今シーズンのプレミアリーグで既に10得点のFWタミー・エイブラハムをはじめ、若手の成長が著しいフランク・ランパード監督率いるチェルシー。なかでも今年の夏にドルトムントより加わったFWクリスティアン・プリシッチ(21歳)、そしてフィテッセへのローン移籍を経て、昨シーズンまでランパード監督率いるダービー・カウンティに在籍していたMFメイソン・マウント(20歳)の2名のパフォーマンスが印象に残りました。
まず、ドルトムントにいた頃から切れ味鋭いドリブルに定評があったプリシッチについてですが、以前はドリブル中や相手選手と接触した際にボディバランスが崩れてしまい、それが原因でファーストタッチが流れてしまう場面が見受けられました。ですが、今シーズンの彼からはフィジカル面での脆さは感じられず、むしろ密集地帯であっても積極果敢にドリブルを仕掛けようという意欲が窺えます。フィジカル面での成長が自分のドリブルに対する自信に繋がり、これが直近のプレミアリーグ3試合で5得点という好調ぶりに繋がっているのではないでしょうか。「ボールを持てば何か特別な仕事をしてくれる」という期待感が今の彼にはありますが、今後どこまで好調を維持できるかに注目していきたいですね。
今シーズンのリーグ戦全試合で先発と、ランパード監督からの信頼が厚いマウントの特筆すべき点は、オフ・ザ・ボールの動きがうまいことです。味方のサイドバックが敵陣でボールを持った際の動き出しが活発で、これがチームにとって良いアクセントになっています。彼はタイミング良くサイドバックを追い越してパスを引き出せますし、仮に彼自身がボールを受けなくても、彼のフリーランニングにより相手DFが釣られるので、敵陣バイタルエリアにはスペースが出来ます。今シーズンのチェルシーの攻撃からは彼が作ってくれたスペースにサイドバックが切り込んだり、他の選手が飛び込むといった流動性が見られます。彼の繊細なボールタッチや正確無比なキックも見どころの一つではありますが、ボールを持っていない時でもチームに貢献できる選手であるということを、ぜひ皆さんには知って頂きたいです。
今回、注目プレイヤーとして20代前半の選手を多く挙げさせて頂きましたが、次から次へと新たなスターが誕生するサッカー界の醍醐味であったり、競争の激しさというものを改めて感じました。対戦相手の研究が進むなかで、彼らが今後も好パフォーマンスを披露できるのか。私自身この点を楽しみにしながら19-20シーズンの欧州主要リーグを見届けたいと思います。
ではでは、また次回お会いしましょう!
水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。
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