[粕谷秀樹]サポーターの無礼にも上層部はノーリアクション チェルシーは監督と選手を守れるのか!?

粕谷秀樹のメッタ斬り 017

粕谷秀樹のメッタ斬り 017

UEFAスーパー杯でリヴァプールと対戦し、惜しくも敗れたチェルシー photo/Getty Images

補強禁止で代役も確保できない

開幕でKO負けを食らった。PK戦にもつれたものの、スーパーカップも勝てなかった。そしてプレミアリーグ2節は時間が経つに連れて全体が間延びし、命からがら1-1の引分け。チェルシーはひとつも勝っていない。

周囲のみる目は厳しくなる。解任のXデイを設定するタブロイド紙や、1~2シーズン所属しただけで「チェルシーをよく知る」と豪語するOBたちが、フランク・ランパード監督の粗探しを始めたとしても不思議ではない、イヤ~なムードだ。いまこそお偉いさんたちが現場をサポートしてあげなくちゃ。

しかしこの一年、オーナーのロマン・アブラモビッチは沈黙を貫いている。マリナ・グラノフスカイアCEOは自己保身の塊だ。決定権を持つ人間がなにもしないのだから、現場は頭を抱えてしまう。なぜ苦しいスタートになったのか、その原因をチェルシーという組織全体で考えるべきなんだ。
➀エデン・アザールとダビド・ルイスの退団、➁補強禁止。このふたつは痛すぎるでしょ。昨シーズン、アザールはプレミアリーグで16得点・15アシスト。チェルシーが記録した63ゴールの49%(凄いデータだ)にからんでいる。それほどの大エースが去り、補強を禁止されているから代役だって確保できない。

D・ルイスは市場最終日にアーセナルへ移籍したので、こちらも後釜を探す時間がなかった。昨シーズン終盤に膝を痛めたアントニオ・リュディガーは、本調子までいま一歩だ。センターバックの選択肢はアンドレアス・クリステンセン、フィカヨ・トモリ、クルト・ズマ……。ちょっと不安な陣容だ。

今季からチェルシーを率いるクラブのレジェンド、ランパード監督 photo/Getty Images

身勝手な連中は罰せられるべき

重箱の隅をつつくのがタブロイド紙の特徴だし、批判を繰り返すだけの浅はかなOBはどこのクラブにもいるけれど、たった3試合じゃ答は出ない。しかもマンチェスター・ユナイテッド、リヴァプール、レスターと、難しい相手との連戦で、ランパード監督の力量も未知数。未勝利は想定内ともいえるんだよ。

ところが“身内”が暴走した。自称サポーターを名乗る輩が、スーパーカップでPKを失敗したタミー・エイブラハムを口汚く罵った。あるSNSには人種差別的なコメントが相次いでいる。昨シーズン、ラヒーム・スターリング(マンチェスター・シティ)に罵声を浴びせた6人の男が、スタンフォード・ブリッジを出入り禁止になったにもかかわらず、愚行が繰り返されるとはね。

「タミーはみずから志願し、PK戦のキッカーになった。彼の勇気は称賛されて当然なのに、不当に批判されている。あの身勝手な連中は厳罰に値する」

ランパード監督が怒るのも無理はないよ。エイブラハムは精いっぱい闘った。21歳の若さでPK戦の5人目に志願するなんて大した度胸だ。失敗したといっても、罵られるいわれはない。ここは断固として上層部が……。アブラモビッチとグラノフスカイアはノーリアクションだ。監督や選手を守る気があるの? チェルシーって、一体感がなさすぎはしないか。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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