“黄色の”ファンタスティック・フォーが牙を剥く 攻撃軍団ドルトムントの脅威

ドルトムントも攻撃自慢のチームだ photo/Getty Images

噛み合った時の攻撃力は欧州トップクラス

今季のチャンピオンズリーグ・ベスト16に進出したクラブの中で最も攻撃力が高いのはどこなのか。マンチェスター・シティ、バルセロナ、パリ・サンジェルマンなどが候補に挙げられるだろうが、もう1つプッシュしたいのはドルトムントだ。

個のタレント力ではバルセロナやパリ・サンジェルマンに劣るかもしれないが、ドルトムントの攻撃が噛み合った時の破壊力は凄まじいものがある。カギとなるのは、前半戦の終盤より採用していた3バックだ。

昨年11月9日にバイエルンに0-4で敗れるなど苦戦したことを受け、指揮官のルシアン・ファブレは3バックを採用。これが機能し、12月に入ってからはデュッセルドルフ(5-0)、マインツ(4-0)と大量得点を奪って勝利するゲームが増えた。
注目したいのは「個の活かし方」だ。12月に入ってからのドルトムントは主に[3-4-3]の布陣を採用しており、3トップにはワイドな位置にジェイドン・サンチョとトルガン・アザール、中央にマルコ・ロイスが入るケースが多い。サンチョとアザールの2人は[4-2-3-1]で戦っていた時よりも中央寄りにポジショニングし、高い位置を取って相手の最終ラインを牽制する役割も担っている。

それに合わせてロイスは中盤へ下がるなど0トップのように自由な動きをしており、このコンビネーションが効いている。ロイス、サンチョ、アザールのトリオがより近い距離でプレイすることが可能となり、その成果は確実に表れているのだ。

特にサンチョは3バックを採用した11月30日のヘルタ・ベルリン戦からリーグ戦で4試合連続得点を記録。この4試合で5得点3アシストと大爆発しており、やはりロイスと近い距離で絡んだ時のサンチョは怖い。

さらにウイングバックの位置にはブンデスリーガ最速クラスのスピードを誇るアクラフ・ハキミ、キック精度の高いラファエル・ゲレイロがいる。ハキミは守備面にやや不安はあるものの、今季はチャンピオンズリーグを含め6得点を挙げるなど攻撃力の高い選手だ。ウイングバックの方が攻撃性を活かすことができ、ゲレイロとの両翼は極めて危険だ。

そしてこのシステムで忘れてはならないのが、中盤から頻繁に攻撃参加してくるMFユリアン・ブラントの存在だ。ブラントは中盤に顔を出してくるロイスと絡んでペナルティエリアまで一気に駆け上がり、チャンスメイクの部分で大きく貢献している。3バックに変えてからは11月30日のヘルタ・ベルリン戦、12月7日のデュッセルドルフ戦、14日のマインツ戦、17日のライプツィヒ戦、20日のホッフェンハイム戦でそれぞれキーパス (シュートに繋がるパス)を2本ずつ記録(『WhoScored』より)しており、この数字はブラントにとって今季トップタイだ。[3-4-3]に変えてから攻撃面で存在感が増しているのは間違いない。

今冬にはザルツブルクから194cmのサイズを誇る大型FWアーリング・ブラウト・ハーランドも加え、攻撃のオプションはさらに増えた。ハーランド、ロイス、サンチョ、アザールら豪華な攻撃陣をファブレがどう活かす考えかは分からないが、当然3バックも選択肢に入ってくるはずだ。

ドルトムントはチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦でパリ・サンジェルマンと対戦する予定となっているが、このカードはベスト16の中で最も点取り合戦になる可能性が高い。パリも攻撃自慢のチームであり、ネイマール、キリアン・ムバッペ、マウロ・イカルディ、アンヘル・ディ・マリアの4人はファンタスティック・フォーと恐れられている。

しかしドルトムントが誇るロイス、サンチョ、アザール、ブラントらも歯車が噛み合った時の破壊力では負けていない。ネームバリューではややパリに劣るが、ドルトムントの4人衆もファンタスティック・フォーと名付けていいだろう。ハーランドが早い段階でフィットすれば脅威はさらに増す。

ドルトムントとパリの両チームとも打ち合い上等の覚悟があるはずで、ド派手な180分間となるだろう。ドルトムントの場合は守備に不安があるため、チャンピオンズリーグで勝ち進むには打ち合いを制していくしかない。リヴァプールVSアトレティコ・マドリード、レアル・マドリードVSマンチェスター・シティといったカードも見逃し厳禁のマッチアップだが、ドルトムントとパリの一戦はそれらのカードを凌ぐスペクタクルが展開されるかもしれない。

前半戦の終盤に驚異の破壊力を見せたドルトムントは後半戦もゴールラッシュを披露してくれるのか。欧州トップクラスの攻撃力を武器に、狙うはブンデス逆転制覇とチャンピオンズリーグでのミラクルだ。

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