[水沼貴史]今、見るべきはこの5人 欧州メガクラブ“注目の新戦力”

水沼貴史の欧蹴爛漫037

水沼貴史の欧蹴爛漫037

バルサの新たな中盤の核となりつつあるデ・ヨング(左)と、アトレティコのサイド攻撃を支えているトリッピアーとロディ photo/Getty Images 

バルサ&アトレティコに“+α”をもたらしたのは

水沼貴史です。2019-2020シーズンの欧州主要リーグが中盤戦に差し掛かろうとしていますが、開幕前に苦戦が予想されていながら新戦力の台頭により上位に食い込んでいるチームがあれば、大型補強を行いながら波に乗り切れていないチームもあったりと、明暗が分かれていますね。今回は今年の夏より新天地でプレイしている欧州メガクラブの選手の中から、好パフォーマンスを見せている“5人の新戦力”を私なりにリストアップしました。彼らが現所属クラブに何をもたらしているのか。各選手のプレイの特長を交えながらお話ししましょう。

まず紹介したいのが、昨シーズンのアヤックスの躍進を支え、今年の夏よりバルセロナでプレイしているMFフレンキー・デ・ヨング(22歳)です。長年にわたり不動のアンカーとして君臨してきたセルヒオ・ブスケッツのコンディションが低下してきたことにより、彼の後継者探しが急務となっていたバルセロナですが、今やデ・ヨングがこのクラブの新たな核になりつつあります。ブスケッツと同じようにアンカーポジションでパスを散らせるだけでなく、持ち前の走力を活かしてドリブルでボールを運んだり、パスを出し終えた後に素早く敵陣ゴール前に顔を出せるのが魅力的ですね。ブスケッツにはない推進力を持っているデ・ヨングがバルセロナの攻撃に“+α"をもたらしていることは間違いありませんので、普段からリーガの試合をご覧の皆さんには、パスを出し終えた後の彼の動き出しに注目して頂きたいです。彼がバルセロナの攻撃にどれほど厚みを加えているかが分かると思います。

今シーズンからアトレティコ・マドリードでプレイしているキーラン・トリッピアー(29歳/前トッテナム)と、レナン・ロディ(21歳/前アトレティコ・パラナエンセ)の両サイドバックも私のイチ押し選手です。長くサイドバックを務めてきたファンフランとフィリペ・ルイスが昨シーズン限りで退団したことで、先行きが不安視されていたA・マドリードですが、新入りの二人が彼らの穴を補って余りあるパフォーマンスを見せていると、私は思います。
一度スローダウンしたところから足技を繰り出して相手を抜くことが得意なファンフランやフィリペ・ルイスとは違い、トリッピアーとロディは圧倒的なスピードで相手を置き去りにするタイプのサイドバックです。今シーズンも自陣に引き籠る相手の攻略に苦労しており、複数得点を取れずに引き分けがかさんでいる序盤戦のアトレティコですが、そのなかでも一瞬のスピードで相手をぶち抜けるトリッピアーとロディの存在感は光っています。これまでのアトレティコにいなかったタイプの新サイドバック2名が好調を維持し、ジエゴ・コスタとアルバロ・モラタという欧州屈指のフィニッシャーへいかほど正確なクロスを供給できるか。この点が今シーズンのアトレティコの浮沈のカギを握るでしょう。

新生チェルシーの攻撃を支えているマウント(左)とプリシッチ(右) photo/Getty Images 

ランパード監督のもとで台頭したのは

今シーズンのプレミアリーグで既に10得点のFWタミー・エイブラハムをはじめ、若手の成長が著しいフランク・ランパード監督率いるチェルシー。なかでも今年の夏にドルトムントより加わったFWクリスティアン・プリシッチ(21歳)、そしてフィテッセへのローン移籍を経て、昨シーズンまでランパード監督率いるダービー・カウンティに在籍していたMFメイソン・マウント(20歳)の2名のパフォーマンスが印象に残りました。

まず、ドルトムントにいた頃から切れ味鋭いドリブルに定評があったプリシッチについてですが、以前はドリブル中や相手選手と接触した際にボディバランスが崩れてしまい、それが原因でファーストタッチが流れてしまう場面が見受けられました。ですが、今シーズンの彼からはフィジカル面での脆さは感じられず、むしろ密集地帯であっても積極果敢にドリブルを仕掛けようという意欲が窺えます。フィジカル面での成長が自分のドリブルに対する自信に繋がり、これが直近のプレミアリーグ3試合で5得点という好調ぶりに繋がっているのではないでしょうか。「ボールを持てば何か特別な仕事をしてくれる」という期待感が今の彼にはありますが、今後どこまで好調を維持できるかに注目していきたいですね。

今シーズンのリーグ戦全試合で先発と、ランパード監督からの信頼が厚いマウントの特筆すべき点は、オフ・ザ・ボールの動きがうまいことです。味方のサイドバックが敵陣でボールを持った際の動き出しが活発で、これがチームにとって良いアクセントになっています。彼はタイミング良くサイドバックを追い越してパスを引き出せますし、仮に彼自身がボールを受けなくても、彼のフリーランニングにより相手DFが釣られるので、敵陣バイタルエリアにはスペースが出来ます。今シーズンのチェルシーの攻撃からは彼が作ってくれたスペースにサイドバックが切り込んだり、他の選手が飛び込むといった流動性が見られます。彼の繊細なボールタッチや正確無比なキックも見どころの一つではありますが、ボールを持っていない時でもチームに貢献できる選手であるということを、ぜひ皆さんには知って頂きたいです。

今回、注目プレイヤーとして20代前半の選手を多く挙げさせて頂きましたが、次から次へと新たなスターが誕生するサッカー界の醍醐味であったり、競争の激しさというものを改めて感じました。対戦相手の研究が進むなかで、彼らが今後も好パフォーマンスを披露できるのか。私自身この点を楽しみにしながら19-20シーズンの欧州主要リーグを見届けたいと思います。

ではでは、また次回お会いしましょう!


水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。


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