[MIXゾーン]パク・イルギュが見せる“サッカーIQ”の高さ 苦労人の成り上がりは必然だった

試合後に徳島戦を振り返るパク・イルギュ photo/スクリーンショット

しっかり言語化もできる

サガン鳥栖は1日、明治安田生命J1リーグ第12節で徳島ヴォルティスと対戦。前半は攻め手を欠き、スコアレスでハーフタイムを迎えたが、後半に入ると、55分に山下敬大、75分に仙頭啓矢がゴールネットを揺らした。守っては今季8度目のクリーンシートを達成し、2-0で勝利を収めている。

この結果、リーグ戦3連勝を飾った鳥栖は勝ち点を「26」まで伸ばし、暫定ではあるものの3位をキープ。ここまでわずか5失点と、実質的に今季リーグ最小失点を誇る堅守を武器に、首位の川崎フロンターレと2位の名古屋グランパスをしっかり追走している。

そんな好調な鳥栖を語る上で欠かせないのが、やはりゴールマウスを任されている守護神パク・イルギュだろう。セーブの安定感に加えて、的確なポジショニングや足元の技術を活かしたビルドアップ能力の高さで、GKながらここまで攻守にわたってチームの躍進に貢献している。この日の徳島戦でも、ペナルティエリアを飛び出してビルドアップに参加し、攻撃を組み立てたり、サイドチェンジやロングボールで相手を揺さぶったりするシーンが度々見られた。今、チームに最も欠かせない選手と言っても過言ではないのではないか。

そんなパク・イルギュも3年前まではJ1はおろか、J2ですらプレイしたことがなかった。朝鮮大学校卒業後は、JFLや社会人リーグも経験している。しかし、着実にキャリアを積み重ねてきた同選手は、今やJリーグを代表するGKにまで成長。2019年には、横浜F・マリノスでリーグ優勝も成し遂げている。では、なぜパク・イルギュはここまでの成功を収めることができたのか。それは一に、自分のプレイや相手のプレイを冷静に分析でき、それをしっかりと言語化もすることができるサッカーIQの高さにあるのではないか。徳島戦後のインタビューでもそれらを垣間見ることができた。

ーー前半はボールを握られる時間が続きましたが、ピッチでの雰囲気は?


「正直、自分はストレスを感じてはなかったんですけども、中にはストレスを感じている選手もいたんじゃないのかなというところはあると思います。だから、ハーフタイムのタイミングで監督からそういうマインドにならないようなコメントが入ったので……。多分全体として、やっぱり半分以上の選手が、ちょっと嫌だなあ、持たされているのが嫌だなという気持ちがあったと思います。自分自身は特になく、別に後ろで回されている分には怖くなかったですし、持たせているという感覚でやれていました」

ーー後半は中盤で引っ掛ける回数が増えたように見えましたが、良くなった部分とは?


「多分ウチというよりかは、相手がちょっとシステムを変えてきたこと。選手を入れ替えて点を取りきたところに対して、自分たちは特に前半からプレッシングのかけ方は変えていないですし、しっかり前で引っ掛けられるようにプレスをかけていました。相手が少し攻め急いでいたんじゃないかなと思います。自分は後ろから見ていて、実際に縦に入るボールだったり、垣田(裕暉)選手が出て高さが出て強さも出たので、そこに入れてくるようなボールが増えていましたし、その影響で引っ掛ける回数も増えました。やっぱりウチが先制点を取って、相手は何がなんでも勝ちたい、もしくは敵地で勝ち点を拾って行きたいとなったときに、1点取りに行かなきゃいけないので、どうしても気持ちが前に前に出てくるのは心理的にしょうがないのかなと思います。相手がちょっと攻め急いだところに、ウチがしっかりオーガナイズして、プレッシングをかけて回収するというところが、いつも通りやっているところができたから、ああいうふうに引っ掛けるシーンがたくさん生まれたのかなと思っています」

ーー直帰2試合では失点していましたが、今日はクリーンシート。修正した点はあったのか


「正直、あまり修正したポイントはありません。言い方は悪いかもしれませんが、相手の質がなかったのかなというところだけだと思います。FC東京、名古屋グランパスに比べると、個々の部分で徳島の選手の方がやっぱりまだまだJ1の舞台に慣れてなかったりとか、個で何かするというところに対してまだ対応しきれていないのかなと。違いを出せる選手が少なかったんじゃないかなと自分は思っています。ピンチはいくらでもありましたし、前半も自分たちのパスミスを引っ掛けられて、シュートまで持ってこられましたけど、そこを決めきれない相手の質に助けられました。今日のゼロに関してはそこにつきます」

ーー鳥栖の堅守の持ち味とは?


「いつもありがたいことに、失点が少ないということで色々と話をさせていただくんですけども、自分たちが失点が少ない理由は、間違いなく前線からのハードワークです。後ろが身体を張って守るというのは、どこのチームもできることなんですけど、ウチは前線からFWがしっかりチェイシングをかけて、コースを限定して、簡単に相手がやりたいようなプレイをさせない。まずはそういうところから守備が成り立っています。そこがうまく機能しているときには、90分通していい守備ができていますし、相手にいい攻撃をさせないというところにも繋がってきているので、そこがどんな相手に対しても失点が少ない、最小失点に抑えられている理由になっているのかなと思っています」

ーー鳥栖と同じくGKを含めてビルドアップをする徳島。敵側として見たときに、感じたものとは?


「初めてあんなにGKが参加してビルドアップするチームと対戦したので、すごく学ぶことはたくさんありました。上福元(直人)選手が悪いとかそういうわけではないんですけど、正直あのボール回しはあまり怖くないなと、僕は見ていて思いました。GKから一発で背後を取るようなボールが出るわけでもないし、GKを使っている意図、GKを使って数的優位にしている意図というのが、自分はあまり徳島には感じられなかったです」

「もっとGKからボランチにしっかりつけて前を向かせるようなパスが入ればより怖かったんですけど、横に横に、センターバックに対してずっと(ボールを)当てていました。自分たちの前でプレイしていたので、そこに対して敵側で見たときに、ああいうプレイというのはあまりいらないんだなと思いました。そういうプレイをするならDFにやらせて、もっと自分がいい状況で(ボールを)持って、サイドチェンジができるとか、ボランチにしっかりスパッとパスを入れてターンさせたりとか……。そういうような状況を作って、(ボールを)もらってという作業をした方が相手にとっては嫌なんじゃないのかなと思いました。そこは今日すごく参考になったゲームだったので、自分はそういうところを今後意識していければなと思います」

自分や相手のプレイをしっかり言語化できるということは、それに至った経緯や状況、要因などをしっかり理解できていることを意味する。それだけで、選手の成長速度を何倍にも加速させることもある。さらに、パク・イルギュはサッカーIQの高さもそうだが、いついかなるときも学ぼうとする姿勢も素晴らしい。苦労人である同選手の成り上がりは、なるべくしてなったに違いない。今後も上位争いをしていく上で、鳥栖の守護神がキーマンとなることだろう。

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