今でこそリヴァプールはプレミアリーグでも優勝候補に挙げられるクラブとなったが、数年前はトップ4入りさえ苦しい状態にあった。それを2015年の10月から時間をかけて変えてきたのが、チームを指揮するユルゲン・クロップだ。
英『Liverpool Echo』はこの4年間を振り返っているが、2015年10月よりチームを任されたクロップは[4-2-3-1]のシステムをベースに自身の哲学をチームへ注入。就任初年度からマンチェスター・シティ相手に2勝を記録するなど、可能性を感じさせる魅力的なゲームは多かった。
しかし、当時のリヴァプールは安定感のないチームだった。チェルシーに3-1で勝利したかと思えば、次のクリスタル・パレス戦では1-2で敗北。ニューカッスル、ウェストハムに0-2で敗れたり、なかなかチームは安定しなかった。最終的には8位で2015-16シーズンを終えており、クロップのスタートは理想的なものではなかった。
苦しい1年目を終え、2016-17シーズンには形が見えてくる。夏にはFWサディオ・マネ、MFジョルジニオ・ワイナルドゥム、DFジョエル・マティプら現在の主力メンバーが加入。特にマネの加入は攻撃に爆発的なスピードをプラスすることになり、自慢のカウンターも炸裂する機会が増える。
さらに前からのプレスも徹底し、2015-16シーズンには1試合平均10.4本も浴びていたシュート数を7.6本まで抑えることに成功した。最終ラインにはまだ凡ミスもあったため、相手をゴールから遠ざける手法で守備の改善を試みたのだ。結果的に2016-17シーズンは4位でフィニッシュすることに成功し、2年目にチームは大きく進歩した。
そして迎えた2017-18シーズン、チームはついに欧州中を震え上がらせる攻撃ユニットを完成させる。ローマからFWモハメド・サラーを獲得し、マネ、ロベルト・フィルミーノとの3トップが誕生したのだ。これで相手を粉砕する攻撃陣は完成した。残るは守備の整備だ。リヴァプールはここの動きも実にスムーズだった。
1月にはサウサンプトンからDFフィルジル・ファン・ダイクを獲得したが、これが大ヒット。このシーズンはチャンピオンズリーグでも決勝まで駒を進めることになったが、これはファン・ダイク効果が大きい。最終ラインはファン・ダイクの統率で安定し、凡ミスの数が明らかに減った。
そして2018年夏、最後のピースとしてGKアリソン・ベッカーを獲得。移籍金は高額だったが、ファン・ダイクとアリソンの補強をヒットさせたことで世界トップレベルの堅守が完成した。就任当初はとにかく攻撃で押していくチームだったが、今では守備的に戦うことも可能になった。2人の加入で戦い方に幅が生まれたのだ。
さらに若いトレント・アレクサンダー・アーノルドを右サイドバックとして成長させ、左サイドバックでもアンドリュー・ロバートソンの才能が開花。両サイドバックがアシストマシーンと化し、攻撃のオプションはさらに増えた。
昨季はチャンピオンズリーグも制し、今季はプレミア制覇へ向けて開幕から連勝を続けている。1、2年目で攻撃部分のベースを組み立て、徐々に弱点の守備を補強。リヴァプールはクロップ就任後の4年間で理想的な進化を遂げることに成功したのだ。振り返ると簡単だが、就任当初の状況から考えると今のレベルまでチームを引き上げるのは簡単な作業ではない。クロップの手腕は絶賛されるべきだろう。
次はこの強さを継続させるフェーズに突入する。長くプレミアとチャンピオンズリーグを支配するクラブとなるべく、クロップとリヴァプールのチャレンジはまだ続く。
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