[MIXゾーン]その差は広がる一方か G大阪は川崎相手に5連敗 

川崎相手に黒星が続くG大阪の宮本監督 photo/Getty Images

やれるはずだったが、できなかった

 G大阪のチームとしての守備的な戦い方は意図的なものだったようだ。

「ある程度想定内。カウンター気味にこちらにチャンスもあったし、そこをものにできるかどうかで勝敗は変わってくるかなと思っていた」

 CB昌子はチームとしての統一した戦い方はできたと感じていた。同時にチームの方向性としては昨季のような縦にロングボールを入れて、そのこぼれを拾うという戦いから脱却して、しっかりとビルドアップをすることに転じている。去年のような戦いをしていては川崎との差はますます開く一方だった。実際昨年の第29節の直接対決では0-5と為すすべなく敗れている。その後天皇杯決勝でも接戦の末に川崎が勝利。その後キャンプを経て対戦したゼロックススーパーカップでは川崎が後半アディショナルタイムに決勝ゴールを奪い、3‐2で制した。結果的に敗れたもののG大阪のモデルチェンジも徐々にフィットし、川崎に一泡ふかすことができるかもしれないという期待もあった。しかしこの試合ではコンディション的にG大阪は中5日、アウェイの川崎が中3日とアドバンテージはG大阪にあったにもかかわらず、シュート数だけ取ってもG大阪の6本に対して川崎は14本とほぼ一方的な展開に終始した。
「相手陣内に入ってからのボールの動かし方はもう少し落ち着きを持ってやれればなという点はあったと思う。前半もいい形でボールを奪って、前につけてからの速い攻めというのは何回かありましたけど、相手の最初の我々の自陣でのプレッシャーをかいくぐった後、進んだ後もう少し、相手を揺さぶるような攻撃をやれるシーンもあったかと思う」(宮本監督)

 やれるはずだったができなかったということか。確かに彼我の差を考えればいきなりモデルチェンジをしたチームが、王者相手にゲームを支配して勝利できると考えられるはずがない。ただ宮本監督が指摘した問題点は川崎相手だけでなく、今年のリーグ戦での戦いに共通して表れている問題である。いくらコロナ禍で過密日程になっているとはいえ、この川崎戦を含めて9試合を戦い僅か2得点ではまったく先が見えてこない。

 宮本監督が就任以来、毎年のように破竹の連勝と低迷がシーズンの中で同居するという現象が起きてきた。厳しい今の状況も、「いずれチームは目を覚ますだろう」という期待を抱いているサポーターも多いようだ。しかし逆に目を覚まさなければ、現在降格圏の18位に沈む状況は更に悪化の可能性もある。フロントの動きは見えてこないが、このまま手を打つことなく時間を費やすのだろうか?

 一方の川崎はコンディション的にかなり厳しく、選手の疲労は所々で見えた。スタメンにMF三笘の名前はなかった。

「ひとつは名古屋との連戦に同じスタメンで臨んだことで、この3戦目をどうするかは、名古屋戦が終わってから考えようと思っていた。思った以上に名古屋の2戦目で疲れているところも見受けられ、もうひとつパワーを出さないといけないと思った」

 鬼木監督はチームに『パワー』を注入したかったという。その効果は絶大で、G大阪に仕事をさせなかった。しかもベンチに置いた三笘が後半になってから出てきたのでは、G大阪守備陣はたまったものではない。

 同時に後半G大阪の時間になりかかった時にも「1試合を通したらああいう時間帯は必ずある。苦しい時にDFは体を張って今日はプレイしていた。途中からこっちも(三笘)薫のような推進力ある選手、FW知念のようなパワーのある選手が入ってきて、うまく耐えながらカウンターを狙うことは何度かできていた。我慢する時間帯で失点しなかったことはすごく成長かなと思う」(CB車屋)

 王者が更に試合の中で自らの成長を感じ取る。どこまで先にいってしまうのだろうか。昨年の1位と2位の対決だったが、川崎は公式戦での直接対決に5連勝(G大阪の5連敗)となった。その差は拡大の一途を辿っている。

文/吉村 憲文

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