだった。ところが、NLでは守備陣が踏ん張り切れず、ポルトガルとの2試合で7失点。フランスとの2試合で6失点している。

 こうした事態を受けて最終ラインの真ん中をみると、デヤン・ロブレン(31歳)、ドマゴイ・ヴィダ(32歳)のベテランCBに加えて、24歳のドゥイェ・チャレタ・ツァルの出場機会が増えている。この流れでいくと、ズラトコ・ダリッチ監督は今大会をロブレン&ツァル、ヴィダ&ツァルという「ベテラン&若手」の組み合わせで戦うと考えられる。

 そもそも、ここまでは懸念材料をあげてきたが、クロアチアは各選手が大舞台の戦い方を知っている。というか、力の入れどころを心得ている。NLでは敗戦を重ねたが、同じモチベーションで今大会を戦うわけではない。ロシアW杯でみられた各選手がさぼらずにハードワークする姿こそが、真のクロアチアである。

 勝敗に一喜一憂するのではなく、[4-2-3-1][4-3-3]で戦い続けているのも泰然自若としている。それでいて、W杯予選スロベニア戦でペリシッチを前線で起用するなど、工夫も凝らしている(結果につながらなかったが)。NLでは不調だが、それをそのまま信じてはいけない。クロアチアは今大会にしっかりと照準を合わせているはずで、GSで敗退する姿が想像できない。日程・移動面も1戦目ロンドン→2、3戦目グラスゴーと、距離的にもさほど障害にはならない。たとえ初戦のイングランドに敗れても、続く2試合で勝点を積み上げて決勝トーナメント進出を果たすと考えられる。

もうひとつの初戦も重要 勝点3を得るチャンスはここだ

 もう一方の初戦であるスコットランド×チェコもある意味でビッグマッチだ。両国にとって、ここで勝点3を獲得することがGS突破への足掛かりとなる。ひとつのデータとして、やはり同じグループで戦ったNLでの直接対決の結果を記しておきたい。ホーム&アウェイで戦い、チェコ1-2スコットランド、スコットランド1- 0チェコとなっている。クロアチアと異なり、この両国には力の入れどころをコントロールする老獪さはなく、常に全力だ。ということは、NLで連勝し、ホームのグラスゴーで戦えるスコットランドが有利とみていい。

 FIFAランクはグループ中最低の44位だが、2019年に就任したスコットランドのスティーブ・クラーク監督は、3バックをベースに堅実なチームを作り上げてきた。グラント・ハンリー、ジャック・ヘンドリー、キーラン・ティアニーなどで最終ラインを構成し、中盤左サイドにキャプテンを務めるアンドリュー・ロバートソンを配置。他にもスコット・マクトミネイ、ジョン・マッギンなどプレミアリーグでプレイするしっかりと戦える選手が多く、相手に走り負けることがない。

 中盤、前線の選手配置は流動的で、立ち位置によって[3-1-4-2][3-4-1-2]など柔軟に変化する。対戦相手の力量によって受け身を強いられるか、攻撃を仕掛けられるかが変わってくるが、試合中に選手たちが展開を判断して的確に対応できる。最初のチェコ戦にNLの経験を生かして勝利できれば、続くイングランド戦、クロアチア戦は引き分けでもいいだろう。

 無論、引き分けは狙ってできるものではない。とくに、2戦目となるイングランド戦は注目度が高いアウェイゲームで、苦戦が予想される。そう考えると、なおさらチェコと戦う初戦が重要だ。より大きなプレッシャーを感じて戦うイングランド戦を気持ちよく戦うためにも、スコットランドは初戦で勝点を絶対に得たい。

 これはチェコも同じで、まずはスコットランドから勝点を得たい。ヤロスラフ・シルハヴィー監督が就任したのは2018年で、以来揺らぐことなく[4-2-3-1]を基本に戦い続けている。選手個々の実直さ、チーム全体でハードワークできる真面目さがチェコの特長で、大きく崩れることがない。ただ、初戦のスコットランドに敗れると、クロアチア、イングランドと続くその後の戦いが苦しくなる。

 正直、過去にW杯やEUROで活躍したチェコに比べると、いまはタレントに乏しい。守備陣が踏ん張り、前線のパトリック・シック、トマシュ・ペクハルトが少ないチャンスを生かして得点に結びつける。こんな展開に持ち込めれば、グループステージ通過がみえてくる。

 もう1点、このグループでどうしても触れなければならないのが、2戦目にウェンブリーで行われるイングランド×スコットランドだ。英国4協会同士の戦いは、どんな大会でどんな状況で対戦しても意地とプライドのぶつかり合いで盛り上がる。そうしたなか、2戦目という今大会の対戦タイミングを考えるとお互いに勝点3がほしいガチマッチとなる。

 譲らない両者による戦いは、熱く、激しい攻防になる。「EUROのグループステージ」という枠を越えた戦いになるのは間違いなく、今大会を代表する一戦になる。

文/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD257号、5月15日配信の記事より転載

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