[特集/平成の日本代表史 04]令和の日本サッカーに必要な3つのキーワード

「継承」と「世代交代」は すでに片鱗をのぞかせるが……

「継承」と「世代交代」は すでに片鱗をのぞかせるが……

“新BIG3”として、日本代表の将来を担うと期待の中島(左)、南野(中)、堂安(右) photo/Getty Images

 2018年ワールドカップが終わり、森保一新監督の下で4年後への強化が始まった。ここからの5試合は4勝1分、無敗でアジアカップに臨んでいる。森保監督はロシアワールドカップからの「継承」と4年後に向けての「世代交代」を進めていった。

 西野朗前監督に率いられた日本代表は、ロシアワールドカップで2つの使命を果たしていた。1つはグループリーグ突破、もう1つは日本らしいプレイをすること。日本らしいプレイとは何かは長年の問いだったが、「青い鳥」のようにすぐそこにあることがロシアでわかった。青い鳥の探し方は、探さないことだった。

 森保監督は前任者に倣い、[4-4-2(4-2-3-1)]という日本選手に馴染みのあるフォーメーションと基本コンセプトという大枠を設定して、大雑把にまとめる手法をとった。日本選手は均質的なので、このやり方で短期間に無理なくまとめることができる。まだ見ぬ理想を探して遠くまで出かけるのではなく、すでにあるはずのものを掘り起こす。まだ明確に言葉では定義されていないが、ロシアでは確かに日本らしいプレイができていた。

 ただし、プレイスタイルは継承しても4年後のための世代交代は進めなければならない。森保監督は五輪代表監督を兼任しているので、本格的な世代交代は東京五輪後と考えられるが、初采配のコスタリカ戦でいきなり1つの答えが出てしまう。中島翔哉、南野拓実、堂安律の2列目だ。ロシアワールドカップの乾貴士、香川真司、原口元気の3人からそっくり入れ替わったにもかかわらずロシアでのスタイルは継承され、むしろそれ以上の破壊力を示す。コスタリカとパナマに3-0、ウルグアイに4-3、ベネズエラには0-0だったが、キルギスにも4-0だった。センターバックには冨安健洋が台頭し、もうこの時点でワールドカップに出たいぐらい。しかし、カタール大会までまだ3年半もある。

 短期間にチームをまとめられる手法を「継承」したので、早くチームができるのは道理といえる。「世代交代」もいきなり進んだ。ただ、それだけでは十分ではない。

 継承については、それが上手くいってもワールドカップで進めるのはベスト16までなのだ。日本は長所と短所がはっきりした均質型のチームだが、ラウンド16では多様型と当たる確率が高い。ロシア大会で対戦したベルギーも多様型だった。日本は2-0とリードしたが、ベルギーが攻め方を変えてハイクロスを多用してから逆転されている。高さとパワーという新手を出してきた相手に対して、日本は対抗策を持たなかった。多様な武器を持つ相手とどう戦うか。それがロシアでつきつけられた課題である。

 世代交代は、継続的に行われなければならない。4年間で選手の状態は変わる。中島、南野、堂安が4年後も同じとはかぎらない。選手層を厚く、可能性を広げ、最終的に摘み取るまで種を蒔き続けるのが基本的な代表チームの作り方だ。代表チームは右肩上がりで目に見えて成長していくものではなく、メンバーを入れ替えながらテストを繰り返し、いわば壊しながら作っていくので完成形がよくわからないまま推移することが多い。進捗状況がわかるのは公式戦だけだ。

「対応力」の成長が見られるも 苦戦を強いられたアジア杯

「対応力」の成長が見られるも 苦戦を強いられたアジア杯

2019年1月28日。アジア杯・準決勝でイランのエース、アズムンを完璧に抑え込んだ冨安。まだ20歳と伸び代も十分だ photo/Getty Images

 2019年アジアカップは、新しいチームの力を測る最初の機会だった。森保監督は大会前から「厳しい戦いになる」と繰り返し話していて、実際そのとおりになった。それを望んでいたともいえる。アジアカップのテーマは「対応力」だ。 日本のような均質型のチームは、自分たちが得意な戦い方で押し切るのが勝ちパターンである。ボール支配のスペイン、堅守速攻のスウェーデンなど、均質型は特化型でもある。強力な特化型なら多様型を破ることはできるが、ロシア大会の傾向は明白に多様型優位だった。分類すれば日本はスペインに近いのかもしれないが、とてもスペインほどの力はない。ボールを支配したくてもできない展開は当然予想される。多様型にはなれないまでも、ある程度の対応力は必要になってくる。

 例えば、ベルギーの「空爆」にさらされたとき、日本にまず必要だったのは空中戦で負けない能力だった。しかし、そこは相手に分がある以上、長い時間持ちこたえるのは難しい。自分たちのボールのときはパスをつないで押し返し、流れを変える力もいる。そして何度かあったカウンターのチャンスを決めていれば試合を決められたかもしれない。多様型が自分たちにない何かをぶつけてきたとき、それを上回るのは難しいとしても回避できる力は必要になる。しかし、ベルギー戦ではどれもなかったわけだ。

 アジアカップの日本は、中島がいないだけでこうも変わるかと思うぐらい攻撃力が落ちていた。さらに大迫勇也の負傷離脱が拍車をかける。一方、試合展開に応じて我慢するところは我慢し、僅差勝負を制していく。層の薄さを露呈した半面、対応力の養成にはうってつけの大会になっていた。見た目の派手さはないが、堅実な戦いぶりは対応力という面での成長をうかがわせた。

 ただ、決勝のカタール戦はまさに対応力が十分でなかったことも露わになっている。マッチアップの齟齬を修正できないまま、カタールにボールを支配されて前半に2失点。[4-4-2]の形を崩さないなら、あの状況では撤退するしかないのだが、日本は無理矢理ハイプレスを試みては外され続け、傷口を広げてしまっている。想定外の状況こそ本当の対応力が問われるのだが、アジアカップの日本はそこまでではなかったわけだ。

 次の公式戦はコパ・アメリカ。アジアカップよりハイレベルの大会で、グループリーグに関してはワールドカップ以上だろう。そこで新たな課題が見つかるはずだ。惨敗するかもしれないが、それでもいい。勝負は2022年のカタールワールドカップであり、それまでは継承したベースの底上げ、世代交代、対応力の養成を進めていくことになる。

文/西部謙司


theWORLD(ザ・ワールド)2019年5月号『平成の日本代表クロニクル』特集より転載

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