なぜアーセナルに“NEXTヴィエラ”は生まれない 新たな怪物MF誕生に必要なもの

かつてアーセナルの中盤で圧倒的な存在感を放っていたヴィエラ photo/Getty Images

本家が語る“後継者出現”のための注意点

“NEXTパトリック・ヴィエラ”。そう呼ぶに値する逸材を、アーセナルは長年探し求めている。攻撃時には高いテクニックとパスセンスを前面に押し出し、守備時には屈強なフィジカルと長い足を生かした潰しを幾度となく披露した中盤戦士。本家がスーパー過ぎたということも忘れてはいけないが、彼がクラブを去ってから16年もの間アーセナルでこの元フランス代表MFに近づいた選手はいない。

現在のチームにもトーマス・パルティという“NEXTヴィエラ候補”がいるものの、彼も現時点では本家と差があると言わざるを得ないだろう。ポテンシャルこそ確かなものを備えているが、やはりまだヴィエラほどの存在感はない。

しかし、昨今のアーセナルに“NEXTヴィエラ”がなかなか出てこなかったのも無理はないか。ヴィエラといえば一人でなんでもできてしまうイメージの強い選手だが、当時のチームには彼が攻守に集中できるようにサポートしてくれる頼れるチームメイトがいた。きっと、ヴィエラが随所であれほどのパフォーマンスを披露できたのは周囲のサポートが優秀だったというのもあるのだろう。エマニュエル・プティやジウベルト・シウバといった存在があったからこそ、ヴィエラは自身のクオリティを遺憾なく発揮することができたのか。ガナーズが“NEXTヴィエラ”を求めるのならば、まず取り組むべきはその選手をピッチ上でサポートする環境づくりなのかもしれない。
「アーセナルでプレイしていたとき、私の周囲にはプティやジウベルトがいた。そしてエドゥもね。彼らは本当に素晴らしいパートナーだったよ。私の後継者になれなかったと言われている選手はたくさん見てきたが、まず条件が違うから仕方がないと思う。私のときには自分自身を表現するための環境が整っていたんだ。それにひきかえ、後輩たちは多くの場合で周りの選手に恵まれなかった。それに私がプレイしていた時代には前線にデニス(・ベルカンプ)やティエリ(・アンリ)がいて、後ろにはソル(・キャンベル)やマーティン(・キーオン)、そしてトニー(・アダムス)が構えていた。彼らの存在はさらに私の仕事を楽にしたよ。だから、私ほど周囲のサポートを受けることができなかった選手たちをどうこう言うのは間違っていると思うね」(英『Daily Mirror』より)

実際、ヴィエラ本人も自身があれほど活躍できたのは周囲に優秀な選手が多かったからと、このように語っている。“NEXTヴィエラ”誕生のためには、兎にも角にも強いチームを作ることが大切ということか。

とはいえ、現在のアーセナルも中盤は次第にレベルが上がってきた印象だ。現時点で本家とは差がある印象のパルティも、ここから優秀な周囲のサポートを受けながらレジェンドクラスの選手となるまでにスケールアップをしていくのだろうか。アーセナルでそろそろ見たい“NEXTヴィエラ”。もしかすると、そう遠くないうちに長年の夢は実現するかもしれない。

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