[ロシアW杯#39]アルゼンチンが奇跡の生還 ロホの超絶ボレーで決勝Tへ

一瞬の隙を突いたメッシ 面目躍如の先制点

一瞬の隙を突いたメッシ 面目躍如の先制点

ナイジェリアの組織的な守備に手を焼くも、86分にロホが劇的ゴール photo/Getty Images

メルカドが美しいクロスを送り込むと、CBながら敵陣PA内に侵入していたロホがフリーで右足を合わせる。見事なダイレクトボレーが突き刺さり、アルゼンチンが残り時間5分を切ったタイミングで勝ち越しに成功。グループリーグ突破には勝利が不可欠だったチームにとって、まさに起死回生のゴールが決まった。
 
あとは時計の針を進めるだけだ。メッシが遅延行為で警告を受ける。ナイジェリアのパワープレイを水際で食い止める。そして、試合終了のホイッスルが鳴り響き、優勝候補のアルゼンチンが、2位でのグループリーグ突破を決めた。

アルゼンチンが完全に主導権を握っていた前半、この劇的なフィナーレを予想していた人は皆無に近いだろう。試合が動いたのは14分だった。最終ラインを高めに設定し、コンパクトな陣形で守りを固めていたナイジェリアの一瞬の隙を突き、メッシが裏のスペースへ。その飛び出しもさることながら、トラップも2タッチ目も文字通り完璧なプレイでマーカーを振り切った10番が、そのまま冷静に右足のシュートを叩き込んだ。

面目躍如となる先制点を決めたメッシは、27分にスルーパスで決定機を演出。34分には右ポストを叩くFK弾を放つなど、不完全燃焼に終わった1、2戦目の鬱憤を晴らすように、チームの攻撃を力強く牽引する。前半のうちに追加点を奪えなかったとはいえ、大エースが躍動したほか、守備のバランスも良かったアルゼンチンは満足のいく前半を過ごした。

ナイジェリアは善戦するも、不可解なジャッジに泣く

ナイジェリアは善戦するも、不可解なジャッジに泣く

ボールがPA内にいたロホの手に当たるも、PKは認められず。憤るナイジェリア陣営 photo/Getty Images

だが、ナイジェリアの策士、ロア監督は端から「後半勝負」を決め込んでいたのだろう。ハーフタイムを終えると、それまで借りてきた猫のように大人しかったスーパーイーグルス(ナイジェリア代表の愛称)が牙を剥く。プレイのインテンシティが見違えるようにアップし、51分には同点弾をゲット。PKのチャンスをモーゼスがきっちりとモノにした。アルゼンチンはマスチェラーノのPK献上より、その直前、相手にCKを与える守備がいただけなかった。敵が1人もいない中で味方3人が重なり、楽にクリアできるボールをゴールラインの外に出してしまったのだ。
 
いずれにせよ、ナイジェリアの奇襲は成功だ。ドローでは敗退となるアルゼンチンには焦りの色が窺える。60分に投入した右ウイングのパボンに攻撃の糸口を見出すが、逆サイドのディ・マリアがミスを連発するなど全体が噛み合わず、波に乗り切れない。むしろ連動性があるのは、ナイジェリアの攻撃で、71分にはミケルとムサの見事なコンビネーションから、最後はエンディディがミドル。そして75分、ゲームの行方を大きく左右する“事件”が起きる。11分後に決勝点を奪うことになるロホが、自陣PA内でのハンドでPK献上と思われたが、ビデオ判定でお咎め無しとなったのだ。

ルール上ではセーフとなる「故意ではなかった」ものの、ボールが腕に触れていたのは確かで、前日のイラン対ポルトガル戦では同様のプレイにPK判定が下されていた。物議を醸すシーンとなったのは間違いない。付け加えるなら、目の横から出血していたマスチェラーノを止血させずにプレイさせていた主審の判断にも議論の余地がある。両チームの健闘は称えられてしかるべきだが、後味の悪さが残る一戦となってしまった。

[スコア]
ナイジェリア代表 1-2 アルゼンチン代表

[得点者]
ナイジェリア代表:モーゼス(51)

アルゼンチン代表:メッシ(14)、ロホ(86)

文/遠藤 孝輔

theWORLD211号 2018年6月27日配信の記事より転載

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