[MIXゾーン]横浜FCの守備&ポゼッションを破壊 グランパス開幕5連勝の原動力は“多彩な攻守” 

攻守両面において献身性を示した前田直輝。後半7分には先制ゴールを挙げた photo/Getty Images 

オールマイティな戦いぶりを披露

明治安田生命J1リーグの第5節が3月17日に行われ、名古屋グランパスと横浜FCが対戦した。

今季のリーグ戦開幕から4連勝と、良いスタートを切った名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督は、前節からスターティングメンバーを5人入れ替え。GKはランゲラック、最終ラインは右から宮原和也、中谷進之介、丸山祐市、吉田豊の4人。中盤は米本拓司と稲垣祥の2ボランチに、前田直輝(右)と相馬勇紀(左)の両サイドハーフ。柿谷曜一朗とガブリエル・シャビエルが2トップに据えられた。

対する横浜FCの下平隆宏監督は、この日も[4-4-2]という布陣を採用。GKは六反勇治、最終ラインは右からマギーニョ、田代真一、袴田裕太郎、武田英二郎。中盤は手塚康平と瀬古樹の2ボランチに、齋藤功佑(右)と松尾佑介(左)の両サイドハーフ。2トップにクレーベとジャーメイン良が配置された。
前半は横浜が名古屋にボールを持たせ、[4-4-2]の陣形を保ったまま自陣後方に構えるという構図に。名古屋の最終ラインにボールが渡った際には、横浜の2トップが名古屋の2ボランチへのパスコースを遮断。名古屋の中央突破を阻み、パスをサイドへ誘導しようとする意図が窺えた。

この横浜陣営の守備を打ち破るために工夫のある動きを見せたのが、丸山、相馬、シャビエルの3人。左サイドハーフの相馬がインサイドへ移動、2トップの一角であるシャビエルが中盤に降りることで、ミドルゾーンでの数的優位を確保。これにより最終ラインからのパスコースを多く作ることに成功したほか、センターバックの丸山が積極的に前方へボールを運んだことで、横浜の守備隊形をかき乱した。

また、この試合では横浜のビルドアップに対する名古屋の守備も機能。なかでも秀逸だったのが、横浜のゴールキックに対する守備だ。

横浜はゴールキックの際、2センターバックの間に2ボランチの片割れが入る形をとっており、この日も手塚と瀬古のどちらかが最終ラインに降りていたが、この2人を名古屋の2ボランチ(稲垣、米本)が前に出てマンマーク。ビルドアップの経路を断たれた横浜陣営は、再三に渡り苦し紛れのロングボールを蹴ることとなり、これが原因で攻撃のリズムを掴めなかった。

「我々もフルコートでマンマークのような形で守ることになりますので、長いボールを蹴らせて、そのセカンドボールをしっかり拾いきれるかがポイントだったと思います。そういった部分(自陣からのビルドアップ)から相手のペースでやらせなかったというのは、良いディフェンスができたということではないでしょうか」

試合後のオンライン会見で横浜のゴールキックに対する守備の出来について手応えを口にしたのはフィッカデンティ監督。試合全体を通じ、名古屋の攻守両面における隙の無さが際立っていた。

後半に入り、プレッシングの強度を高めた名古屋は、同7分に先制に成功。横浜の自陣後方からのパスワークに対してハイプレスを仕掛けると、手塚のパスを吉田が敵陣左サイドでカット。そのままペナルティエリア左隅へ侵入した同選手がグラウンダーのクロスを送り、このボールに前田が反応した。

先制点を奪った名古屋は、[4-4-2]の陣形を保ったまま自陣後方へリトリート。堅固な守備ブロックで横浜のパスワークを停滞させると、同17分すぎにロングカウンターを発動し、柿谷からのパスを受けた相馬が左サイドを疾走。ペナルティエリアに侵入した同選手が相手GK強襲のシュートを放ち、こぼれ球を拾った途中出場のマテウスが追加点を挙げた。

後半アディショナルタイムにも、途中出場のFW山﨑凌吾が相馬からのクロスに反応してゴールを挙げ、勝負あり。盤石のパフォーマンスを見せた名古屋が、3-0で横浜FCを粉砕している。

今回の勝利により、クラブ史上初となるリーグ戦開幕5連勝を達成した名古屋。相手チームの出方や戦況に応じて遅攻と速攻、ハイプレスとリトリートを使い分けて勝利を手繰り寄せるというオールマイティな戦いぶりが、就任3シーズン目のイタリア人指揮官のもとで板につきつつある。昨年のJ1リーグを圧倒的な力で制した川崎フロンターレの対抗馬は、このチームかもしれない。

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