[特集/次世代を担う超注目ヤングスター 04]東京五輪を目指すJのヤングスター15人

守備陣にも必須となる高い技術力&攻撃力

守備陣にも必須となる高い技術力&攻撃力

大迫敬介(20)186cm、86kg。サンフレッチェ広島所属。コパ・アメリカに参加し、チリ戦に出場した若き守護神。蹴るのは右足、投げるのは左手というGKで、ゴール前での佇まいに落ち着きがある photo/Getty Images

 相手から激しいプレッシャーを受けるなか、最終ラインからしっかりとパスを繋ぎ、攻撃を組み立てる。高い位置で数的優位を作るためには、後方からの攻撃参加も欠かせない。多くのチームがこうしたスタイルを選択する昨今は、守備陣にも高い技術力と攻撃力が求められる。

 とくに、GKにはここ数年で多くのスキルアップが求められるようになった。従来のGKとしての役割はもちろん、的確な判断で高いポジションを取り、ビルドアップに加わって正確なパスを供給できなければならない。この条件を高いレベルで満たしているのが、コパ・アメリカのチリ戦にもフル出場した大迫敬介(広島)だ。

 足元の技術力に自信があるため、ボールコントロールに安定感がある。視野が広く、味方のポジションを常に把握しているため、守備から攻撃への移行も早い。そして、キック、スローイングともに正確で、ロングパス1本で得点チャンスを生み出すことができる。

 広島は第13節浦和とのアウェイゲームに4-0の快勝を収めているが、このときも精度の高いフィードでカウンターの起点となっていた。ゴールを守るだけではなく、攻撃にも絡む。大迫敬介のプレイスタイルは、これからの日本代表に欠かせないものだといえる。

 最終ラインの選手も確実に“仕事”が増えている。身体の強さ、高さ、スピード、俊敏性、高い技術力などが必要で、戦術理解度も高くなければならない。3バック、4バックのどちらにも対応でき、SB、CBなど複数のポジションを高いレベルでこなせる。こうしたスキルがなければ、これからは生き残っていけない。

 そういった意味で、岩田智輝(大分)、町田浩樹(鹿島)、杉岡大暉(湘南)はいずれもこの条件をクリアしている。さらには、得点力もある選手たちで、たとえば岩田智輝は右サイドを積極的に攻撃参加し、ときおり自分でフィニッシュする。今季すでに3得点しており、決定力の高さがある。

 町田浩樹、杉岡大暉はともに左利きで、やはり得点力を兼ね備えている。町田浩樹は長身を生かした豪快なヘディングが魅力で、セットプレイから得点を奪うケースが目立つ。一方、杉岡大暉に関しては細かい説明はいらないだろう。昨季ルヴァン杯決勝戦で決めたミドルシュート、今季第22節磐田戦で決めたFKなどをみれば、精度の高さがわかる。その能力を考えれば、そろそろ日本では見ることができなくなるかもしれない。

 岩田智輝、杉岡大暉は中盤のワイドなポジションでもプレイが可能で、交代選手を使わずに戦術変更が可能となるため、指揮官にとっては選択肢が広がる。両者ともにコパ・アメリカに出場している事実が、森保一監督の期待の高さを物語っている。

 今回、写真での紹介はないが、瀬古歩夢(C大阪)もロティーナ監督のもと着実に経験を積んでいる。落ち着いてボールをさばけるタイプで、これからの成長が期待されている選手だ。

菅、橋岡は突破力がある ボランチ勢はアイデア豊富

菅、橋岡は突破力がある ボランチ勢はアイデア豊富

菅大輝(20)171cm、69kg。コンサドーレ札幌所属。左利きのサイドアタッカー。U-18所属だった2016年にトップチームへ2種登録され、J2第6節町田戦でデビュー photo/Getty Images

 札幌で左サイドアタッカーを務める菅大輝、浦和で右サイドアタッカーを務める橋岡大樹はいずれも縦への突破力があり、「個」の力で状況を打開できる。菅大輝は出場こそなかったもののコパ・アメリカにも参戦しており、期待の高さがうかがえる。相手と駆け引きするというより、“勝てるカタチ”を持っており、自分のタイミングで積極的に勝負を仕掛ける。そして、サイドを崩して良質なクロスを送る。無尽蔵のスタミナがあり、運動量が落ちないのも魅力だ。

 橋岡大樹は両親が元陸上選手で、アスリートとしての良質な血をしっかりと受け継いでいる。ルーズボールに対して相手よりも遠い場所からスタートし、驚異的な瞬発力で追い越してみせる。中盤だけではなく、最終ラインでのプレイも可能で、第21節鹿島戦では試合途中からCBを務め、1-1の引分けに貢献した。いまはまだ、身体の使い方やキックが雑なときがある。自らが持つ身体能力と技術力のバランスがうまく取れたなら、日本にとどまっている選手ではない。

 守備的MFの3人、田中碧(川崎)、松岡大起(鳥栖)、齊藤未月(湘南)は運動量豊富で技術力が高く、それぞれアイデアもある。

 田中碧は状況を把握する能力に優れ、複数の相手にトラップの瞬間を狙われても慌てることがなく、巧みなワンタッチコントロール、ボディバランスで密集を抜け出し、前方にボールを運べる。得点チャンスを見極める力もあり、効果的な攻撃参加で前線に数的優位を作り出す。

