今からちょうど1年前の2021年4月5日。その選手はイングランド2部にあたるプレミア・チャンピオンシップのブラックバーン戦でゴールネットを揺らしていた。
そして現在、その選手はチャンピオンズリーグ準々決勝でバイエルン相手にゴールを奪った。ビジャレアル所属のオランダ代表FWアルノー・ダンジュマ(25)のことだ。
まさか自分でも1年でキャリアが大きく動くとは予想していなかっただろう。ダンジュマは2019年にベルギーのクラブ・ブルージュからイングランドのボーンマスに移籍したのだが、チームは1年目に2部降格を経験。ダンジュマ自身もプレミアリーグでは1点も決めることができなかった。
2部でのプレイは思い描いたキャリアとは違っていたかもしれないが、ダンジュマは昨季2部で15得点を記録。その活躍から昨夏にビジャレアルが獲得に動き、今やオランダ代表にも入るエリートアタッカーと評価されている。
英『The Guardian』によると、ダンジュマは2部でのプレイがキャリアにおいて非常に重要だったと振り返る。
「長い旅だった。プレミア・チャンピオンシップでのプレイを本当に楽しんだよ。それを経験していなかったら、今のようにはなっていないと思う。ゲームの量、フィジカル、戦略、システムなどチャンピオンシップから学ぶことは多くて、自分が向上していると分かったんだ」
ダンジュマはオランダの名門PSVのアカデミー出身者ではあるものの、トップチームではプレイできなかった。オランダのNECブレダ、ベルギーのブルージュ、イングランドのボーンマス、そしてビジャレアルと、スムーズなキャリアとは言えない。
何より今季まで欧州5大リーグでは1点も決めたことがなかった選手だ。2部で活躍していたとはいえ、そこに目をつけたビジャレアルは見事だったと言える。
そして今月6日、ダンジュマはチャンピオンズリーグ準々決勝1stレグのバイエルン戦に出場して決勝ゴールを挙げた。1年で一気に有名なプレイヤーとなり、おそらくはオランダ代表の一員として今年のワールドカップにも出場するだろう。
「25歳でビジャレアル。自分は良い位置にいると思う。ビジャレアルは素晴らしいチームで、リーガ・エスパニョーラも素晴らしい。でも、僕はまだ完成していない。自分を信じることから始まるんだ」
ダンジュマはまだまだ上を目指している。キャリアの中で挫折も味わったはずだが、信じて努力を続けたことから道は拓けたのだろう。今ではビジャレアルに欠かせぬ絶対的エースだ。