リヴァプールDFフィルジル・ファン・ダイクには、現世界最高どころか史上最高のセンターバックの1人ではないかとの評価もあった。1対1の強さ、空中戦、スピード、高精度のキックを備えており、とにかく弱点が少ない。
しかし、今季はその評価が揺れている。チーム全体が苦戦していることもあるが、ファン・ダイクもらしくないプレイが目立つ。先日のアーセナル戦では相手のロングボールをGKに任せようとしたが、アリソン・ベッカーと呼吸が合わずに衝突してしまうなど、間違いなく今のファン・ダイクは世界最高の状態ではないだろう。
理由は様々考えられるが、ワールドカップ・カタール大会のことが頭にあるのではとの説もあった。オランダ代表の番人であるファン・ダイクは年齢的に今回が最初で最期のワールドカップになる可能性もあり、そこへ向けてコンディションを合わせたいとの思いはあるはず。
頭をよぎるのは、怪我で離脱した昨夏のEURO2020だ。ファン・ダイクは2020-21シーズンに大怪我を負ってしまい、EURO2020を欠場している。
英『TalkSport』によると、クラブOBのダニー・マーフィー氏はあの怪我からファン・ダイクがコンタクトプレイを嫌がるようになったのではと推測している。特にワールドカップが近いこともあり、無茶なプレイは避けたいとの思いもあるのかもしれない。
「彼は怪我をする以前のレベルにはないよ。怪我をする前の彼は我々が見てきた中でも史上最高のセンターバックの1人だったけどね。彼は大きな怪我から復帰してきた。心理面に関しては、以前と同じではないと思う。つまり私が言いたいのは、選手との接触やタックルを避けているのではということだ。彼は知らないうちに自分を守っている。以前同じような怪我をした選手とプレイしたことがあるが、戻ってきたときの彼は同じではなかった」
ファン・ダイクの状態が落ちてしまったのか、メンタル面に問題があるのか原因ははっきりしない。ただ、怪我をする前の方がパワフルなプレイをしていたとのマーフィー氏の見解も間違いではないだろう。
ファン・ダイクはアーセナルに敗れた試合後、次のように語っていた。
「前にも言ったが、どんな仕事をしている人も高いパフォーマンスを発揮するには少しの自信が必要になる。僕たちのように勝てなければ自信は徐々に失われていくが、僕たちは巻き返せると分かっている。だからこそハードワークしないといけない」(英『Daily Mirror』より)。
チームの歯車が噛み合えばファン・ダイクも世界最高の姿を取り戻すのだろうか。オランダ代表としても気になる問題で、ファン・ダイクの評価は急激に怪しくなっている。