 これらは齊藤未月も同じで、幅広い視野、たしかな技術力、冷静な判断力に裏打ちされたプレイでチームに安定感をもたらすとともに、攻撃のスイッチを入れる役割も担っている。また、チームへのロイヤリティ(忠誠心)も高く、攻守両面において実に献身的だ。U-20W杯では「10番」を背負い、キャプテンを務めた。チームをまとめる力、統率力があるリーダーになれるタイプだ。

 松岡大起は現在高校3年生の18歳で、久保建英と同学年だ。鳥栖の中盤には経験豊富な選手もいるが、守備的MFやサイドアタッカーのポジションでシーズン当初から出場を続け、チームに欠かせない戦力となっている。攻守の切り替えが早く、ピンチの芽をいち早く潰し、瞬時にチャンスへと変えることができる。緩急をつけたキレのあるドリブルも魅力で、積極的に勝負を仕掛けてゴールに迫ってみせる。

三好は和製ダビド・シルバか 上田は鹿島で経験を積む

三好は和製ダビド・シルバか 上田は鹿島で経験を積む

上田綺世(20)182cm、76kg。鹿島アントラーズ所属。鹿島の下部組織出身でユース昇格は逃したが、高校、大学経由で加入した苦労人。常にシュートを意識していて、ボールを受けてからフィニッシュまでの動作が早い photo/Getty Images

 東京五輪世代の攻撃陣は選手層が厚い。相馬勇紀(鹿島)は瞬発力に優れ、フェイントをかけるまでもなく緩急の差で相手を置き去りにすることができる。名古屋では風間八宏監督のもと交代出場でリズムを変えることが多かったが、より多くの出場機会を求めてこれから過密日程となる鹿島へと移籍した。「代表招集のためには、所属クラブで試合に出ていること」と語るのは森保一監督で、このタイミングでの移籍からは、相馬勇紀の東京五輪にかける思いが伝わってくる。

 岩崎悠人(札幌)も同じようなタイプで、ボールを持つと自分のカタチがあり、一瞬の動きで相手をかわし、シュートまで持っていくことができる。今回紹介した多くの選手がJユース出身で、トップチームに2種登録されていたケースが多い。対して、岩崎悠人は京都橘高出身で、京都に加入した1年目に高卒ルーキーで開幕戦に出場。J2ではあったが、初年度に35試合2得点、2年目は33試合1得点という成績を残している。相手を混乱に陥れるドリブル、迷いのない思い切ったフィニッシュは爽快感があり、得点数のわりには印象に残るプレイが多い。

 この2人と同じ前線の左サイドには遠藤渓太(横浜FM)もいる。やはりドリブルが得意で、縦へ突破できるし、中央にも仕掛けられる。さらには、戦術理解度が高く、効果的なポジションを取ってサイドバックの攻撃参加を引き出し、前線にスペースを作り出すことができる。横浜FMでレギュラーを掴んでおり、相馬勇紀、岩崎悠人よりも所属クラブでの実戦経験が豊富だ。

 森島司(広島)は今季になってシャドーストライカーとしての能力を開花させ、試合出場を重ねている登り調子の選手だ。圧巻だったのは第13節浦和戦で、1ゴール2アシストの活躍で4-0の完勝に貢献している。相手のボランチと最終ラインの間に走り込み、フリーでボールを受ける。可能なら自らフィニッシュし、難しければ効果的なパスを供給する。相手が嫌がるポジションやプレイを選択できるクレバーなセカンドトップだ。

 コパ・アメリカで経験を積んだ2人、三好康児(横浜FM※編注:8月にベルギーのロイヤル・アントワープへローン移籍)と上田綺世(鹿島)からは、今後の日本代表を背負って立つだろうポテンシャルの高さを感じる。

 三好康児はときに“和製ダビド・シルバ”と呼ばれるゲームメイカーにしてアタッカーで、この男がボールを持つと攻撃のスイッチが入る。パスを出すのか、ドリブルで仕掛けるのか次のプレイを読みづらく、相手が混乱する間に守備網を突破し、ゴールに近づく。フィニッシュの精度の高さについては、コパ・アメリカで証明済みだ。

 一方、上田綺世はコパ・アメリカでは決定機を逃すシーンが目立ったが、ボールを引き出し、チャンスを作り出すところまではいっていた。もし、決めることができていたら、評価はまったく違っていたはず。幸い、一度や二度のシュートミスでメンタルをやられてしまうタイプではない。

 鹿島でユース昇格を逃し、高校、大学を経てトップチームに加入した成り上がりだ。左右両足、頭、どこからでも点を取れるスマートな技術力と、粘り強く、泥臭い精神力を持ち合わせている。どんなストライカーに成長するか、行く末が楽しみな選手だ。

 この世代の攻撃陣には本当に良質な選手が揃っている。紹介した他にも、J2東京Vから横浜FMに移籍した渡辺皓太、J2横浜FCの斉藤光毅、同じくJ2金沢の小松蓮などもいる。東京五輪の選手登録はわずか18名だ。W杯以上に厳しい競争を勝ち抜き、本番のピッチに立つのは誰なのか──。いまはまだ無名の選手が、1年後に活躍しているかもしれない。

文/飯塚 健司


※電子マガジンtheWORLD No.236、8月15日発売号の記事より転載

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