[特集/激闘!アジアカップ 01]名良橋晃のサッカー定点観測 特別編 日本代表が狙うは頂点しかない “26人総力戦”で日本に笑顔を!

 日本サッカー界が目標に掲げるのは、2026年W杯でこれまで跳ね返されてきたラウンド16の壁を突破し、より上へと勝ち上がるということ。アジア杯はそのための試金石となる大事な大会で、内容とともに結果も求められる。結果=優勝である。

 グループステージ3試合。決勝トーナメント4試合。優勝するためには、7試合を戦い抜かなければならない。大会中にはさまざまなトラブルが起きることが予想される。どうチームをマネジメントし、どう戦っていけばいいのか。注意すべきポイントやいまの代表に求めることとは。本誌のご意見番である名良橋晃氏が解説する。

7試合を戦い抜くためにターンオーバーは必須

7試合を戦い抜くためにターンオーバーは必須

昨年9月に敵地でドイツを4-1で下すなど、日本代表は好調を維持している。アジア杯は優勝を目指す大会になる photo/Getty Images

 アジア杯についてお話しする前に、令和6年能登半島地震、羽田空港での日本航空と海上保安庁の航空機の衝突で亡くなられた方々に哀悼の意を表します。ならびに、被災された方々の日常が一日でも早く戻ることを願っています。

 サッカーができるのは決して当たり前ではないです。サッカーができる日常に感謝しながら、アジア杯に臨む選手たちには戦ってほしいです。カタールの地から、日本全体に何かしらのパワーを与えてほしい。森保一監督はこうした気持ちをすごく大切にしているので、すでに選手たちに伝えていると思います。みんなで一つになって戦い、結果(=優勝)を残してほしいです。

 日本代表は右肩上がりで成長しています。9連勝中で、その間に36得点です。アジアに止めるチームがあるのかという勢いで現地入りしています。具体的に大会をみていくと、優勝するためには7試合を戦い抜かないといけないです。100%のコンディションではない選手がいるし、ケガ人や出場停止なども出てくるでしょう。連戦によって勝ち上がるほど疲労も溜まっていきます。総力戦であり、登録26名でどう戦っていくかが重要です。
 とくに、グループステージはターンオーバーが必要。ベトナム、イラクに連勝し、決勝トーナメント進出を決めてインドネシア戦を迎えるのが理想です。この状況になればいろんなことができます。とはいえ、2位通過だとラウンド16でE組1位との対戦になり、韓国とぶつかる可能性が高いです。ここで日本×韓国が実現してしまうともったいないので、ターンオーバーしつつもグループステージは絶対に首位通過でお願いしたいところです!

 新しい選手が多かった1月1日のタイ戦では、後半からベースとなる選手が入ることでガラっと変わりました。堂安律、中村敬斗が入り、雰囲気が変わりましたね。やはり積み上げは必要だと感じます。短期決戦で新しい選手がどこまでフィットできるか、がひとつのポイントになります。

 FWは上田綺世のコンディションに不安があるので、細谷真大に期待しています。点を取るべき前線の選手がゴールを奪うと、本人はもちろんチーム全体にも勢いが出ます。タイ戦、その後現地で行ったヨルダンとの強化試合では無得点でしたが、1点取ればノッていけると思います。間違いなくチャンスはあると思うので、生かしてほしいです。

 渡辺剛や佐野海舟も楽しみです。中山雄太も復帰しています。大会を通じて、全選手にチャンスがあるはずです。優勝した11年アジア杯のとき、準々決勝のカタール戦ではそれまで出場が少なかった伊野波雅彦が決勝ゴールを奪いました。同じように、“救世主”のような活躍をする選手が出てくることを期待しています。

選手たちは柔軟性がある ピッチで対応して解決できる

選手たちは柔軟性がある ピッチで対応して解決できる

プレミアリーグで揉まれたキャプテン遠藤は、さらにスケールの大きな選手となった photo/Getty Images

 グループステージで対戦する3カ国もそうですが、アジアで戦うチームは日本をリスペクトして守備に人数をかけてくると予想されます。どの国も22年W杯の日本×コスタリカを分析し、どうやって守るか考えてくるでしょう。

 守る相手をいかに崩すか。いかにしてゴールへの道筋を作るかがポイントになってきますが、昨年11月のミャンマー、シリアとの戦いで日本はしっかりと得点できています。いまのチームはゴール前を固められてもチャンスを作れます。

 以前は「ピッチ内で柔軟性がない」と指摘されていましたが、いまは相手の出方を見て各選手が判断できます。ピッチのなかで対応して解決できます。これは森保一監督が選手たちに求めていることで、ベンチから「なにも言わない」というのが理想だと思います。

 分析コーチが増え、前段階で準備できているのも大きいですね。相手の出方をシミュレーションし、対応策を考えておく。これができているため、柔軟に対応することができる。それでも、いざはじまったら相手がまったく違うサッカーをしてくることもあります。そうしたときもピッチで慌てることがなく、しっかりと対応できる。そういう選手が増えているなと切に感じます。“中東の笛”という言葉がありますが、そうしたアクシデントがあってもいまのチームはとくに気にしないでしょう。

 順当にいけば、準決勝ではオーストラリア×サウジアラビアの勝者と対戦します。オーストラリアがどう出てくるかを考えてみましょう。日本として嫌なのは、ゴール前をがっちりと固められ、攻撃ではロングボールを蹴って肉弾戦に持ち込まれることです。日本の良さを消すべく、中盤の頭上を超えるボールを蹴ってくるとやっかいです。ビルドアップしてくれたほうが日本のスタイルにハマりやすいです。

 ただ、これに関しても想定済み、分析済みでしょう。ロングボールを蹴ってきたらどうするか。チームとしてしっかり準備して臨むことになります。

 サウジアラビアはロベルト・マンチーニ監督に代わり、これまでとは違う部分があるかもしれません。いまは情報が少ないですが、対戦するまでに5試合あるので動揺することはありません。監督が代わったからといって、選手がそんなに大きく変わることはないです。分析コーチが丸裸にしてくれるでしょう。

韓国との決勝は実現するか 王座を奪還して日本を笑顔に!

韓国との決勝は実現するか 王座を奪還して日本を笑顔に!

前回優勝は2011年大会で、退場者が出ればケガ人も出た。頂点に立つまでに、今大会も予想外のアクシデントがあるかもしれない photo/Getty Images

 私の予想では、日本×韓国の決勝になると思います。韓国も欧州でプレイする選手が多く、高いレベルでの個のぶつかり合いが楽しみです。対戦が実現したら、公式戦でお互いに本気でぶつかるのはホントに久しぶりです。

 日本の一方的な展開になるかもしれないし、主導権の握りあいで拮抗した展開になるかもしれません。自分たちの力をいかに出し切るかですが、一方で相手の良さを出させないことも大事で、それをわかっている選手ばかりです。

 それぞれのポジションでの競り合いも見物ですね。菅原由勢×ソン・フンミンなど、ネームバリューのある選手たちがどんなマッチアップを見せるか。中盤も激しい潰し合いになるでしょう。ただ、日本はアウェイでドイツとあの戦いができるチームです。現状、なにも心配していないです。

 ここまでポジティブなことばかりでしたが、課題というか、私が求めたいことがあるので最後に指摘しておきます。セットプレイからの得点と、ミドルシュートの精度です。

 タイ戦でもセットプレイは数多くありましたが、得点につながりませんでした。大会前なので隠しているのかもしれませんが、最大7試合あるのでいろんなアイデアを出してほしいです。また、ゴール前を固める相手にはやはりミドルシュートが有効です。ミャンマー戦の2点目が鎌田大地のミドルシュート、シリア戦の先制点が久保建英のミドルシュートでした。今大会もそこの精度は問われると思います。

 もうひとつ。単純に確認したいことがあります。日本のビルドアップに対して、相手が積極的に前からハメようとしてきたときにどうなるか。タイ戦の前半にも相手が前から来た時間があり、ボールをロストして背後を突かれてヒヤッとしたシーンがありました。日本をリスペクトせずに、前から奪いに来たときにどう対応するのか確認したいですね。

 前回に日本がアジア杯を制したのは2011年でした。今大会と同じカタールを舞台に、ザックさん(アルベルト・ザッケローニ)が率いて最後に李忠成がボレーシュートを決めてアジアの頂点に立ちました。下馬評が高くプレッシャーはあると思いますが、王座を奪回して日本全体を笑顔にしてほしいです。

構成/飯塚健司

電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)289号、1月15日配信の記事より転載

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